コラム45:地域力に働きかける出前の保健室:陽だまり活動

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みんなの保健室 陽だまり
代表 
服部満生子さま

(ELC第37回生)

 みんなの保健室 陽だまりは、草加市内をエリアに4箇所で月8回活動している保健室です。つまり拠点を持たずに駅近の喫茶店・薬局のフリースペース・空き家(社協借用)・草加市市民活動センターに出向いて保健室を開催しています。地域住民の方々が、参加しやすい場所、参加できる時間にふらっと訪ねることを狙いとしています。

 モットーは、大人から子どもまで、障害や病気の有無に関わらず誰でも参加できる、お互い様のコミュニティづくりとしています。また専門的な支援が必要と思われる方には、必要な支援へとつなぐ役割も担っています。

(資料1:10月の4箇所開催チラシ

 保健室活動を始めて3年、住民サイドから見ると「地域包括ケアシステムって誰のため?」「共生社会って何?」「高齢化が問題なの?」「病院で死ねない?」「在宅医療って?」言葉では聞いたことはあるけど自分事に置き換えた時、全てがよくわからないといった状況にあることつかむことができました。政策と住民、医療と住民を結ぶ役割が必要であり保健室陽だまりにその役割もあると思っています。

<活動の実際>

 具体的には、季節に応じた病気の予防対策やお薬の飲み方など、薬剤師による研修や災害時の対策を市役所の危機管理課や上下水道課の出前講座の形でお願いして政策と地域住民を結び、それぞれが抱えている課題の明確化と問題解決への手助けをしています。病気をもちながら生き生きと活躍している方の体験談から学ぶこともあります。

 

 喫茶店では「大きな声で歌おう」「思い出そうあの頃」コンサートや「おしゃれをして外に出よう」とファッションに関することなど幅広いイベントを企画実施しています。

(写真2:おしゃれをして外に出よう おしゃれと健康)

 薬局のフリースペースでは、脳トレとミニ講座を主としますが、畑や緑の多い地域なので、ご自宅の畑で採れた野菜や漬物を披露してくださいます。従って栽培方法や調理方法に話が発展することもあります。

 市民活動センターでは、広いスペースなので上映会や体操を取り入れています。草加市内でも旧住民と新しい方達が多く入り混じった地域であり工夫を要します。草加の歴史の講演や参加者の趣味の発表の場ともなっています。

 空き家を利用した保健室は、毎週木曜日に開催しており、学習やワークショップの場としていますが、認知症当事者の方による「生き方・暮らしの工夫」や、笑って楽しくストレッチでは、盆踊りを楽しく踊るは参加者が講師です。誰が生徒か先生か?ごちゃ混ぜで面白い場になっております。ここでは認知症の方が歩行困難の方をサポートしたり、「足が痛くて歩けない」と言っていた方が、盆踊りの輪の中に入っていたり想定外のことがよく起こります。誰もが自分の出番を見つけてそれなりの動きをするのです。このコースは人気が高く空き家がいっぱいになります。

(写真3:認知症当事者による生き方教室 暮らしの工夫)

 どの場所でも相談は、暮らしに視点を置いたものであり「一人が寂しい」「夫がうるさい」「介護度が下がってしまった。演技が下手だったのでしょうか」「耳が遠くなって不便」「がんですが治療はしていません、1日どうやって暮らせばいいか」等で、直接病気の相談はほとんどありません。

<今後の予定と課題>

 立ち上げと同時に病気入院治療を体験しました。治療は活動に影響を及ぼさないスケジュールで行うことができました。当たり前のようですが医療の現場は働いていた時と、患者となってわが身を置いた時とでは、全くといっていいほど違った世界でした。理解や納得という言葉の幅に収まらない、極めて理不尽な現象に映ることもありました。病気は貴重な体験であり私を大きくしてくれました。これまでの臨床現場や大学教育での経験も含めて全てが、今に生きるものとなっています。

 10月には「在宅医療と意思決定支援」に関するワークショップを、11月には「みんなで聴こう命の授業」を企画しています。健康な時から「介護する」「される」の枠を超えて、誰もが「明日は我が身」として考えられるよう、わかりやすく生活レベルに落とし込んでいきたいとも思っています。そのことが地域で支え合う地域力へと結びついていくのではないかと考えています。

エンドオブライフ・ケア協会では、このような学び・気づきの機会となる研修やイベントを開催しております。活動を応援してくださる方は、よろしければこちらから会員登録をお願いします。

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