Universal Hospice Mindset

ユニバーサル・ホスピスマインドとは

 限られたいのちと関わるホスピスの現場で培われた、たとえ死や病気という解決が難しい苦しみを抱えていても、穏やかでいられるこころのありようや、苦しむ人との関わり方のことです。

 人は、苦しみを通してさまざまなことを学びます。人は、弱いときにこそ、誰かの優しさを実感し、あたりまえに過ごせることが素晴らしいことに気づいたりします。そして弱いときにこそ、誰かのことを思いやる気持ちが芽生えてきます。 ユニバーサル・ホスピスマインドは循環していきます。

 エンドオブライフ・ケア協会は、子どもから大人まであらゆる人が、人生のさまざまな場面でこころ穏やかに過ごせるように、すべての人がウェルビーイングであり続ける実践的な方法として、目的と対象ごとにユニバーサル・ホスピスマインドをベースとしたプログラムをご提供しています。

ユニバーサル・ホスピスマインドを考えるヒント

私たちの人生は、決してよいことばかりではありません。うまくいかないことの方が多いと感じる人もいます。
それでも、こころ穏やかに過ごせる可能性を考えてみたいと思います。

視点1:ゴールは本人が穏やかであること

 自分の苦しみとどう向き合ってよいかわからないとき、あるいは苦しむ誰かのために自分は何をしてよいかわらかないとき、ゴールを明確にすると、大切にしたいことが見えてきます。

 ユニバーサル・ホスピスマインドを実践する上でのゴールは、まず本人が「穏やか」であることを意識することです。穏やかな理由は人によって異なります。

視点2:苦しみに気づくポイント:希望と現実の開き

 生きていくなかで、さまざまな苦しみを抱えることがあります。普段は忘れていたり、気にも留めていないこともあるかもしれません。

 苦しみとは、「希望」と「現実」の開きであると考えたとき、自分や誰かの何気ない言葉や態度の中に、今まで気づかなかった苦しみがあることに気づくことができます。

視点3:解決できる苦しみと、解決が難しい苦しみ

「苦しみ」は、2つにわけて考えることができます。解決できる苦しみと、解決が難しい苦しみです。穏やかな生活を送るために、解決できる苦しみは、解決できるように最善を尽くしたいと思います。

 しかし、どれほど最善を尽くしても、すべての苦しみは解決できるとは限りません。「なぜ私だけ苦しまないといけない?」と思うような苦しみは、どれほど科学技術が発達したとしても解決することはできません。

 苦しむ人の力になりたいと強く願うとき、しばしば解決できない相手の苦しみにも答えを与えようとすることがあります。この苦しみは解決できる苦しみか、あるいは解決が難しい苦しみかを見極めることが大切になります。

視点4:解決が難しい苦しみが残り続けたとしても、穏やかになれる可能性を探る

 人は苦しいとき、その人にとって大切な何かに気づくことがあります。例えるならば、夜空に輝く星の存在です。都会の夜空は明るく、たくさんの星が存在していることに気づきません。しかし、人里離れた場所に行けば、同じ夜空が満点の星空となります。夜空は暗いからこそ、たくさんの星が輝いていることに気づきます。

 人生も同じです。順調なときには、自分には支えがあることに気づかずに生きていくことができるかもしれません。しかし、仕事、家庭、子育て、親の介護などにおいて、様々な危機と向き合わなければいけないこともあります。

あなたが苦しかったとき、それでもがんばれた理由、支えになったものはありますか?

苦しいからこそ気づくことがあります。

家族の存在がうれしかったり、何気ない友人の一言があたたかかったり、
亡くなった家族が今でも自分のことを見守ってくれていることに気づいたりします。
すると、それまでとは異なる世界観が広がり、生きる力、困難と向き合う力が芽生えてきます。

ユニバーサル・ホスピスマインドの実践例

ユニバーサル・ホスピスマインドは、医療や介護の現場だけでなく、
希望と現実の開きに苦しむ家族や友達に接する場面、そして自身と向き合うときにも実践できるものです。
ユニバーサル・ホスピスマインドを実践するみなさんの声をご紹介します。

  • 宮崎 響さんのストーリー

  • 田原 真司さんのストーリー

  • 岡 久美子さんのストーリー

みんなのコラム

 ユニバーサル・ホスピスマインドを学び、実践することで訪れた、その後の変化を伺いました。

小2娘と母の関係性が変わり
「私も講師になりたい」

BEFORE

  • 小2の娘と母との間で、すぐにぶつかり合う。
  • 普段は看護師として、いつも笑顔で患者さんに心から愛情を持って関わっているのに、母親としてはガミガミ言ってしまう。
  • 子育てが苦行にしか感じられない。
  • 母親失格ではないか。自分を認めたくなくて、さらけ出せなくて、子育ては孤独と感じる。
  • 子供たちが寝静まった後、毎日のように寝顔に謝り自分を責めていた。

