第15回「エンドオブライフ・ケア援助者養成基礎講座」(福岡)

  • 開催レポート

7月24日(土)、福岡での養成講座がスタートしました。当日は55名の皆さま にご参加いただきました。症状緩和や意思決定支援などで多くのご質問、ご意見があったり、ロールプレイでご自身を省みての全体共有が次々と挙がるなど、大変積極的にご参加いただきました。

開催にあたり、サポーターの方々に当日の運営から仲間へのお声掛けまで多くのご協力をいただきました。心より御礼申し上げます。

参加者

55名の方にご参加いただきました。

 

職種の内訳は、看護師58%、介護職13%、医師7%、介護支援専門員5%、歯科医師4%、その他13%でした。その他13%には医療事務、管理栄養士、助産師、薬剤師、事務職など、多彩な職種の方がご参加くださいました。

地域別では、開催地福岡県と山口県からのご参加がほぼ同数で、合わせて33名の方がお越しくださったほか、鹿児島県、熊本県、長崎県、宮崎県などの九州各地や、岡山県、岐阜県など遠方からもご参加をいただきました。

 

講座の様子

協会理事であり、横浜で在宅診療を行うめぐみ在宅クリニック院長の小澤 竹俊が、2日間の講師を務めました。

2日間の講座では、以下の要素を学びます。

  • 課題背景(2025年問題に備えて)
  • 人生の最終段階に共通する自然経過
  • 苦しむ人への援助と5つの課題
  • 意思決定支援
  • 自宅・介護施設で求められる症状緩和
  • 多職種連携で「援助」を言葉にする(マクロ)
  • 1対1で対応する(ミクロ)

 ただ受け身で聞くのではなく、ロールプレイや事例検討のためのグループワーク、学んだことの振り返りなど、ほとんど休む間もなく、口と手をたくさん動かしていただきました。

懇親会

終了後、半数以上の方が懇親会にご参加くださいました。ペアで現在の活動内容などお話いただいた後、全体で他己紹介としてお相手についてご紹介いただきました。

 

受講者の生の声(当日)

2日間の養成講座も終わりに近づいたころ、会場内で受講者のみなさまから、そのとき感じたことを生のお声として頂戴いたしました。

安田 和代さま、管理栄養士
医療法人かがやき 総合在宅医療クリニック(岐阜県)

現在は在宅にうかがっておりますが、今までは病院に勤務していました。病院では管理栄養士が看取りの場に遭遇することはありませんでしたが、在宅に来てから患者さんの最期に関わることが多くなり、どのようなお言葉掛けをすればよいのか疑問があったので受講しました。患者さんと関わっていく中で、経験的に対応してきたことを言語化、図式化して教えていただけたことが、大きな学びになりました。管理栄養士なので、食の部分で患者さんの最期に携われることがもっとあるんじゃないか、という思いで受講しましたが、受講を終えて、管理栄養士はもっと患者さんの話が聞ける職種だと思い、話が聞けるという強みを活かしていけたらいいなと思いました。食に関わらず患者さんの話の中から苦しみをキャッチして、そこに援助ができる援助者になれたらいいなと思いました。

 
 

桐ケ谷 大淳さま、医師
日南市立中部病院(宮崎県)

内科、在宅医療のほか、在宅医療介護連携推進室のスーパーバイザーとして多職種連携に繋がる研修会等を企画運営しています。スピリチュアルペインに対する研修会はあまりなく、また多職種向けの講座ということで、今回自分が学んだことを地域やほかの職種の方々にも還元し、一緒に学んでいけるヒントが得られるかと思い受講しました。とても内容が充実した2日間で、スピリチュアルペインに対する基本的なところからグリーフ、意思決定支援などかなり幅広い内容だったのですが、どんな人にも分かりやすいように言語化してくれて、皆さんがそれぞれ現場に持ち帰って実践できるような内容だったと思います。まず現場で「反復・沈黙・問いかけ」を実践し、また実際に地域で困っている事例を取り上げ、事例検討会のような形に出来たらと思います。地域全体のレベルアップになるような勉強会やきっかけ作りができればよいなと思っています。

 
 

平田 靖子さま、看護師
ながの訪問看護ステーション(岡山県)

訪問看護ステーションで働いています。苦しんでいる方と向き合わないといけない現場で、逃げることの出来ない現場として存在していたので、割り切って関わっていた、というのが正直なところあり、自分の中でもかなり苦手意識がありました。そうした苦手意識がどうにか克服できるのではないか、という期待もあり受講させていただきました。日頃何気なくやっていたことが、良かったんだ、と思える部分がありました。それから、支援する内容を言語化されたということがすごく大きく、自分だけでなく別のスタッフや、別の職種の方に伝えやすいツールとして、教えていただけたかと思います。まずはこの2日間で学ばせていただいたことを自分自身が消化しないと、なかなか現場では実践できないし説明できないと思うので、まずは自分のものに落とし込んだ後に、他のスタッフに伝えていく作業をしていきたいなと思っています。

 
 

 

受講者の生の声(後日)

受講後、職場に戻って実践していらっしゃるみなさまの今をお聴きしました。

三股 早輝子さま、薬剤師
社会医療法人長門莫記念会 長門記念病院(大分県)

「ここで最後を迎えることにしました。頼むね。」ある患者様にそう言われたことがきっかけで、私は緩和ケアに向き合うようになりました。

亡くなる直前まで関わることができたのもその患者様が初めて。その後も何人かの患者様の最終段階に関わらせていただく中、いつも、これでよかったのか…と自問自答していました。そんな中、緩和医療薬学会のワークショップでこの講座について知り、『看取りへの「苦手意識」から「関わる自信」へ』というキャッチコピーに惹かれ、参加を決めました。

