折れない心を育てる いのちの授業プロジェクト
OK Project
折れない心を育てる いのちの授業の背景
人はなぜ、頭ではよくないとわかっているのに、大事な何かを傷つけてしまうのでしょうか?苦しくて仕方がないとき、自分や他者などを傷つけてしまうことがあります。どうすれば、苦しくても、傷つけずにこれからを生きて行くことができるのでしょうか?そして、誰かが目の前で苦しんでいるとき、あなたに何ができるでしょうか?
このような問いで始まる「折れない心を育てるいのちの授業」は、ただ単に、いのちの大切さを頭で理解するためのものではありません。決して平坦ではないこれからの人生を生きて行く私たち一人ひとりが、解決困難な苦しみを抱えたときに、具体的な行動として何ができるか、それぞれの立場で感じ、考える授業です。
当エンドオブライフ・ケア協会の活動の原点には、代表理事・小澤がホスピス病棟長時代に、ホスピスという現場で学んできたことを、これからを生きる子どもたちにも伝えていきたいと、2000年から臨床の傍ら学校のゲストティーチャーとして600回以上お伝えしてきた「ホスピスから学ぶいのちの授業」があります。まもなくお迎えがくるという解決困難な苦しみを抱えながら、なお穏やかに過ごす人たちから学んだこと。それは、「私の苦しみ、誰にもわからない」と絶望を感じていた人が、たった一人でも、自分の苦しみをわかってくれる人がいると感じたときに、自分を認め、穏やかさを取り戻す可能性があるということです。そして、たとえ苦しみを解決できなくても、苦しみから自分の大事な支えに気づくとき、これからを生きていく力になるということです。
苦しくて自分を認められず、自分や相手を傷つける。これはまもなくお迎えがくる人だけの話ではなく、これからを生きていく子どもたちにも当てはまることではないでしょうか。どうしたら、たとえ苦しくても人を傷つけず、自分や相手を大切にすることができるでしょうか。そのアプローチを、わかりやすく、真似しやすく、自分もやってみたい、できそうだ、と思える形でお伝えしていくことが大切と考えます。
学校に限らず、地域や業界を問わず、様々な場面で学べるように、医療や介護に限らず、様々な関係者と一緒に創っていくのが、「折れない心を育てる いのちの授業プロジェクト」です。自分の困難や苦しみから学ぶ習慣を創ること。そして、誰かかが苦しんでいれば、どのように関わってよいかがわかり、実践できる人が増えていくことをめざします。
地域の中で、子どもから高齢者まで、このような人が増えていくことで、これからの人口減少時代、様々な苦しみに直面しても、人生の最期まで穏やかに暮らせる、持続可能な社会を実現したいと考えています。それぞれの立場で一緒に実現しませんか。
対象者
- 小学校高学年、中学校、高校、専門学校、予備校、大学など、学校教育の現場(日常的に自分や友人の苦しみに直面している生徒たち、保護者、教員など)
- スポーツチーム、町内会、寺子屋、子ども食堂、ボランティア活動、暮らしの保健室など、地域のなかで、子どもからお年寄りまで集まる場に集う方々
- 新型コロナウイルス感染症が広がるなか、オンラインも活用しながら、苦しむ誰かのために力になりたい方々
標準カリキュラム - 45分×2コマの例 -
◆レッスン1:苦しみから支えに気づく
・なぜ人は自分や他者を傷つけるのか?
