1月30日(土)、雪の降る中、新年最初の養成講座がスタートしました。初めての東北での開催です。
今回は「東北がんプロフェッショナル養成推進プラン」との共催にて開催いたしました。地元の方々のご協力を得て、その繋がりからのご参加も多く、大変アットホームで賑やかな回となりました。
開催にあたり、今回も過去の受講者の方々にサポーターとして、当日の運営から仲間へのお声掛けまで多くのご協力をいただきました。心より御礼申し上げます。
職種の内訳は、看護師54%、介護関連職種26%、医師7%、その他13%でした。今回も最も多かったのは看護師の方ですが、介護関連職種も多数ご参加いただきました。
地域別にみると、宮城県からのご参加が最も多く20名の方がお越しくださり、続いて青森県、福島県、山形県、秋田県、栃木県からも複数名でご参加くださいました。その他、岩手県、大阪府、兵庫県からもお越しいただきました。
協会理事であり、横浜で在宅診療を行うめぐみ在宅クリニック院長の小澤 竹俊が、2日間の講師を務めました。
2日間の講座では、以下の要素を学びます。
ただ受け身で聞くのではなく、ロールプレイや事例検討のためのグループワーク、学んだことの振り返りなど、ほとんど休む間もなく、口と手をたくさん動かしていただきました。
終了後、7割近くの方が懇親会にご参加くださいました。懇親会では、ペアで現在の活動内容などお話いただいた後、全体で他己紹介としてお相手についてご紹介いただきました。
2日間の養成講座も終わりに近づいたころ、会場内で受講者のみなさまから、そのとき感じたことを生のお声として頂戴いたしました。
宇野 さつきさま
医療法人社団 新国内科医院(兵庫県)、看護師
これまで多くの患者さんの看取りをしてきたのですが、地域で看取る上で介護職や様々な人たちにどんなふうに看取りや緩和ケアのことを伝えていけばよいのか。ここ2-3年取り組んできたのですが、小澤先生の経験をもとにブラッシュアップしたいと思い参加しました。現場のOJTでも活かして、神戸が素敵な看取りの街になればいいなと思って、これからも取り組んでいきたいと思います。
渡部 典美さま
きらり健康生協訪問看護ステーションしみず(福島県)、看護師
看取りを行ってはいますが成功事例ばかりではなく、多職種と組むにあたって、考え方や対応の仕方が統一されていないなか、特に失敗事例についてはどう振り返り、どう改善していけばよいか日々悩んでいたところ、講座を知り参加しました。人生の最終段階においての援助については、傾聴や寄り添うなど概念的な言葉で学問的には習ってきたものの、それが技術としてケアができるのだなと感じました。このような研修を多職種で行うことが有効であり、行政にも福島市全体で取り組めるよう提言していきたいと思います。
あれから4週間。職場に戻って実践していらっしゃるみなさまの今をお聴きしました。
中山 大樹さま
せんだんの丘訪問看護ステーション(宮城県)、作業療法士
その方の人生の最後まで支援者として関わるために
作業療法士として10数年、療養型病院や介護老人保健施設を経て現在は訪問看護ステーションに勤務をしております。
病院勤務の時は、対象者が「体調が悪い」、「緩和ケアへ移行」となった場合、作業療法は中止となり、その後の支援に関わらなくなる事が普通でした。
職場を移した頃から「なぜ緩和ケアに移行したから、支援の輪から離れなければいけないのか?」という疑問を感じるようになりました。
そこから、一人の支援者として最後まで関われないか?と実践を試みるも、経験も無く学ぶ機会も少ないため、手探りで進むしか無く、常に不安と無力感ばかり感じていました。
「もう良い、死にたい」と話す方に自分は何ができるのか、支える一人になれるのか?そう思う事が増えれば増えるほど、その方に対峙する事が怖く感じる自分がいました。
そんな中、この養成講座が開催されるとの話を聞き、すぐに応募しました。
養成講座の中では、対象者がどのような経過をたどるのか、その経過の中、対象者はどのような思いを持っているのか?対象者は何を求めて、何を必要としているのか、を系統立てて学ぶ事ができました。
今まで疑問や不安を感じていた事の答えを頂き、大変勇気を貰えました。
研修後に研修で教わった沈黙の活用など実践したところ「もう生きる意味が無い」と話されていた方が、「親の50回忌を務めるのが私の仕事」、「娘に料理の仕方を教えるようにしたの」、と話していただけるようになりました。その時は、微力ながらその人の支えになれたのかと、とても嬉しくなりました。
緩和ケアなどにこれから従事する方、最後を迎える方への対応に不安を感じている方は是非この研修を受ける事をお勧めします。基礎知識と、関わる際の勇気を貰える、そして仲間と繋がれる研修になっています。
荒井 裕江さま
社会福祉法人 宏恵会 特別養護老人ホーム リーフ鶴ヶ谷(宮城県)、介護職