AFTER

  • 娘と母に共通言語が生まれた。
  • 娘は母の苦しみを紐解いてくれた。
    (「苦しみは希望と現実の開きだから、今お母さんの希望はこうだけど、現実はこうだから苦しいんだね。その開きが大きいんだね。」 )
  • 娘は目を輝かせて話をしてくれるように。
    (「お友達が苦しみを持っていたから、反復をして聴いたらたくさん話をしてくれたよ。聴いてくれてありがとうって言われたんだ。お友達との関係が強くなる感じがしたよ」「○○ちゃんは、私の支え。わかってくれる人だから」「友達から相談されることが増えたんだー」 )
  • 娘は、友達への理解も示すように。
    (よく意地悪を言ってくる△△君はいやだ!と、いつも文句ばかり言っていた娘が、「△△君も、苦しいのかな。苦しくて仕方ないから、頭ではだめだと分かっていても人を傷つけてしまうのかな」。 )
  • 母は、娘から言葉が出てくるのを待つように。
    (以前はすぐに励ましたり説明をしようとしてしまっていたが、そんな逸る気持ちを少しゴックンと飲み込んで、「沈黙」「反復」そして「問いかけ」。 )
  • 母は、自分の苦しみと向き合った。
    (「いつも笑顔で子供のことを優しく包み込むようなお母さんでいたい」という「希望」に対して、「ガミガミ怒ってばかりのお母さんである」という「現実」の開きを知り、この開きが大きいから苦しいのだと気が付いた。 )
  • 二人の対話の質と関係性が変わった。

現在小5になった娘は、自ら希望して認定講師に

友だちの様子に気づき、行動し、
関係者につないだ中学生

BEFORE

  • Aさんは、悩みを抱え、数年前まで自分を傷つける行為をしていた。
    最近はその様子は見られない。
  • 授業直後、自身の身内がコロナで亡くなったことを、講師に涙ながら話しに来てくれた。
  • Bさんは、学内で活発に活動している一方で、周囲に馴染めないことがある。

AFTER

  • 学校が早く終わったある日、Aさんは、大雨のなか、ずぶ濡れになりながら一人でふらふらと歩くBさんを見かけた。
  • 様子がおかしいことに気づいたAさんは、Bさんに「どうしたの?」と声をかけ、何も言わないBさんの隣に並んでしばらく歩いた。
  • ビルの屋上に上がっていったBさんは金網に駆け登り、「もう今から死ぬ」と言って泣き叫んだ。Aさんは必死でBさんを抱きかかえて離さなかった。
  • 二人はまたずぶ濡れになりながら学校に戻り職員室の前でうずくまっていた。ずっとBさんの話を聴いていたAさん。生徒指導の先生が声をかけ、いのちの授業のことを思い出して、生徒が話し始めるまで待った。
  • Aさんの声掛けで生徒指導の先生がBさん宅に連絡。母が来校。
  • 先生も母もBさんの苦しみを聴いた。
  • 母「私たちの期待が、ずっと重荷だったのかな・・・」
  • 教頭先生「この⼦たちは⼝では⾔わないですが、いのちの授業で学んだことを⾊々⼼の中で感じています。分かっていると思います。AさんがBさんの苦しみを黙って聴いてあげたから、Bさんはまた⽣きてみようと思ったのだと思います。」

自分自身の弱さ、苦しみと向き合った子どもが、半径5mの距離にいる
友だちの様子に気づき、声をかけ、行動し、話を聴くことができた。
また、大人もその関わりから、大切なことに気づいた。

ユニバーサル・ホスピスマインド チャンネル

 誰かを想う気持ちや行動はどこから生まれるのでしょうか?多様な現場で活動する方々との対談を通して、ユニバーサル・ホスピスマインドの本質について考えます。

  • 第2回:生活困窮者支援<抱樸>の奥田さんから学ぶユニバーサル・ホスピスマインド

  • 第3回:山崎章郎先生から学ぶユニバーサル・ホスピスマインド

  • 第11回:在宅医療にかける熱い想いは どのようにして生まれたのか?

  • 第15回:認知症当事者の声から私たちは何を学ぶのか?

基本となる学習プログラム

エンドオブライフ・ケア援助者養成基礎講座

~看取りへの「苦手意識」から「関わる自信」へ~

 人生の最終段階にある人やその家族と、あなたはどのように関わりますか?日に日に食事が少なくなり、やがて寝ついていく人と、どのように関わってよいかわからない援助者が、自信を持って関われるようになることを目的として、この講座を企画しました。

 講座では、人生の最終段階に共通する自然経過や意思決定支援の基礎知識を学びます。さらに、援助的コミュニケーションについて、ロールプレイを交えて学んだ上で、エンドオブライフ・ケアの中でも特に難しいとされるスピリチュアルペインに対するケアについて、1対1での対応方法から多職種連携による援助まで学びます。