・解決できる苦しみと解決できない苦しみ
・支えとなる関係、選ぶことができる自由、将来の夢
◆レッスン2:苦しむ人を前にしてわたしにできること
・わかってくれる人がいるとうれしい
・聴くこと(反復)
◆レッスン3:自分を認め大切にする
・どんなときに自分を認め大切に思えるか
・自分が誰からも必要とされていないと感じる苦しみ
・Nanaさんの詩(病がくれた勇気/カラー)
受講後の感想
これまで「折れない心を育てる いのちの授業」を通して、学校や地域で伺った受講後の声の一部をご紹介いたします。
- 苦しいってかんたんにかいけつできるってわけでもないしとても難しいと思った。自分にも時々、苦しみや悲しい、マイナスなことはあるけど、支えてくれる物や人々ってとっても重要な存在なんだなと思って自分のことを思ってくれている人に感謝をしないといけないと思った。苦しんでいることっていじめとかと一緒で自分だけではなおせなくて自分の心の中でずっといることになるから相談したり話をきいてもらったりすることが大切だと分かった。もし周りにおちこんでいる人、元気がない人などがいたら今日学んだ反復をしたりして元気で楽しいクラスにしていきたい。
- ワークシートをふりかえると、自分は主に家族・友達・音楽支えられているんだなと気付き、(選ぶことができる)自由でも、とくに音楽とかいてあって自分が思ったには、自分は音楽などやっていて楽しいことがストレスのかいしょうだとかモヤモヤしているときのなやみのかいしょうになるんだなと気付きました。
- 苦しいことがあったとき、だれにも相談したくなかった。でも、授業を受けて、だれかに相談するのって大切な事なんだと思った。一番自分が苦しんでいるときに使いたいのが、支えになる物や人。なぜなら、今までしゃべりたくない!相談したくない!と思っていたから。
- 自分をどんな時でも認めてくれる人がいる。ということが深く考えることができました。そのことでもっと自分を認めることができて自分をもっと好きになることができました。
- 私も、言いたいことを反復されなくて、嫌になった時があった。自分の事をみとめてくれないんだという気持ちになる。自分の言いたい事を分かったようになって「分かってる。」と言う。けれど、こっちから見ると口にその言葉を言っていないから。友達が、何か苦しんだり、なやんだりしていたら話を聞き、反復できる聞き上手になっていきたい。
- 支えがあればのりこえていけるんじゃないか。そうとは、あんまり思わない。支えがあればのりこえられる事もあると思うけど、自分はあんまり物事をいい方に考えられないからなにか悲しい事があると支えがあってものりこえられないんじゃないかと思う。でも、支えはあった方がいいと思った。でも、逆に考えてみれば、それをのりこえた後には、すごく成長するかもしれないから悲しい事はプラスになるんじゃないかとも思った。
- 私は苦しみをかいけつするというよりわすれて、またおもいだして、苦しむのくりかえしでした。でも方法をおしえてくれて あ、よかったと思えました。(中略)もしも私みたいに、悩んでいる人がいたらまずは、はなしをきいて反復をつかって一人のわかってくれる人になりたいと思います。私も、もしもされたらうれしくなると思うから自分もうれしいと思えるからこそ相手にもしてあげたいなと思います。
- 今日はいのちのじゅぎょうときいておらずいきなりきたのでびっくりした。そして、じゅぎょうが始まった。わくわくしていた。そしてまず希望と現実の差というのがあった。僕はたまにこういう希望と現実の差みたいなものを考えているのでよくわかったし、共感できた
- 私は、よくささいなことで死んでしまいたい、または、私なんて必要ないんじゃないと思ってしまっていた。けれども、最近は生きたいのに死んでしまう人がいる。また、必ずうまれたのには意味があると思い始めてからは、思わなくなってきた。(中略)たまにストレスなどがあった時は、xxがストレスをかいしょうしてくれた。私にとっては、強いみかただったんだと思う。私は、苦しみには、一番は強いみかた支えがひつようなんだと思う。

- 今回のお話の中に『誰かの支えになろうとしている人ほど支えを必要としている』という言葉がありましたが、生徒の支えになろうとしている教員ほど支えが必要なのだと感じました。私は、「誰の支えもいらない。」と思ったことがありますが、このように思ってしまう人ほど誰かの支えが必要なのかもしれません。そして、改めて過去を振り返ってみると、自分自身が苦しんでいる時には、家族や友達・先輩方が自分を支えてくれていたと思いました。(高校教員)
- 「あなたにとって本当に大切なものとはなんですか」と問われている気がしました。生徒にとってもいいものになったと思います。(高校教員)
- 人は1人では生きていけない、多くの人に支えられているのだと、改めで思い知らされ、今後生徒の支えになるためには何をすべきなのか、希望と現実の開きを埋めるためには何が必要かを考えてながら仕事をしたいと思いました。(高校教員)
- 人権のことを考えるときは「相手のことを理解する」という考え方をしますが、単に「理解する」のではなく、100%理解はできなくともそうしようとする気持ちが大切なのだと思いました。また、自分と他者との関係、自分の存在理由などいろいろ考えるヒントをいただきました。(行政職員)
- 人が希望を持って人生を全うすることの大切さ、病気であってもそうでなくても・・・。人が幸せと感じることの本質を強く印象づけられた内容でした。学校でこどもたちにも話されているとのことでとても大切なことと思いました。(行政職員)
- お話を聞きながら自分自身のことや周囲の人のことを考え、自分の生き方を振り返り、これからの生き方(死に方といもいうのでしょうか?)を考えていました。そして周囲の人たちにもより良く生きてほしいという気持ちが生まれてくることを感じました。(行政職員)
- 窓口でお客様の話を聴いて(聴くことしかできない)、話を聴いてもらっただけでも安心したと言われることが・・・よくあります。(行政職員)
- 一つひとつの言葉が伝わってくるとても貴重な時間を頂きました。今後、仕事をしていく上でも、市民の方の理解者になるということは最も優先すべきことのひとつかもしれないと思いました。(行政職員)
「折れない心を育てる いのちの授業」プロジェクトに参加しませんか?
