コラム20:人生最期の数ページに寄り添わせていただく者として何ができるのか

  • 家族
  • 緩和ケア
  • 死別後のつながり

 コラム20:

 「人生最期の数ページに寄り添わせていただく者として何ができるのか」
 一般財団法人光ヶ丘愛世会 光ヶ丘スペルマン病院 

 緩和ケア内科病棟看護師
 浅野志保さま(ELC7回生、認定エンドオブライフ・ケア援助士)


 ①緩和ケア病棟におけるエンドオブライフ・ケアの関わり

  私は、宮城県仙台市にある光ヶ丘スペルマン病院緩和ケア内科病棟で看護師として勤務しております。

 当病棟は平成10年に宮城県において初めて開設され、キリスト教を礎としたホスピスとしての歴史を有しています。

 緩和ケア内科では病気を治すための治療は行いませんが、痛みなどの辛い症状については積極的に緩和を行います。

 同時に心のケアにも重点をおき、病の苦しみと闘う日々から心身ともに解放され、その方らしく生きていただけるように、

 スタッフ一同がお手伝いさせていただいております。私は、患者さんとご家族が希望された場で共に過ごす中で、

 その方にしか分からない苦しみの中にも「自然と笑うことができる時間」「ほっとする時間」があることを表情や握り返され

 る手の動きよりひしひしと感じております。

 ②日頃の課題意識

 当病棟では一般病棟での待機期間を経て転科される方が7~8割を占めており、予後が週単位、日単位、あるいは時間単

 位で初めて出会う方々も少なくありません。患者さんの身体的症状や精神的症状は次々と変化し、その方らしい生活を営め

 るようなケアさえ行うことが困難な場合もあります。旅立ちが近い患者さんと言語的コミュニケーションを図ることは難しくなります。ご家族の葛藤や悲嘆は大きく、意思疎通困難な患者さんを前に、人間関係における葛藤や罪悪感に対する和解や赦しを表出されている場合もあります。

私は、何十年と生きて来られた人生の最期の数ページに寄り添わせていただく者として「援助者としての在り方」を常に考えています。私は、ただただ患者さんや家族の傍に人として存在する。そして、私は家族の長年の歴史を踏まえ、旅立ちまでの限られた時間、どのように関わらせていただくことが望ましいのかを考える。患者さんとご家族の表情や言葉を丁寧に紡ぎながら「その方らしさ」「ご家族らしさ」に触れ、辛く悲しい状況にあっても大切な人の死から自身の死を見つめ、これからいかに生きていくか模索していくご家族を支えたい。このようなケアを実現するには、援助者としてどのような認識をもち、存在しているのかをひたすら追い求めていくことが私の課題です。

③受講後の変化

 エンドオブライフ・ケア援助者養成基礎講座を受講し、ご家族へのケアが患者さんのQOLに大きく影響すること、そしてそのケアが死別後のご家族の在り方にまで影響を及ぼす重要なものであると学び得ました。自身も遺族の立場として、大切な人との繋がりをもち人生を歩むことの大切さを痛感しております。患者さんが人生を見つめ直し、支えを感じたとき、ご家族へ馳せる思いはひときわ強いと思います。講座での学びを糧に、限られた時間だからこそひとつひとつのタイミングを逃さずに、ご家族が本来持つ力を引き出し高め、家族の関係性が再構築できるよう心掛けています。

④今後の目標

 今後の目標は、目の前の現象を紐解き、一期一会より得た学びを次出会う方へエビデンスのあるケアとして還元することです。そのためにも大学院での研究を通じて、苦しみの中から大切なものを得た患者さんとご家族に起こっている現象の背景には何があり、問題解決には援助者としてどのように関わることが望ましいか明確にしていくことを考えています。「多くの人の支えがあり、今ここに在る」ということに感謝をしながら、過ぎ去った日々を思い返し、恩送り(誰かから受けた恩を、直接その人に返すのではなく、別の人に送ること)をしていきたいと思います。

エンドオブライフ・ケア協会では、このような学び・気づきの機会となる研修やイベントを開催しております。活動を応援してくださる方は、よろしければこちらから会員登録をお願いします。

コラム一覧へ戻る

TOP