第39回「エンドオブライフ・ケア援助者養成基礎講座」(福岡)

  • 開催レポート

2月10日(土)・11日(日)、福岡でエンドオブライフ・ケア援助者養成基礎講座を開催いたしました。当日は80名の皆さまにご参加いただきました(ファシリテーター候補者枠、eラーニング+集合研修1日受講者を含む)。開催にあたり、運営をご支援くださった、地域学習会ファシリテーターならびに候補者のみなさまに心より御礼申し上げます。

参加者

80名の方にご参加いただきました。

職種の内訳は、看護師50%、医師15%、介護支援専門員12%、介護職8%、リハビリテーション職6%、相談員3%、薬剤師1%、歯科衛生士1%、管理栄養士1%、その他3%でした。その他職種では事務職や看護学校教員の方にもご参加いただきました。

地域別では開催地の福岡含む九州山口からのご参加が8割以上を占めたほか、広島、岡山、愛媛などからのご参加をいただきました。中には沖縄、東京など遠方からのご参加者もいらっしゃいました。

 

講座の様子

協会理事であり、横浜で在宅診療を行うめぐみ在宅クリニック院長の小澤 竹俊が、2日間の講師を務めました。


2日間の講座では、以下の要素を学びます。

  • 課題背景(2025年問題に備えて)
  • 人生の最終段階に共通する自然経過
  • 苦しむ人への援助と5つの課題
  • 意思決定支援
  • 自宅・介護施設で求められる症状緩和
  • 多職種連携で「援助」を言葉にする(マクロ)
  • 1対1で対応する(ミクロ)

ただ受け身で聞くのではなく、ロールプレイや事例検討のためのグループワーク、学んだことの振り返りなど、ほとんど休む間もなく、口と手をたくさん動かしていただきました。

1日目の午後、同じビルの別会議室では、過去の受講生がELC九州山口の名のもと集まり、ELC糸島唐津を主催する笠原先生がファシリテーターとして、学習会を開催されていました。九州山口内の学習会情報を共有する試みもあったそうです(下記写真右)

懇親会

1日目終了後、懇親会を開催しました。
別会場でELC九州山口に参加していた方々も合流され、各地域の取り組みについて紹介がありました。また、これから地域学習会を立ち上げようとする方と、すでに開催している方とのネットワーキングの場にもなりました。実際、ここで出会われた鹿児島県喜入町の濱田先生が学習会を立ち上げる際には、ELC糸島唐津の学習会に学びに行かれたあと、笠原先生が喜入町まで応援に駆けつけられたり、あるいは、熊本の清藤先生が立ち上げの際には、濱田先生がご参加になったりと、この場から始まり、地域を越えた交流が進んでいます。

 

 

受講者の生の声(後日)

受講後、職場に戻って実践していらっしゃるみなさまの声をお聴きしました。

和田奈緒子さま、医師
特定医療法人萬生会 合志第一病院(熊本県)

 2年前から現在の病院に勤務するようになり、地域の高齢者医療、訪問診療、施設への往診などを通じて、がんの方だけに限らず地域の方々を最期まで多職種で支えることの大切さややりがいを感じるようになりました。そんな私にぴったりの研修会はないものかとインターネットで検索していた所、見事にこの研修会をキャッチしたのです。

 事例検討のグループワークでは、当初解決できないと思っていた苦しみが、支えをキャッチして具体的な解決方法をみんなで考えていくうちに解決できそうな苦しみに変わった経験をしました。解決できない(と考えていた)苦しみの中から解決できる可能性のある苦しみをキャッチする事ができることを学び、解決できる可能性のある苦しみを取りこぼさないように努めるようになりました。「わかってくれそうな人は聴いてくれる自分」をキャッチフレーズにして診療をするようにもなり、患者さんが話す言葉一つ一つを以前よりも丁寧に聴くようになった気がします。

 このように養成講座では様々な事をキャッチしますが、支える側である自分の支えを確実にキャッチする事ができます。小澤先生をはじめとしてELC協会のみなさん、ファシリテーターの方々、講座を受講している仲間達と時間を共有するだけで暖かい気持ちになります。自分の身近な所に同じ思いを持つ方達がいることに力をもらいます。一人で参加しても大丈夫です。地元に帰ってからの濃厚で楽しいネットワークを築けますから(熊本だけではないはずです!)。

 

江口智行さま、看護師
あったか訪問看護(福岡県)

