第45回「エンドオブライフ・ケア援助者養成基礎講座」(東京)

  • 開催レポート

5月19日(土)・20日(日)、東京でエンドオブライフ・ケア援助者養成基礎講座を開催いたしました。当日は61名の皆さまにご参加いただきました(2日間の受講者、eラーニング+2日目集合研修の受講者、ファシリテーター候補者枠の方を含む)。開催にあたり、運営をご支援くださった地域学習会ファシリテーターならびにファシリテーター候補者のみなさまに心より御礼申し上げます。 

参加者

61名の職種の内訳は、看護師59%、介護支援専門員13%、医師7%、ソーシャルワーカー5%、介護職5%、その他11%でした。その他職種には保健師、デザイナー、按摩マッサージ指圧師、会社員、電話相談員、美容介護など、多彩な職種の皆さまにご参加いただきました。

地域別では開催地の東京および近県以外に栃木、茨城、群馬などの東日本、岡山、愛媛、宮崎などの西日本からなど、全国からお集まりいただきました。

 

講座の様子

協会理事であり、横浜で在宅診療を行うめぐみ在宅クリニック院長の小澤 竹俊が、2日間の講師を務めました。


2日間の講座では、以下の要素を学びます。

  • 課題背景(2025年問題に備えて)
  • 人生の最終段階に共通する自然経過
  • 苦しむ人への援助と5つの課題
  • 意思決定支援
  • 自宅・介護施設で求められる症状緩和
  • 多職種連携で「援助」を言葉にする(マクロ)
  • 1対1で対応する(ミクロ)

ただ受け身で聞くのではなく、ロールプレイや事例検討のためのグループワーク、学んだことの振り返りなど、ほとんど休む間もなく、口と手をたくさん動かしていただきました。

懇親会

終了後、半数以上の方が懇親会にご参加くださいました。

 

受講者の生の声(後日)

受講後、職場に戻って実践していらっしゃるみなさまの声をお聴きしました。

高橋有紀子さま、医師
医療法人社団めぐみ会多摩ガーデンクリニック/小児科・田村クリニック在宅診療部内科(東京都)

 当方は小児科医です。数年前に高齢者の在宅に関わり始めてから、その奥深さに魅かれるようになりました。「自分は内科医ではない」という若干の後ろめたさもありましたが、沢山の患者様やご家族との出逢いに助けられ日々学ばせて戴いています。小澤先生に直接お話を伺うご縁を戴いたことを機に、受講に至りました。「対人援助の基本は(対象が子どもや母親でも、看取りの場面でも)同じかもしれない」と感じたことが、自分には大きな励みとなりました。

 eラーニング(以下eL)で学び始めたまさにその日、学んだばかりのことをそのまま説明に使わせて戴く機会があり、すっと納得して戴けたことが忘れられません。おそらく同じ説明によって多くの患者様が救われて来たのでしょう。eLでは、学習内容を日々少しずつ実践に活かしながら時間をかけて学べる点が魅力です。これまで関わってきた1つ1つの看取りが、今回の受講を通じてつながった感触です。講座2日目に参加し、ともに悩み考え合う仲間と出逢えたことも大きな収穫でした。相談し合える仲間はかけがえのない「日々の支え」です。今後受講される方は、もし可能であればeL受講後に2日間とも参加出来ると、より理解が深まるかもしれません。

  貴重な機会を本当に有難うございました。引き続きどうぞよろしくお願い致します。

 

木暮裕さま、医師
生きがい訪問診療所(千葉県)

 在宅医療で一番大切なのは、患者さんの気持ちや考えなのだと思います。けれども、医者としてできるのは薬の処方や調整、アドバイスなど、やはり薬という物質的な対応がメインとならざるを得ません。そんな医者という立場の人間が、気持ちや考えに重きをおいて診療に当たるということは、どういうことなのか?そのエッセンスを体系的に学ぶためにこの講習を受けました。

