第28回「エンドオブライフ・ケア援助者養成基礎講座」(札幌)

  • 開催レポート

5月20日(土)・21日(日)、札幌でエンドオブライフ・ケア援助者養成基礎講座を開催いたしました。当日は、eラーニングのスクーリングとしてご受講くださった方、またファリシテーター候補者枠でお越しくださった方を含め、33名の皆さまにご受講いただきました。開催にあたり、当日の運営面で多くのご協力をいただきましたことを心より御礼申し上げます。  

参加者

33名の方にご受講いただきました。

職種の内訳は、看護師46%、介護職15%、医師9%、リハビリテーション職6%、介護支援専門員3%、その他21%でした。その他職種には医療事務、管理栄養士、心理職、相談員など多彩な職種の方々にご受講いただきました。

地域別では開催地の北海道以外に、遠く神奈川県からお越しくださった方もいらっしゃいました。

 

講座の様子

協会理事であり、横浜で在宅診療を行うめぐみ在宅クリニック院長の小澤 竹俊が、2日間の講師を務めました。


2日間の講座では、以下の要素を学びます。

  • 課題背景(2025年問題に備えて)
  • 人生の最終段階に共通する自然経過
  • 苦しむ人への援助と5つの課題
  • 意思決定支援
  • 自宅・介護施設で求められる症状緩和
  • 多職種連携で「援助」を言葉にする(マクロ)
  • 1対1で対応する(ミクロ)

ただ受け身で聞くのではなく、ロールプレイや事例検討のためのグループワーク、学んだことの振り返りなど、ほとんど休む間もなく、口と手をたくさん動かしていただきました。

懇親会

終了後、少数の方々で懇親会を開催しました。日ごろ臨床でお感じになっている課題や取り組み、また、今後に向けた希望として、2日間終了後も継続的に学び、つながりを持ちたいなど一人ひとりのお声をじっくり伺う機会となりました。

受講者の生の声(当日)

2日間の養成講座も終わりに近づいたころ、会場内で受講者のみなさまから、そのとき感じたことを生のお声として頂戴いたしました。

藤井さま、看護師(北海道)

外来の化学療法の患者さんや病棟の患者さんに対応しています、ベッドサイドナースです。現場にいて、がん患者さんの抱えている問題にきちんと対応できていないんじゃないかと感じていました。(受講動機は)今働いているところでは亡くなる方はいないのですが、その前段階のところで何かができることによってその患者さんの未来が変わるんじゃないかということに気付いたからです。痛みに対しては薬物でコントロールができるんだけれども、解決のできない問題を抱えている患者さんが非常に多くて、短い入院期間の間に解決できないまま退院してしまうんです。その患者さんが問題をどう解決していったのか、どういうふうに生活が変わったのか、退院した後も気になっています。そもそも相手のことを理解してから始めるのではなく、わからないところから出発しているんだということ、でもわかろうとする看護者の思いが、変えるかもしれないということ、可能性があるんだということがわかりました。私はいま自分の歳を考えると、いつ患者さんになってもおかしくない年齢になっているんだということを最近感じています。私が患者さんになった時にやって欲しいことが、患者さんがやって欲しいことなんじゃないかなというふうに思っています。それを実際やってみて、やってみせることが、後輩の育成になるんじゃないかなと思っています。情熱が私を変えるんじゃないかな、それを見た周りが変わるんじゃないかなってふうに、思っています。

 

鈴木規雄さま、循環器内科医師
聖マリアンナ医科大学横浜市西部病院(神奈川県)

