ディグニティセラピー
Dignity Therapy
人生の最終段階を迎えた、その人の“尊厳”を守るケア
「エンドオブライフ・ケアとは何をすることですか」と問われたら、皆さんはどのように答えるでしょう。私たちは「人生の最終段階を迎えた、その人の“尊厳”を守るケア」であると考えます。
エンドオブライフにおいては、人は様々な形で、自分自身の“尊厳”を失っていきます。今まで1人で買い物に行けていた人が、行けなくなったり、今まであたりまえにできていた入浴やお手洗いですら、できなくなったりします。自分が果たしてきた役割を失い、家族や他の人に迷惑をかけ、本当は自分でやりたいことを制限されてしまい、自尊心が崩れていきます。
私が私でなくなっていく・・・
私はまだ、本当に私なのだろうか?
私には、まだ生きている価値があるのだろうか?
何のために生きているのだろうか?
多くの人が、このような苦しみを抱えます。この苦しみは、何もがんという病気の人だけが抱える苦しみではありません。認知症や心臓病や神経難病を含むすべての人が抱える苦しみです。やがてお迎えが来るであろうすべての人とその家族が避けて通れない大切なテーマがここにあります。
あらためてエンドオブライフ・ケアでは、このような苦しみを抱えた人の尊厳を取り戻すことを意識します。どうすれば、尊厳を取り戻すことができ、尊厳を守り、さらには、尊厳を維持していくことができるのでしょう。
ディグニティセラピーとは
1つの可能性として、ディグニティセラピーを紹介します。ディグニティセラピーとは、カナダの精神科医であるチョチノフ医師(Dr. Harvey Max Chochinov)によって考案された精神療法的アプローチです。9つの質問をもとにしたやりとりを経て本人の尊厳を取り戻し、そして、本人の言葉を大切な人に宛てたメッセージとしてまとめることで、取り戻した尊厳を、世代を超えて継承していくことを可能にするものです。メッセージを書くのは、本人ではなくセラピストです。訓練は必要ですが、構造化されており、本人との信頼関係ができていれば、短期的で有効な精神介入方法であるとされています。

エンドオブライフ・ケア協会理事・小澤 竹俊が院長であるめぐみ在宅クリニックでは、2014年からディグニティセラピーを実施し、100名以上の患者さんがメッセージを手紙として作成しました。ディグニティセラピーを通して、人生を振り返り、本人が誇りに思っていること、果たしてきた役割、学んで来たことなど、本人が大切にしてきたことや憶えていてほしいことを言葉にします。そして、その言葉は手紙などの形で、大切な人に受け継がれていきます。
質問項目は、めぐみ在宅クリニックのホームページや、以下の書籍でもそのエッセンスをお伝えしています。
- 『今日が人生最後の日だと思って生きなさい』(アスコム)
- 『折れない心を育てる いのちの授業』(KADOKAWA)
- 『死を前にした人にあなたは何ができますか?』(医学書院)
ディグニティセラピーを実施され、当協会ホームページへの掲載許可をいただいた方のものをご紹介いたします。
- 志田早苗さま: コラム39:Bearing Witness:国際NGOで学んだ私がいま伝えたいこと
- 望月草也さま: コラム55:生涯教育者として
ディグニティセラピーをご自身で実施してみたい方へ
ディグニティセラピーに関するチョチノフ医師の書籍は、日本語訳が2冊出版されています。
エンドオブライフ・ケア協会では、ディグニティセラピーの基礎となる考え方とアプローチを学ぶ講座を2016年以降、年に1回開催しております。受講にあたってはベースとなるコミュニケーションが大切であることから、「エンドオブライフ・ケア援助者養成基礎講座」をあわせて受講いただくことをお勧めしています。
<現在募集中の講座>
2024年1月8日(祝)10:00-16:00 世代を超えて 継承していく「わたし」~ はじめてのディグニティ・セラピー ~
ディグニティセラピーの実施を依頼したい方へ
個別にご相談を承ります。