折れない心を育てる いのちの授業

~OKプロジェクト~

 様々な困難に遭遇する人生において、子どもたちが、そして関わる大人たちが、自分の苦しみと向き合えること。さらに、相手の苦しみと関わることができること。地域の中で、子どもから高齢者まで、このような人が増えていくことで、これからの人口減少時代、様々な苦しみに直面しても、人生の最期まで穏やかに暮らせる、持続可能な社会を実現したいと考えています。「折れない心を育てるいのちの授業」をひとつの入り口として、大人も子どもも、皆で考え、実践していきます。

ユニバーサル・ホスピスマインドをもとに
最強のチームを作ろう

~答えのない こころの問題と向きあう~

 このイベントシリーズは、同じ業界やあえて異なる領域で活動する方々との対談からユニバーサル・ホスピスマインドの本質に迫り、テーマから問いを立て、小グループで対話する機会です。

 参加者は、特別な知識や経験を求められるものではなく、他者の話を聴いたり、感じたことを言葉にしていくことで、自分にとっての意味を見つけ、自分ごとにしていくことを意図しています。

ユニバーサル・ホスピスマインドを
応用可能なプログラム

ユニバーサル・ホスピスマインドは、基本となる考え方です。
この考え方を、人生の様々な局面に応用可能なプログラムをご紹介します。

尊厳を守るケア:ディグニティセラピー

 エンドオブライフ・ケアは、「人生の最終段階を迎えた、その人の“尊厳”を守るケア」です。どうすれば、尊厳を取り戻し、さらには維持していくことができるのでしょうか。対話を通して、本人がもっとも大切にしていることを言葉にし、世代を超えて伝えていく、カナダで生まれたセラピーから学びます。

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認知症とともに暮らすための
ユニバーサルホスピスマインド

 認知症は、あなたとの関係性を壊してしまう病気であると表現されることがあります。どのようにすれば関係性を保ち続けられるのでしょうか。認知症のことを学ぶだけでなく、当事者のアドバイスを元に認知症の方の気持ちを学びます。さらに介護をする方が自らを大切にする方法を考え、今後来たる認知症社会について、ユニバーサルホスピスマインドの視点から学びます。

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死別後の悲しみとともに生きる(グリーフ)

 なぜ人は、大切な人を失うと悲しくなるのでしょう。悲しみのなかにある人は、これからも笑顔を取り戻すことなどできないのでしょうか。このような問いを持つ人は少なくありません。避けることのできない大切な人との別れや悲しみとどのように関わり続けることができるのか、ホスピス・緩和ケアで培ってきた対人援助の視点から考えます。

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本人が話すことができないとき、 対話を通して本人と家族が穏やかになる関わり方

 いよいよお迎えが近くなると、本人との会話は難しくなっていきます。たとえ、本人と会話をすることが難しくても、本人も家族も穏やかになれる対話の方法があります。それは、医療を専門としない介護職や、事務職の方も、本人の尊厳を意識して関わることができる援助のひとつです。知識として理解するだけではなく、実践的に学びます。

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さまざまな学ぶ機会

  • ELC主催イベントに参加する

    目的と対象に合わせてオンラインも活用しながら、学びの機会を広げて参ります。医療や介護の専門職に限らず、どなたでも歓迎いたします。

  • コラムを読む

    ユニバーサル・ホスピスマインドを学び実践するみなさまから、継続して取り組んでいることや課題と感じていること、また、ご自身や周囲が変わったことなどを、コラムとしてお寄せいただいています。

  • 書籍を読む

    基礎となる考え方を学んでいただける書籍をご紹介します。できれば、学んだことを実践できるようになるために、オンラインや対面で、講座やイベントにも参加されることをお勧めしております。

  • eラーニングで学ぶ

    エンドオブライフ・ケア援助者養成基礎講座の知識部分を動画で学べるプログラムです。ロールプレイ等の実技については、合わせてオンラインまたは対面の講座受講をお勧めいたします。

  • 認定ELCファシリテーター/
    認定講師による
    学習会に参加する

    認定者が所属組織や地域の学びの場で学習会を開催いただけるプログラムを用意しております。オンラインで地域や対象・前提を問わず開催しているものもありますのでご都合に合わせてご参加ください。

  • 講演を企画し講師を依頼する

    ご依頼に基づき、企画・運営はお任せしたうえで講師としてお話に伺うことも可能です。詳細はお問い合わせください。

「ユニバーサル・ホスピスマインド」のシンボルマーク

0歳から100歳まで誰もが必要なこころのケアを、いのちを象徴する心臓にたとえたユニバーサル・ホスピスマインドのシンボルマークです。

こころのケアは、いのちに関わること。その人にとっての支えとは、こころの心臓のようなもの。それがあるから、こころが動いていられる。

心臓のフォルムは、死を前にしても穏やかでいられるこころのあり様やその考え方を連想させつつ、2つの色と影ともとれるその形は、明るい時も暗い時も、人と人が支え合う様子を体現しています。

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