課題背景
Background
人口動態の予測からわかること
団塊の世代がすべて後期高齢者となる2025年には、超高齢少子化多死時代における様々な問題が表出することが予想されます。
現在65歳以上の高齢者人口は、3,392万人、高齢化率は26.7%ですが、2025年には3,657万人に達し、2042年に3,878万人でピークを迎えるまで高齢者人口は増加を続けると推計されています。
一方で、日本の総人口は、長期の人口減少過程に入っており、2060年には8,674万人になると推計されています。
総人口が減少する中で高齢者が増加することにより高齢化率は上昇を続け、2035年には33.4%で3人に1人が高齢者となります。そして2060年には高齢化率39.9%に達して、国民の約2.5人に1人が高齢者となる社会が到来すると推計されています。
以下のグラフは内閣府による平成28年版高齢社会白書より、高齢世代人口の比率です。65歳以上の高齢者人口と15~64歳人口の比率を見てみると、1950年には1人の高齢者に対して12.1人の現役世代(15~64歳)がいたのに対して、2015年には高齢者1人に対して現役世代2.3人となっています。今後、高齢化率は上昇を続け、2060年には、1人の高齢者に対して1.3人の現役世代という比率になるとされています。
また、2015年時点で年間死亡者数は130万人のところ、2025年には150万人を越えることが予想されます。
以下のグラフは、厚生労働省による、死亡場所別、死亡者数の年次推移と将来推計です。1975年から2010年までの実績をベースに、2030年までの期間における死亡場所別死亡者数の将来推計を表しています。グラフ上部は医療機関で死亡した人、グラフ下部のオレンジ色の部分は、自宅で死亡した人を表しています。この推計によると、2010年を起点に2030年までに約40万人死亡者数が増加すると見込まれていますが、看取り先の確保が困難と言われています。
2014年時点で病院死は8割弱を占めますが、この先急性期病院の病床数増加の見込みはなく、むしろ削減されていきます。つまり、病院だけでは支えきれない、増え続ける「人生の最終段階を迎えた人」を、各地域の自宅や介護施設で最期まで支えられる体制の構築が喫緊の課題となっています。一方、自宅や介護施設で最期まで暮らすことを願う国民は増えています。
厚労省が行った在宅医療を支える様々な施策の結果、看取りまで対応する在宅支援診療所・訪問看護ステーション・介護施設は増え、熱意ある専門職も増え、連携する職種間で病歴等の情報連携は進むようになりました。しかしながら、在宅療養環境には地域差があり、患者・利用者・家族の望む結果が必ずしも実現できているとは言えません。
これから予想される課題
- 自宅や介護施設で最期まで過ごしたいと希望する人が増えるなか、家族や関わる援助者が少しでも看取りに不安を感じれば救急搬送に依存する。救急医療への負担が増加し、必要に応じた病院での受け入れが困難になる
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親や祖父母の介護を担う働き盛りの世代、特に40-50代のビジネスパーソンは職場からの理解との狭間で仕事との両立に難渋する。また、家族の介護のために離職を選んだ結果、介護生活が長く続くに連れて経済的に困窮する
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子育てをしながら親の介護を担う、特に女性のダブルケアへの負担が増加する
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地域でのつながりが希薄化する中で、認知症・独居高齢者が孤立していく
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独居での自宅看取りは資産価値が下がると家主が思うため、65歳以上の高齢者が部屋を借りることが難しくなる
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少ない人材で多くの困難なケースに対応していくことで、医療や福祉従事者の心身の負担が増加し、継続することが困難になる
上記を含め様々な課題が山積しているなかで、エンドオブライフ・ケア協会は、まず地域で人生の最終段階に対応できる人材を育成することから活動を開始しました。課題解決に向けて、それぞれの強みを持った諸団体と連携して活動を続けて参ります。