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コラム52:薬剤師が必要とされる専門職となるために


株式会社タイコー堂薬局本店
専務取締役 薬剤師 井上龍介さま
(ELC第3回生、認定エンドオブライフ・ケア援助士、認定ELCファシリテーター)

 2018年12月の医薬品医療機器制度部会にて、「患者にとって質の高い医療を、全国どこでも同様に、負担を少なく提供する」ことが法改正の検討項目となっています。その背景には、多くの薬局・薬剤師において、本来の機能を果たせておらず、医薬分業のメリットを患者も他職種も実感できていないことがあげられます。

 薬剤師は、「モノから人へ」というキーワードのもと、対物ではなく対人業務を重視し、地域包括ケアシステムの中での地域医療貢献を目指しています。

 薬剤師の務めは、薬物治療に携わり、薬害を防ぎ、薬を通して患者さんの生活や人生をサポートすることです。

 しかし、まだまだ外来処方せん対応に忙しく、薬の説明をおこない渡すだけの存在になってしまっています。そのため、患者さんの望んでいるコトに応じられていないのが現状です。

 では、私たち薬剤師が、どのように対応すれば患者さんが望んでいるコトに応じることができるのでしょうか。専門的な知識を提供することでしょうか。もちろん重要なことですが、それだけでは足りないかもしれません。

 患者さんの望んでいるコトを私たちが知らなければなりません。

 しかし、患者さんの本当の思いを理解することは難しいことです。

 患者さんが望んでいるコトを「話したい、伝えたい、聞きやすい」と思ってもらうためには、まずは患者さんにとって「わかってくれる人」、つまり「良き理解者」になることが重要です。

 患者さんが薬剤師を「良き理解者」と思ってくれる関係性が重要であり、そのためには患者さんの話を「聴くこと」がとても大事なのです。

 私は薬剤師として、専門的な知識をしっかりと伝えなければいけない、と思っていました。病気や薬、治療のことを理解してもらうことこそが患者さんのためになると信じていました。しかし、その思いが伝わらず悩み、どうすればこちらの意図が伝わるのだろうと思いました。

 患者さんが薬剤師のことを良き理解者だと思ってもらえたら、誰にも話せず悩んでいることを打ち明けてもらえたら、よりその患者さんにあった服薬指導ができるのではないでしょうか。

 私はまず、話を「聴く」ために、「反復・沈黙・問いかけ」という援助的コミュニケーションを実践してみました。患者さんの話を聴くということ。患者さんの意見を一旦受け入れること。このことが、関係性を作るファーストステップとなり、今までと違った反応を感じることができました。

 高齢になると薬物治療を行いながら、日常の生活を過ごす方が増えてきます。医療が適正に行われ、穏やかな日常を過ごしているか、しっかりと薬を通して薬剤師がサポートしなければなりません。

 患者さんやその家族、関わる多職種の方々からも信頼され必要とされるような関係性を作り、薬の説明や指導、管理方法だけでなく、様々なことを相談してもらえるような薬剤師でいることが重要だと考えています。

 私は援助的コミュニケーションを基盤とする対人援助方法をエンドオブライフ・ケア協会の基礎講座で学びました。薬局内での服薬指導だけでなく、在宅医療、多職種連携、地域での健康相談など、これからの薬剤師に必須となるコミュニケーションの理論とスキルがそこにあります。社内研修を一昨年から始めましたが、多くの薬剤師が今までになかった視点での有用かつ実践的なコミュニケーションであると感じてくれています。

 受講後の感想には以下のような声がありました。

  • 確認事項を優先するあまりに患者さんの気持ちに目がむいていなかった。患者さんの気持ちももっと汲み取ってから考えられるようになりたい。
  • 話を聞いただけで、何もアドバイスができない時があった。しかし、ありがとうと患者さんから言われたときがあり、言われた理由が少しわかってとても良かった。
  • 実際に現場の窓口でも「がんだとわかった」となど重たい内容を告白されることがあり、返答に困ることが何度もあった。今日の研修で話を聞く、反復、沈黙などの対応でも十分に患者さんが満足することがあると実感した。無理に何か提案しないとなど話をすることを意識しすぎず、話を聞くことを心がけていきたい。
  • 自分が話していたときに感じていることを聞き手側で感じることに思っていた以上にギャップがあるのだなと感じた。
  • 患者側のロープレを実践することにより普段患者がどのような気持ち、不安を抱えているのか考えることができた。会話の反復、沈黙の間等、今後意識して業務に取り組んでいきたいと感じた。
  • 医療人、社会人よりも広い人として、相手にどう接するか、読みとるか、を学べました。現場だけではなく、家族や友人への接し方に使えたらと思います。

 今後も多くの薬剤師が共に学び、目の前の患者さんのために貢献できるよう、社内、社外問わずに尽力していきます。


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