OKプロジェクトは「折れない(O)心(K)を育てる いのちの授業」の実施をひとつの入り口として、皆で考え、実践し、育てていくプロジェクトです。自分を認め大切に思う気持ちを育むことで、相手をそのまま受け入れ大切にする気持ちを育む-”I’m OK. You’re OK.” - 精神療法のひとつである、交流分析の考え方になぞらえています。様々な困難に遭遇する人生において、子どもたちが、そして関わる大人たちが、自分の苦しみと向き合えること。さらに、相手の苦しみと関わることができること。こうした態度を、主体的・対話的で深い学びを通して育んでいくことを、プロジェクトの目標としています。
ホスピスや在宅医療の現場から学んできたことを、生きづらさを感じている子どもたちへ届けたいと、2000年から小澤が始めた学校への出前授業。必要としてくださるお声を多く伺う一方で、想いのある誰もが、どこにいても伝えられるよう、全国的な講師育成の必要性をずっと感じてきました。
2016年からお世話になっている、NTTドコモ・ベンチャーズさまのラウンジをお借りして、2018年に100人規模でプロジェクトをキックオフ。その後、”二枚目の名刺サポートプロジェクト”のお力をお借りして、参画してくださったメンバーと一緒になり、まずは小学生向けの標準プログラムを第1版として完成させました。その後、数名の講師が学校や地域コミュニティに授業を届けながら、プログラムの根幹である「自尊感情・自己肯定感」を中心に、改定を重ねてきました。さらに、2017年にFITチャリティランを通していただいたご寄付をもとに、2016年から応援いただいている電通のクリエイティブチームのご協力を得て、映像を2本制作。これらを踏まえて、2019年8月11日、初回講師トレーニングを迎えるに至りました。ここまでの道のりにおいて、ほかにも、内容や学校という文脈におけるアドバイスを多数の方にいただき、今があります。
しかし、これはまだ成長の途上にあります。子どもたちへ授業を届ける大人もともに学び続けながら、様々な文脈、事例を取り入れながら、お互いフィードバックし、改善し続けていくことをねらいとして、”オープン・プラットフォーム”であることを謳っています。その意味では、プロジェクトでありながら、終わりがありません。
OKプロジェクトは、医療・介護の垣根を越えて、地域で苦しむ人たちも含めて、ともに学び実践するコミュニティへの発展を想定しています。エンドオブライフからの学びを、子どもから大人まで伝えていき、これからの人口減少時代において、それぞれが、地域で苦しむ人と関わる担い手となれる、そのきっかけとなればと願っております。
講師やコーディネーターとして伝えることに関心のある方へ
現在のところ、エンドオブライフ・ケア協会の主催する「折れない心を育てる いのちの授業 講師トレーニング」にご参加いただき、模擬授業を実施の上、一定の基準を満たしていただいた方に、レベル1認定講師として、正式に授業を実施していただく流れとなります。
まずはコーディネーターとして、この授業の概略を関係者に伝えていきたい方も、講師トレーニングにぜひご参加ください。紹介する上でのポイントをつかんでいただくことができます。
8月11日には第1回目のトレーニングを横浜で開催し、全国から140名の方が集まりました。
第1回講師トレーニング開催レポート
その後、帯広、大阪、オンラインで講師トレーニングを開催して来ました。今後も継続的に開催して参ります。
現在、新規のお申込みは停止していますが、オンラインでの参加希望者がどのくらいいらっしゃるか、また、運用の実現可能性に鑑みて、追加募集の可能性はあります。今後の講師トレーニングは、開催決定後、随時ご案内いたします。今後参加を希望する方は、こちらからご登録ください。
認定講師一覧
以下の方々は、「折れない心を育てる いのちの授業 認定講師」として協会から認定を受けました。
メディア掲載
第1回講師トレーニングの様子は2019年8月29日朝日新聞夕刊ならびにデジタル版に掲載していただきました。
授業内容とプロジェクトの背景について、先生のための教育事典EDUPEDIAに掲載していただきました。
認定講師による授業
以下で開催日をお探しください。新型コロナウイルス感染症の状況にもよりますが、ご希望に応じて、個別に講師が伺うことも承ります。
各地域の認定講師による対面またはオンラインでの授業
エンドオブライフ・ケア協会主催のオンライン授業