Our Theory of Change

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だれもが「生きてきてよかった」と思えるように
最期まで自分の人生に誇りを持てるように

日本は超高齢化社会を迎え、少ない生産年齢人口で多くの高齢者を支える時代に直面しています。社会資源が偏在し、地域におけるつながりが希薄化するなか、人知れず苦しむ人はますます増えていくことでしょう。したがって、従来の社会保障制度で解決できることには限界があります。

特に、人生の最終段階を迎えた人やその家族の苦しみを前に、これまで様々な施策が行われてきたものの、抜本的な解決には至っていないのが現状です。この先、病院で最期まで過ごすことは難しくなり、自宅や介護施設での暮らしが求められていきます。実際、それを望む人は増えていますが、環境や資源などの理由から、すべての希望が叶うわけではありません。家族の介護と仕事の両立に悩む働く世代や、一人暮らしで地域とのつながりが弱く、孤独や不安を抱える人も増えていくことが予想されます。

一方、その人たちの苦しみは、地域の人からはなかなか見えません。さらにこの問題をいっそう困難にしていることは、たとえ苦しむ人に気づいたとしても、「みんなに迷惑をかけたくない」「自分なんて誰にも必要とされていない」「誰にもわかってもらえない」と悩み苦しむ人を前に、どのように関わってよいのかわからず、足が遠のく人が少なくないということです。

自分の苦しみをわかってくれる人がいるとき、
たとえ死を前にしても、人は穏やかになれる

エンドオブライフ・ケア協会は、 ホスピス・緩和ケアで培ってきた対人援助の手法 に基づき、人材育成( エンドオブライフ・ケア援助者養成基礎講座 )に取り組んできました。看取りの現場で学んできたことは、「なんで自分だけ」「私の気持ち、誰にもわからない」と絶望や孤独を感じていた人が、たった一人でも、自分の苦しみをわかってくれる人の存在により世の中が違って見える可能性があること、そしてその苦しみから自分の支えに気づいたとき、たとえ苦しみは残り続けたとしても、穏やかさを取り戻す可能性があるということです。そのために「話を聴く」ということを大切にします。

穏やかな理由は人によって異なります。私たちが大切にしているのは、数値だけではなく、顔の表情です。苦しみを抱えた本人とその家族にとって、どんなことがあると穏やかになれるのか、その条件(=支え)を本人との対話を通して探ります。そして、見出した支えを強めるために、誰が何をするとよいのか、難しい専門用語ではなく、また、抽象的な言葉ではなく、関わるすべての人にとってわかりやすく具体的な言葉にします(“援助を言葉にする”)。

たとえ解決が困難な苦しみを抱えた人を前にしても、医療や介護の専門職だけではなく、家族や友人、近隣の住人も含めて、苦しむ人の力になりたいと願うすべての人にできることがあります。職種や立場を越えて、誰もが自分にできることがあることを知り、実践していくなかで、苦しむ人と関わることへの苦手意識を持っていた人も関わる自信を持てるように変わっていきます。

子どもから高齢者まで、
苦しみがありながら穏やかに生きていく

解決が困難な苦しみを抱えているのは、人生の最終段階を迎えた人だけではありません。子どもから高齢者まで、それと気づかずとも誰もが“苦しみ”を抱えています。看取りの現場における対人援助からの学びは、そのまま「折れない心を育てるいのちの授業」として、学校、地域、企業などで紹介してきました。大人も、子どもも、「折れない心を育てるいのちの授業」で学んだ人は、これから出会う困難や苦しみと向き合うことができるでしょう。

また、自分の苦しみと向き合うだけではなく、周囲で苦しむ人に気づき、関わることができるようになり、さらには苦しみを通して学んだことを、周囲へ自発的に伝えていくことで地域に優しさが連鎖していくことを期待します。

お互いが支えになる
コミュニティを通して学びあう

苦しんでいる人は、自分の苦しみをわかってくれる(と自分が感じる)相手がいるだけで、心が落ち着き、世の中が違って見えてきます。それは、苦しみを抱えた本人・家族に限らず、その苦しみと関わろうとする人にも同じことが言えます。

対人援助とは、特定の立場や役割の人が一方的に提供するものではありません。あるときは誰かを気にかけ、あるときは誰かから気にかけてもらう。相互の関わりを通して学びあう。私たちがめざしているのは、一方通行ではなく、お互いが支えになるコミュニティです。

苦しみに気づき、自分に何ができるか考え行動し、誰かの力になることは、自己肯定感を育みます。しかし一方で、役に立てない、何もできない、そんな自分をふがいなく思うこともあるかもしれません。たとえ解決が困難な苦しみに遭遇したとしても、それまで気づかなかった大切な自分の支えに気づくとき、自分自身の存在をこれでよいと認め、自分を大切に思い、自分の苦しみとも向き合う可能性がひらけます。

持続可能な共生社会をつくる

私たちは、このような関わりができる人を社会に増やしていく活動を行っています。一部の人が一部の人にしかできない専門的なケアではなく、子どもも大人も誰もが、半径5mの人を気遣い、学び合うことでお互いが支えになるコミュニティが生まれる。その連鎖が地域に広がり、しなやかなまちをつくる。このような社会を、志を同じくする活動団体と共に実現することを願っています。

実現したい社会

超高齢小子多死時代において、たとえ社会資源が限られていても
すべての人が人生の最期まで穏やかに暮らせる持続可能な社会

長期成果・ビジョン

苦しみがありながら穏やかな(レジリエントな)文化を創造する

社会として苦しみに
向き合うことができ、
レジリエンスが高まる

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