循環器の疾患は病態の特徴もあって急性期の医療とされ、病状の変化が急激に起こるので、今までどうしても緩和ケアや終末期医療がなかなか取り組みにくい領域だったんですけれども、近年では医療の進歩とともに寿命が長くなったその分、終末期の患者さんやいろんな支えを必要とする患者さんが増えてきているので、そういった面で今回のようなエンドオブライフ・ケアが必要な患者さんが非常に多いのではないかなというのを日常臨床で感じながらやっていました。最初はeラーニングで受講し、一般的な知識から勉強させていただいたのですが、自分の時間でできるというメリットはすごく助かりました。その中で今まで自分が思っていたエンドオブライフ・ケアあるいは緩和ケアと、実際には違ったのか、あるいは新しく知ることができたことがすごく多かったので、私の中でも転換点になるような講義を受けることができ、2日目の集合研修の前にかなりな刺激をいただいた印象です。集合研修に関しても、得た知識を頭の中、心の中に留めておくのだけではなく、ロールプレイを通して実感すること、あるいは患者さんの立場に立つような意識が芽生えてくるのかなというところで、全ては完璧ではないですし、不足した部分は余計にもっと知りたい、学習したい思いが出てきたので、さらに自分の研鑽に積み重ねていきたいなと思いました。早速明日から戻って活用させていただきたいんですが、終末期に限らず実際に目の前にいる患者さんすべてに共通する部分というのも今回勉強できましたので、終末期に限らず、エンドオブライフ・ケアという意味合いでも実践していきたい、そしてそれを周りのコメディカル含めてメディカルスタッフにも知識の共有ということで、私の方から今度はいろいろ伝えることができればなと思っています。

 

高橋都子さま、看護師・管理者
社会医療法人社団三草会 訪問看護ステーションアシスト(北海道)

管理者になり今年で12年目となっています。看護師も30年になるのですが、今ひとつ自分のコミュニケーション技術に自信が無いと言いますか、在宅でも様々な病気を抱えて、おうちで最期をお迎えする場面が最近増えてきているのですが、その時にいろいろな言葉を投げかけられても、上手に返答できない自分がいたり、寄り添わなきゃいけないことはわかっているんだけれども、逃げてしまう自分がいて、それは自分が自信がないからだなというのが、私の最近の課題でした。先日プロフェッショナルで小澤先生を見た時に、私に足りないのはこの技術だ、と今回の受講の希望を出したところだったんです。とても濃厚な時間で明日からでもすぐ実践できそうな具体的な方法を知ることが出来たので、本当に良かったと思ってます。患者さん自身が私自身のことを理解してくれている人だと思ってもらえなければ、信頼関係は生まれないんだなと。あなたの苦しみを聴くよ、という風なところがちゃんと出来ていないと理解者だとは認めてもらえなくて、最後まで心を開いてもらえないまま、あまりいい思いをしないで、最後を迎えてしまうのかなっていうところが、これはもう明日から変えていけるんじゃないかなって。上手にはいかないかもしれないけど、その意識を持って関わるということが、明日から出来るかなって、ちょっと思ってます。まずは事業所に戻って授業の内容を話して「自分の苦しみをわかってもらえる人がいるとうれしい」という張り紙を貼って、みんなで共有しながらちゃんと支えていける支援者になっていこうと思っているのがまずひとつ。あとは、訪問看護ステーションの所長さんたちのネットワークや連携している介護チームにも、こういう風な支援をしていこうよって声を掛けていきたいと思っています。研修を受けたばっかりで熱い思いがふつふつとあるんですけれども、日々の業務に入ると落ち込んだりすることがあると思うんです。今日受けられた受講者のみなさんや以前受けられた方と、情報交換をしたり、愚痴を言ったり励まし合ったりしながら、今で終わらずこれからのつながりを意識しながら関わっていけたらなあと思っています。

 

受講者の生の声(後日)

受講後、職場に戻って実践していらっしゃるみなさまの声をお聴きしました。

坂野 ゆう子さま、看護師(北海道)

私が勤務しているのは地方の大学病院です。その特性上、入院している患者様の多くがセカンドオピニオンなどを経て広く道内、道外から、一部海外からも入院されており、命への執着が強い、どうにか助けてほしいと積極的な治療を望まれている患者・家族様です。日々働いている中で医療者がどんなに先端医療で手を尽くしても、患者様がどんなに生きたいと願っても救えない命があることを体験しています。治療がもうできないと知った時、人はそんなに簡単には命をあきらめられないのです。

「治療を受けている」ことが支えとなっている患者・家族様の中には、医師からBSCを告げられた時、「今まで何のために頑張ってきたのか?」「本当にもう打つ手はないのか?」と病院に見捨てられたような気持ちを持つこともあります。絶望している患者様を前にどう接したらいいのか、なんて言葉をかければいいんだろう、と悩み、どんなに頑張っても日に日に衰弱していく患者様の姿に無力さを感じて立ち上がれない気持ちになることもありました。また、治療に期待している患者・家族様にどのようにACPについて確認したらいいのか、困難さも感じています。一方で自分の運命を受け入れ、力強く最後まで生ききる患者様や一生懸命支えられたと満足される家族様もいらっしゃいます。そして自分の運命を受け入れられると、人は死を前にしてもこんなにも強く人を支えられるのかと人の強さの可能性を感じられることもありました。患者様や家族様に寄り添う気持ちを持ち続けるために、逃げない自分になるために、という思いから今回の講座に参加させていただきました。