介護福祉士となってから家族の看取りや特別養護老人ホームの勤務となり人生の最終段階に直面することが多くなりました。
H26年7月に実母と夫を末期がんで看取りを行った時も家族として、介護士として本当にこれで良かったのかと悔いが残り、自問自答を繰り返す日々が続いていました。職場でも看取りに関わる事が多いがその方の思いに寄り添ったケアが出来ているのか、その思いに寄り添う為には本当に何が必要なのかが分からなくなってきている自分がいて、受講する事で不安に思っている事が払拭出来るのではと思い受講しました。
講座では沢山の学びを得ましたがその中でも、援助的コミュニケーションの基本「苦しんでいる人は、自分の苦しみを分かってくれる人がいるとうれしい」という事が強く印象に残っています。繰り返しロールプレイを行い、反復・沈黙を用いて援助する事の大切さを学びました。
職場では反復・沈黙を用いての関わりを持ち、内面的な気持ちを引き出す事が出来ました。講座で学んだ事を同僚や知人に広めて、講座を受講してもらい、私達が味わった感動を体験して欲しいと思います。
塩田 剛士さま
ホームホスピス結びの家くるみ(福島県)相談員
私は、25年前の祖父の死をきっかけに“ホスピスで患者さんやご家族の心のケアをしたい”と思い、MSWとしてその点を支援の土台としてお話しを伺ってきました。その中でコミュニケーションスキル等自分が実践してきたことと今後何をすべきかを言語化したいと思い、本講座に申し込みました。
講座からは、『苦しみとは』『支えとは』をキーワードとして、又苦しみや支えを援助するためのスキルとして、多職種や複数で話し合うことで多角的な意見が出ること・ライフレビューの重要性・キーメッセージのキャッチの仕方を学びとして得ることができました。
一方で、講座を通して私自身の苦しみや支えが何かと自然に考えており、その事に向き合ったことがハードなワーク以上に苦しかったです。数ヶ月ぶりに再会できた方と講座後にやり取りをさせて頂き、今は本当に自分がやりたいことは何だったかを思い出すことができました。
現場で生かしたいことは沢山ありますが、入居者さんの今だけを見ず元々がどのような方だったのかに常に思いを巡らせるようになっています。何らかの状況によりご本人とコミュニケーションが図れなくなっても、ライフレビューを通して苦しみや支えが何かを伝えて頂けるように心掛けています。
本講座には様々な職種・所属の方が参加しており、他職種の考えを聴くことができる機会であり、現在もFacebookで繋がっている方が複数います。私のように自分自身が苦しくなることがあるかもしれませんが、スキルを学ぶだけで終わらない(終われない?)お土産を持って帰れることにも期待してはいかがでしょうか。
飯島 惠子さま
NPO法人ゆいの里(栃木県)、コミュニティ・ケアマネジャー&ソーシャルワーカー
昨年6月のエンドオブライフ・ケア協会 設立記念シンポジウムに参加して以来、講座への参加を希望していましたが、日程と仕事の折り合いが調整つかず、やっと第7回仙台会場にて参加することができました。
半日や数時間の受け身の講演や研修と異なり、さまざまな専門職の皆さんと時間と空間を共有して、グループワーク、演習を積み重ね、気づきを深めながら、お互いに学び合う2日間。「だれもが生きてきてよかったと思えるように 自分の人生に誇りを持てる最期を迎えられるように・・・」、これからのますますの学びが大切なことと痛感しました。
講座受講後、94歳独居の方のサービス担当者会議にインフォーマルな支援者として出席。長期入院から本人の意思で自宅に退院。自宅で本人の声を娘さんたち、地域包括、サービス事業所と共有しました。「うちはいいなぁ、このうちで、畳の上で死にたいなぁ、んでも、しょうがないこともあるなぁ」本人の右目から大きな涙がぽろんと出てきました。家族の歴史、子らの事情、経済的な問題、悩ましい展開でした。まだ、決められない家族の思いと本人の思いを受けとめながら、これからの流れ、本人の終章を見守っていきたいと思っています。
「誰かの支えになろうとする人こそ 一番 支えを必要としています」
小澤竹俊先生からいただいたこの言葉を実践の場で、ひしと感じています。
受講後、Facebook等を通じてそれぞれが開催している勉強会を紹介し参加し合うなど、交流が続いているようです。ぜひ、今後も地域で継続的に、仲間と勉強会や振り返りの機会を持っていかれることを願っております。
協会としては2日間の講座を提供して終わりではなく、受講した方がさらに理解を深め、実践し、振り返り、自らと周囲を進化させていく、そんなお手伝いができたらと願っております。
次回開催は、2月20日(土)-21日(日)、東京開催です。多様な参加者のみなさまとお会いできますことを、スタッフ一同楽しみにしております。
© End-of-Life Care Association of Japan