 エンドオブライフ・ケア。この言葉を知った頃はまだ総合病院勤務の看護師でした。訪問看護をしたいと思い看護師を目指し20年以上が経ち、大先輩の先導の下、今回の研修に出会うことが出来ました。死を控えた方達へのケア。当たり前の生活の中の在宅でお別れを告げる。人生の集大成へと向け穏やかな良い死の日を迎える。このような方々の生活の支えとなれるよう学べた短くも濃い2日間でした。研修では、こう言った生活に関わる様々な職種の方々と共に業種を忘れて学べました。緊張もつかの間、小澤先生の話に夢中になり2日間あっという間に過ぎて行ったほどです。在宅ど素人の私にとって、講義の座学だけでなく、仮想体験出来るロールプレイでの実践。全て目から鱗!でした。

 今現在、研修を受けたことで、訪問看護の実践を通し、学びの多い日々を送れています。在宅での看取りに関わる中、研修で学んだことは私の強い心の支えとなっています。出来ることならば、もっと早くに、病棟で勤務している頃から出会っていればと、思った程です。

 とても素敵なエンドオブライフ・ケア研修。どんな職種であれ、どこで勤務している人であれ、死を前にした人がいる現場の中で関わっている多くの人に是非足を踏み入れて頂きたいと思います。きっと、死をタブー視するのでなく分かりやすく話しやすいものとして捉え、支えになることができると思います。私もこれから支えを強めていける一援助者として学びを深め実践していけるように、はじめの一歩の先を目指して行きたいと思います。皆さまに感謝です。ありがとうございました。

 

小齊平智久さま、医師
社会医療法人博愛会 相良病院(鹿児島県)

 昨年末、5名の方(異業種)から、ほぼ同時期に『エンドオブライフ・ケア(ELC)援助者養成基礎講座』の受講を勧められました。私は前医で3年前からACP(アドバンス・ケア・プランニング)による意思決定支援に取り組んでいたので、対人援助に多少なりとも自信はありましたが、「まぁこれも運命かな…」と受講を決めました。

 「今日が入学式だと思っておいてください」で始まった小澤先生のお話しは、淀みなく、心地よく、言葉たちを紡いでいくものでした。どんな困難にも逃げず、ひたすら患者さん・ご家族と向き合い続けた『凄み』とでも申しましょうか、医師のお話しを聴いて「この人すごい!」と直感したのは恐らく初めてかもしれない。そして自分の未熟さを思い知らされました。ACPだけで対人援助をマスターした気になっていた…ACPは対人援助スキルの一部に過ぎなかった…と。

 受講して10日程経ったある日、私自身が体調不良で倒れました。安静を余儀なくされ、いくつかのことを諦めざるを得なくなりました。しかし私にはELCのスキルがありました。自問自答の中で「私は多くの方々に支えられている」「まだまだ出来ることはいっぱいある」と気付かされ、目の前の霧がパーっと晴れ、本当に心が穏やかになりました。

 今年4月から緩和ケア科で働いています。もちろんELC援助士としての誇りを忘れず、患者さん・ご家族の支えをキャッチ+強めるトレーニングの日々を送っています。

 

医師(福岡県)

 医療職は、ともすれば、その診療姿勢が独善に陥る可能性もあり、一度自身の姿勢を再評価してみようという思いがあったことと、人生の最終段階を過ごす方々とより良い関係が築けるようになりたいという動機から参加しました。

 期待を裏切らず有益な講習会でした。医療者側と患者側のそれぞれの立場からものごとを考えることができた一方で、自身の診療における姿勢の客観的な評価を他の参加者から頂きました。また、人生の最終段階を過ごされている患者さんに接するには、大前提として相手を思いやる気持ちが大切ですが、その気持ちを表現するためのスキルもまた重要であり、その一端を学ぶことができたと感じています。

 現在は、以前に比べて患者さんやご家族の話に耳を傾ける機会が増えたと思います。また、重たい状況の中でも、私なりに気持ちを表現することが比較的スムースになったとも感じています。週末の二日間(私のように1日目をeラーニング視聴し、2日目のみ参加した場合でも)を費やす価値はあると思いました。

 

まとめ

福岡での開催は今年7月に行われた第30回に続いて5回目でした。九州山口ブロックでは認定ファシリテーターのみなさまにより、山口、糸島唐津、北九州、熊本、奄美、喜入で継続的な地域学習会が企画されています。協会としては2日間の講座を提供して終わりではなく、受講した方がさらに理解を深め、実践し、振り返り、自らと周囲を進化させていく、そんなお手伝いができたらと願っています。

次回は、3月3日(土)-4日(日)、仙台開催をレポートいたします。

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