第60回「エンドオブライフ・ケア援助者養成基礎講座」(大阪)

  • 開催レポート

3月16日(土)・17日(日)、大阪でエンドオブライフ・ケア援助者養成基礎講座を開催いたしました。当日は107名の皆さまにご参加いただきました(2日間の受講者、eラーニング+2日目集合研修の受講者、ファシリテーター候補者枠の方を含む)。

開催にあたり、運営をご支援くださった地域学習会ファシリテーターならびにファシリテーター候補者のみなさまに心より御礼申し上げます。  

参加者

職種の内訳は、看護師59%、介護支援専門員14%、介護職6%、リハビリテーション職4%、ソーシャルワーカー3%、医師、看護学校教員、相談員、保健師、薬剤師がそれぞれ2%、その他は4%でした。その他職種には医療事務、支援員、僧侶、学生が含まれました。

地域別では開催地の大阪府および近県からのご参加が目立つ一方、中国四国・九州地方や関東エリアからのご参加者もいらっしゃいました。

 

講座の様子

協会理事であり、横浜で在宅診療を行うめぐみ在宅クリニック院長の小澤 竹俊が、2日間の講師を務めました。


2日間の講座では、以下の要素を学びます。

  • 課題背景(2025年問題に備えて)
  • 人生の最終段階に共通する自然経過
  • 苦しむ人への援助と5つの課題
  • 意思決定支援
  • 自宅・介護施設で求められる症状緩和
  • 多職種連携で「援助」を言葉にする(マクロ)
  • 1対1で対応する(ミクロ)

ただ受け身で聞くのではなく、ロールプレイや事例検討のためのグループワーク、学んだことの振り返りなど、ほとんど休む間もなく、口と手をたくさん動かしていただきました。

懇親会

終了後、半数以上の方が懇親会にご参加くださいました。

 

受講者の生の声(後日)

受講後、職場に戻って実践していらっしゃるみなさまの声をお聴きしました。

 

羽野龍樹さま、僧侶
一般財団法人 本願寺ビハーラ医療福祉会(大阪府)

 私は大阪で僧侶をさせていただいておりまして、現在は特養の相談員兼僧侶として法話会や傾聴活動を週に一回行っております。私がELCの活動を知ったのは、僧侶仲間であり、かつELC鹿児島の会員でもある友人の紹介からでした。

 養成講座では、約100人の参加者の中で僧侶(宗教関係者)は私ひとりだけ。それ自体は予期していたことでしたが、予想外だったのは各専門職の皆さんにびっくりするぐらい私と言う宗教者の存在を歓迎していただけたことです。「やっぱりお坊さんの視点があるといいねー」と言っていただけたことが、何より私自身のケアになりました。

 と言うのも、私は僧侶であることの他は何の専門職でもないので、介護や医療、社会的な援助は何も行うことが出来ません。目の前で強い身体的・精神的苦痛を訴える方、またその緩和が極めて難しい方を目の前にすると、文字通り「なにも出来ない」のです。私の宗派はお祈りや祈祷も行わないので、宗教者としてさえ果てしなく無力です。

 現場で私にあるのは、強いて言えば「時間」だけです。他の専門職の方々のぎりぎりの援助の中でひねり出されたこの貴重な時間を、私は私の「傾聴」の時間とさせて頂いています。しかし、その時間を頂けたからと言って、やはり私は無力です。私が行うのは「そばにいること」だけです。はっきり言って、何のケアにもなっていないこと(そもそも意志疎通が難しい方にも多く出会わせていただきました)が多くあります。

 今回の養成講座を経て、私に取っての傾聴は「ケアの方法」ではない、と言うことがはっきりと自覚できました。
問題解決のための傾聴ではなく、ましてや医療的・福祉的援助を補助するための傾聴でもなく、「ただ、そばに居たいから」の傾聴だと、「傾聴のための傾聴」なのだと、感じました。

 これは養成講座の主旨からは外れてしまう理解なのかも知れませんが……必ずしも傾聴が何らかのケアにつながらなくてもいい、何らかの成果のための傾聴ではなくてもいい、無条件に「気持ちを聴きたい」「そばにいたい」の傾聴であってもいいのではないか、と感じました。

 多くの学びと、今後に続くご縁を頂くことの出来た2日間でした。本当にお世話になりました。今後とも、よろしくお願いいたします。

 

入澤裕さま、リハビリテーション職
あっと訪問看護ステーション(大阪府)

 在宅医療分野で勤務している理学療法士です。在宅で療養される終末期の方の担当をさせていただく機会があり、その際に自分の無力さを痛感し、リハビリ職としてどうかかわるべきかとても悩むことがありました。その時、職場の上司が受講されていたエンドオブライフ・ケア援助者養成基礎講座のことを思い出し、興味を持ったのがきっかけです。

 受講をして改めて自分のかかわりを振り返ることが出来ました。すぐに思い出したのは80代の男性で奥様、娘様との3人暮らしの方でした。本人は要介護5で寝たきりの状態ですが、夕食時は車いすへ移乗し家族で食卓を囲むことを楽しみに過ごされておりました。しかし、徐々に衰弱がみられ車いすで食事をとることが出来なくなりました。私はその際に役割は終わったように感じ、ケアマネージャーに他のサービスを提案したところ、「ほかのサービスはいいけど、リハビリは外さないでと言われている」、「お父さんはあなたが訪問した時だけ嬉しそうにお話しされるから家族さんも安心されている」とお話しいただけました。リハビリでできることが少なくなっても本人を支えるためにできることはあると感じることが出来ました。もともとお話し好きの方でしたので過去に仕事をされていた時のこと、お子さんやお孫さんのことなど嬉しそうにお話しされていたことが思い出されます。この時はあまり意識しておりませんでしたが反復・沈黙・問いかけを繰り返していたように思います。受講してさらにスキルが向上したように感じております。

 受講後も終末期の方とかかわる中で、その方の支えを強めることを意識し多職種と協力して仕事もできるようになってきております。また受講後は一緒に参加されていた仲間とつながりを作ることが出来、切磋琢磨できる環境になったことうれしく思います。今後も積極的に地域の勉強会に参加し、苦しみを抱える方の支えになれるよう努力してまいります。

 

まとめ

近畿には継続学習の場として、ELC近畿研究会があり、その他にもいくつかの学習会が定期的に開催されています。ご関心のある方はぜひ繋がり、学び続けていかれますように応援しております。

協会としては2日間の講座を提供して終わりではなく、受講した方がさらに理解を深め、実践し、振り返り、自らと周囲を進化させていく、そんなお手伝いができたらと願っております。

次回は、4月6日(土)-7日(日)、東京開催をレポートいたします。

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