講座の中で、“援助を言葉にする”ことが自信につながるというお話があり、2日間は、援助を言葉にしていくためのワークショップの時間が多く設けられていました。
受講中は、流れるようにお話しされる小澤 竹俊先生のテンポのよい講義についていくのに精一杯でしたが、わかりやすい説明と重要な所は、何度も繰り返し説明していただいたことで2日目が終了したときは、この2日間を乗り切った達成感と満足感そして、共に学んだ方たちとの一体感も同時に感じていました。

「理解していること」=「できること」ではないことを受講中のワークショップで何度も実感しましたが、現場でも、丁寧に相手の話を聴き、反復することの難しさを痛感しています。

ですが、この講座に参加してからは、以前に比べると患者様との接し方に悩むことが減ったような気がします。
それは、患者様との接し方について、この講座で学ぶことで具体的にどうしたらいいのかが明確になったからだと思います。

今、患者様との接し方に悩んでおられる方は、ぜひこの講座に参加していただいて苦手意識を少しでも解消していただければと思います。

 

池部 敦子さま、看護師
医療法人医誠会 都志見病院(山口県)

緩和ケアの仕事に携わるようになって随分時間が経ちました。そして現在緩和ケア専従看護師として勤務しています。人生の最終段階を迎えた人と、その家族と関わることが多い仕事をさせていただいています。そのような中で自分の関わり方を再考する機会を得ること、そして学んできたことを皆に伝えていきたいと思い、講座に参加させていただきました。

「 相手が私をわかってくれる人(理解してくれる人)と思うことは可能性がある。苦しんでいる人は、自分の苦しみをわかってくれる人がいるとうれしい。どんな私であれば苦しむ相手から見て、わかってくれる人(理解してくれる人)になれるか。それは聴いてくれる私。」2日間の講座でそれをしっかり学ばせていただき、そのことを念頭に置きながら関わるようにしています。そうすると相手は次々と色んな話をしてくださいます。それは相手の支えを強めることにつながります。

同じ目標を持った方たちと出会えたことは私の大きな財産となりました。ELC山口の活動も開始となりました。ここで学んだことを地域での活動に活かしていけたらと思います。ありがとうございました。

 

清藤 千景さま、内科医師
清藤クリニック(熊本県)

クリニックの開業医で、午前は外来診療、午後は在宅医療を行っています。外来も在宅も、高齢の方が中心で、健康、記憶等を喪失し、苦しみを抱えた方で溢れています。在宅の方では、人生の最終段階を迎えた方が最期までご自宅で過ごすお手伝いも行っています。関わらせていただく全ての方々の苦しみに、少しでも寄り添える人になれればと受講しました。

まず、大切なのは、誠実さだと学びました。それから、自分自身がわかったつもりで思い込んでいたこと、希望を支えていたつもりが実は逃げていたかもしれないこと、課題や足りないこと等に気付かされました。それから、今までは漠然と患者様のお話しを聞いていましたが、支えを強める具体的なアプローチを教えていただき、ポイントがわかり大変勉強になりました。

また、グループワークや懇親会を通じて、県内や県外に沢山の仲間ができました。色々な職種の多様な視点からの意見を聞き、新たな視点を得ることができたことも非常によかったです。

今は、小澤先生の「現場の患者さんたちが先生です。今日は入学式です」という言葉を思い出しています。繰り返し教えていただいたことや演習を意識しながら、患者様やご家族のお話をなるべく丁寧にうかがうようにしています。また職場やプライベートなどの日常生活にも取り入れてみながら過ごしています。今後は、受講して自分で実践してみてそれで終わるのではなく、この学びを地域の身近な多職種の仲間たちにも広めながら、そして、より大きな地域でも活動できることにも取り組んで行きたいと思っています。

書籍や動画の世界でしか知らなかった小澤先生から、直接講義をうけることができ、先生の情熱を感じることができます。大事な部分は何度も繰り返して教えていただけて、声に出して学ぶことができるので有難いです。また、ロールプレイを通じて、実際に小澤先生が患者様のお話を聞かれる時の表情なども間近で拝見することができるので勉強になります。グループワークでは仲間ができるので、お互いの悩みなど語り合うこともできます。

余談ですが、セミナーが終了し、自宅迄の帰りに利用したタクシーの運転手さんが、とてもお喋りが好きな方でした。乗った瞬間「疲れてるのに・・」と思ってしまったのですが、学んだことを活かそうと考え直し、到着迄の30分間丁寧に反復をしてみました。すると、運転手さんは、会計の時に満面の笑みで、「ほんのちょっとだけど」と100円おまけしてくれました!早速、日常生活に活かすことができましたのでご報告しておきます。

 

 

まとめ

今回で第1回からの受講者数は920名弱となり、協会設立前に開催していた前身のJSP講座(人生の最終段階に関わる人材育成プロジェクト)を含めると、総受講者数は1,000名を超えました。福岡でも昨年11月の開催後、現場で実践しているご様子について、Facebookなどで活発な情報発信が続いています。

協会としては2日間の講座を提供して終わりではなく、受講した方がさらに理解を深め、実践し、振り返り、自らと周囲を進化させていく、そんなお手伝いができたらと願っております。

次回は、8月6日(土)-7日(日)、東京開催をレポートいたします。

 

 

 

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