 養成講座では、小澤竹俊先生が、積み重ねた経験から得られた法則を一つ一つ丁寧に学んでいきます。そして、講義で学んだことを立場を替えてロールプレイをすることで確認します。その過程で多くの気づきを得ることができました。私の場合、相手の気持ちを受け取っているつもりでも、相手は気持ちを受け取ってもらえたと思っていないことに気が付き、反復という手法が、そういった経験から編み出された、一番シンプルで確かな方法なのだと改めて知ることとなりました。

 具体的な話を1つ紹介します。がん末期の81歳の男性に数ヶ月前から訪問診療をしていました。以前から自分の実家(仙台)には誰も住んでおらず、荒れていくばかりの実家を気にかけているという話をしていました。なんとなく話を聞いていたのですが、本人の言葉を返すように「荒れていく実家を放っておけないのですね?」と反復すると、「そうなんです!」とやっとわかってくれたといわんがばかりの返答をいただきました。その話し方から、本人にとっての深刻さを逆に私が受け取ることになりました。話を受け止めたと相手に伝えるためにも、反復が大切なのだと理解しました。

 普段の診察でも、活用させていただいています。ありがとうございました。

 

平野和恵さま、看護師
がん研有明病院(神奈川県)

 日々の実践において援助を言葉にする難しさを実感していたため、参加しました。

 養成講座で得られたことは、相手の話を聴くことの大切さ、対象者の支えになるための心得や継続トレーニングの大切さ、価値観を共有する仲間との相互研鑽などでした。終了後、日々出会う患者さんに対して 講座で練習した「反復」「沈黙」をスキルとして、患者さんも意識していない支えを一緒に探し出すことを、取り組んでみました。すると、対話前は体の痛みを訴えていた患者さんが、私達が知らなかった患者さんの支えをたくさん話してくれました。対話が終わると「あら、なんだか痛みも気にならなくなったわ、ありがとう」と穏やかな笑顔になりました。患者さんの支えを丁寧に聴く時間をもつことは、症状緩和にもつながる手ごたえを感じました。看護師だからこそ、直接的ケアだけでなく、患者さんやご家族の潜在的な力を引き出すケアも提供していきたいと思います。

 日々の実践において、療養者への関わりや専門職としての限界を感じている方へ。この研修では、いろいろな分野で悩んでいたり、様々な経験をしている背景の方と共に学び合うことができます。また研修の場だからこそ、普段は開示しにくい自分の苦手な部分や弱みを知ることができます。さらに2日間の研修で出会った仲間とは、研修終了後も勉強会やSNSで交流することができ、「おだやかな自分」を再確認できます。これからのあなた自身のために、参加してみませんか。

 

工藤昌尚さま、医師
(東京都)

 「どうして治せないんだ!」

 治らないがんの患者さんやそのご家族から、怒り、不安、無念さのような様々な苦しみの感情が混ざり合った言葉を投げかけられた時、なんと答えたら良いのか、どのようにその行き場のない思いを受け止められるのか、自分の中で答えの出ない日々を過ごしてきました。そんな中、小澤先生の活動を知り、何かヒントが得られるのではないかという思いで、この養成講座に参加しました。

 講座の内容は、どれも「そうだよなぁ~。」と普段感じることが見事に言語化されており、自分の頭の中が整理されました。「反復」のようなコミュニケーションスキルは、一見奇異に感じ、やってみると意外と難しく、でも「これってすごく良いかもしれない。」と期待感を抱くものでした。そして何より重要なのは、こういった知識や手法を系統的に学ぶ機会を持つことで、解決できない苦しみを持つ患者さんに向き合う勇気が持てることではないでしょうか。

 この講座が援助者の皆さんの支えになるものと信じています。

 

まとめ

東京には毎回様々な地域から参加者が集まりますが、今回も南は宮崎県、北は新潟県から広くご参加をいただきました。東京都では認定ファシリテーターの皆さまにより継続的な地域学習会が企画され、その規模も少しずつ拡大している様子が伝わってきています。

協会としては2日間の講座を提供して終わりではなく、受講した方がさらに理解を深め、実践し、振り返り、自らと周囲を進化させていく、そんなお手伝いができたらと願っています。

次回は、6月2日(土)-3日(日)、大阪開催をレポートいたします。

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