養成講座は、具体的で実践的な内容まで掘り下げてあり、現場ですぐに取り組めると感じました。ロールプレイを行うことで医療者側、患者側双方の心の動きや、それを客観的に見ることでの気づきもありました。医療現場だけではなく、きっと普段のコミュニケーションにも使えると思います。そして小澤先生の穏やかな人柄とゆるぎない使命感にとても感銘を受けました。

今、私は「支えたいと思っている人が本当に支えを必要としている」という言葉を胸に先輩や同僚、後輩みんなで患者・家族様を支えていこうと奮闘しています。以前の私は自分が患者様に関わることしか目に見えていなかったことに気付きました。自分だけじゃなく看護チームで、看護師だけじゃなく、医師、緩和ケアチーム、リハビリスタッフ、CNS、外来ナースなどを巻き込んで「患者様のために力を貸してください」と声を上げられる看護師になりたいと思います。そのために積極的に講座で勉強したことを後輩たちに伝えるようにしています。先日もう自分では動けない状態でしたが、患者様の希望を叶えるため、主治医や子供様の協力を得て1泊だけ患者様を自宅へ帰してあげることができました。酸素が離せない患者様のために業者が無償で器械を貸与してくれました。息子さんは本州の会社を休んで外泊に付き添ってくれました。主治医や緩和ケアチームは外泊前に薬剤の調整を行ってくれました。「外泊して日ハムの試合が見たい」と話していた患者様はテレビを見る力はもうなく、それでも、家族がリビングでテレビをつけてくれていたそうです。次の日患者様は亡くなりましたが表情はとても穏やかでした。この経験で「こんな看護がしたい」と後輩たちの心を動かすことができました。「ホスピスじゃなくても、大学病院でもできることがある。」と私は信じています。

概念だけではなく、実践レベルで力をつけることができること、こんなにも仲間がいることに気づき、とても心強く感じました。小澤先生からも私のようにきっと背中を押して頂けると思います。

 

粟野 晋太郎さま、リハビリテーション職
特別養護老人ホームぬくもりの郷(北海道)

特別養護老人ホーム(以下、特養)でリハビリ職として勤務しています。リハビリ職として関わることでADL能力の維持・向上に期待することや、余暇活動を充実して頂くことが主な目的です。一方で、施設での看取りを希望され看取り期から逝去までの時間を過ごされる利用者様に対して、どのような目的をもって関わればよいのか分からず苦慮していました。そんな折にNHKで小澤先生の活動を拝見し受講を決めました。

今回の受講は自身のコミュニケーションについて見直す大変良いきっかけになりました。どちらかと言うとコミュニケーションは得意であると感じていましたが、殊更にエンドオブライフケアにおいては私の実践していたものは一方通行であったと痛感しました。小澤先生の講座ではコミュニケーションという主観的になりやすいテーマをご自身の経験を交えて系統的に講義して頂いたため、技術の一つとして学ぶことができました。先生から学んだことと自身のこれまでのコミュニケーション方法を比較して、“この関わりは間違ってなかった”“この関わりは見直さなければならない”と自己の振り返りに役立てることができ、且つ、学んだことを実践することで今まで感じたことのない手応えを得る に至りました。手応えを得られなかった時は何が不足していたかを学習し直すこともできるため、エンドオブライフケアのコミュニケーションにおいて、成功も失敗も前進に繋げることができています。
 
コミュニケーション技術はたくさんの書籍や講習会がありますが、医療・介護・福祉分野に従事する私たちにとってここまで実践的で最先端な内容は他では学べないと思います。

 

まとめ

札幌では2016年11月以降、3回目の開催となりました。北海道にもELCファシリテーターが誕生しましたので、今後は地域での継続学習の機会も増えてくることでしょう。

協会としては2日間の講座を提供して終わりではなく、受講した方がさらに理解を深め、実践し、振り返り、自らと周囲を進化させていく、そんなお手伝いができたらと願っております。

次回は、6月10日(土)-11日(日)、大阪開催をレポートいたします。

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