第16回「エンドオブライフ・ケア援助者養成基礎講座」(東京)

  • 開催レポート

8月6日(土)、東京での養成講座がスタートしました。当日は40名の皆さま にご参加いただきました。

今回は40名と少数ではありましたが、ロールプレイに取り組むみなさまの表情は真剣そのもので、患者さん役も聞き役も感情移入して涙になったというご感想をいくつもいただきました。

また、「明日の夜勤が楽しみ」「明日から、まずは特定の患者さんを対象に、多職種で(学んだツールを使って)検討してみたい」という実践に向けたお声がある一方で、「ぜひ仲間にもと思うが、参加できない人にどのように伝えていくかが課題と感じている」と、ご自身から周囲へ広げていく上での課題についてもご感想をいただきました。

今後、養成講座で学んだ方々が現場に戻り、それぞれの所属組織や地域で仲間を増やし、”最後まで暮らせる”地域づくりを目指して学び続けていかれますよう、協会としても応援したく、準備を進めております。これにつきましては、別途ご案内たいします。

 

参加者

40名の方にご参加いただきました。

職種の内訳は、看護師47%、介護職20%、医師15%、介護支援専門員8%、その他10%でした。

地域別では、開催地東京都と千葉県、神奈川県、埼玉県等近隣からのご参加が多数を占めたほか、富山県、福井県、新潟県など遠方からもご参加をいただきました。

 

講座の様子

協会理事であり、横浜で在宅診療を行うめぐみ在宅クリニック院長の小澤 竹俊が、2日間の講師を務めました。

2日間の講座では、以下の要素を学びます。

  • 課題背景(2025年問題に備えて)
  • 人生の最終段階に共通する自然経過
  • 苦しむ人への援助と5つの課題
  • 意思決定支援
  • 自宅・介護施設で求められる症状緩和
  • 多職種連携で「援助」を言葉にする(マクロ)
  • 1対1で対応する(ミクロ)

ただ受け身で聞くのではなく、ロールプレイや事例検討のためのグループワーク、学んだことの振り返りなど、ほとんど休む間もなく、口と手をたくさん動かしていただきました。

懇親会

終了後、半数以上の方が懇親会にご参加くださいました。ペアでディグニティセラピーの問いかけのひとつ、「あなたがもっとも輝いていたときのことを教えてください」と会話を始めていただき、お互いにお話を聴きあった後、全体で他己紹介としてお相手についてご紹介いただきました。

「今が一番輝いています」「今のお仕事が大好きです」というお声が多く聞かれ、終始和やかな雰囲気で会が進行しました。

 

受講者の生の声(当日)

2日間の養成講座も終わりに近づいたころ、会場内で受講者のみなさまから、そのとき感じたことを生のお声として頂戴いたしました。

村上 望さま、医師
厚生連高岡病院(富山県)

以前から小澤先生の提唱するスピリチュアルケアについて共感していました。そんな小澤先生が積み重ねてこられたものを学べ、さらに地域で広めるきっかけになるかもしれないと感じ、参加を決めました。多職種が一同に参加して意見を言い合うというのは、マクロの素晴らしいところです。地域に帰っても、そういう形を構築していくようにできることを始め、協会の活動にも北陸として何らかのお手伝いができるよう連携していくことができればと考えています。

加藤 泰史さま、医師
福井県済生会病院(福井県)

緩和ケアでは患者さんが様々な痛みを訴えられます。身体の痛みはむしろ対応しやすい所がありますが、スピリチュアルと言われる痛みに対するケアは難しく、少しでも何か得られればという思いで参加しました。苦しんでいる人は自分の苦しみを分かってくれる人がいるとうれしい、という大きなテーマを学ばせていただきました。せっかくこれだけのものを得たので、まず病院内のスタッフに広め、そして緩和ケアセンターとして院外の医療者介護者に対して得たものを広げていける場を作りたいと思います。

 
 

大部 幸さま、医師
医療法人仁泉会 としま昭和病院(東京都)

地域病院の内科医師で、主に訪問診療を行っています。自分だけでやっていかなければならないという変な気負いがあったのですが、そうではなく、毎日患者さんと接している介護職も分かり易い言葉で、医療・介護が同じ立場で患者さんの精神的なケアができるのだと、研修を通して学びました。そのためには、介護職の方と顔を合わせて話をする機会も必要だと思いました。自分から積極的にアプローチして、同じ患者さんを取り巻く仲間としてやっていきたいと思いました。在宅の患者さんでスピリチュアルペインを訴えている方が何人もいらっしゃいますから、多職種で連携してケアを実践していきたいと思いました。

 
 

井岡 幸子さま、看護師、相談員
一般社団法人田園調布医師会(東京都)

在宅医療連携調整窓口で看護師として相談業務を行っています。以前は病院で看護師、その後残宅でケアマネージャー、地域包括支援センターの職員を行っていましたが、人生の終末期にいらっしゃる方との出会いもいくつかあり、きちんと援助を出来てこなかったという思いと、援助をしていく上での学びをしたいという思いが自分の中にありました。今回小澤先生が新聞記事に出たのを拝見し、日々の忙しさに埋もれていた気持ちがむくっと出てきまして、参加させていただきました。ずっと心の底につっかえていたものが少し取っ払われたような、次に繋げていけるような気持ちになりました。地域の多職種の方々との関わりが多いのですが、お互いに支え支えられて、地域でよりよい連携をしていく上での糧としていきたいと思っています。

 
 
 

 

受講者の生の声(後日)

受講後、職場に戻って実践していらっしゃるみなさまの今をお聴きしました。

佐々木  玲子さま、看護師(東京都)

今回養成講座参加の動機は、終末期と診断されてからの患者様との関わりについて悩んでいたからです。私が今まで看護と考え実践してきたことは、患者様・家族が本来求めているものではなかったのではないかと不安でした。自分が自信をもって看護を実践したいと強く思い受講しました。

講義では苦しみの構造が具体的に定義されており、苦しむ人への援助方法が具体的でした。特に「苦しみがありながら人は穏やかになれる(可能性がある)」と言う先生の言葉が印象的でした。支えをキャッチできれば患者様が穏やかになれる可能性があることを知りました。そして今まで私の中であやふやであった援助者の苦しみにも触れられており、自分の無力さを知っているからこそ逃げないで関わり続けられるのだということも素直に胸に入ってきました。

まだ十分に実践できず悩みながらの状況ですが、反復・沈黙・問いかけを日々繰り返しています。 その中で「最も輝いていた時はいつですか?」との問いに、患者様が表情豊かに話して下さる姿が嬉しく、支えになれていると実感しています。

様々な業種の方が同じ思いを持ち、励まされた2日間でした。お互いに悩み学んだ仲間は今でも交流が続いています。この仲間に出会えた事も私の自信に繋がっています。

 

小久保 美千代さま、看護師
新東京病院(東京都)

「人生の最終段階における医療に関する意識調査」(H25年)では、「56%の国民が人生の最終段階における医療について家族と話し合ったことがない」という結果でした。

この56%の国民が患者となりその家族となった時、初めてこのテーマと向き合い医療が始まる難しさを感じてきました。もっと自分自身の人生の最終段階における医療について考えて欲しいと望んだ時、同時にその人達を支える力が足りないとも感じており、その力を求めてこの講座を受講しました。

「2日目は心が動きます」と言う、小澤先生の言葉通りの変化を実感しました。苦しみとは何か、その苦しみをキャッチする、その苦しみの中でも穏やかになれる理由=支えをキャッチして強める具体的なアプローチを学びました。このアプローチの視点で、この患者の苦しみはなんだろう?支えはなんだろう?とキャッチする事を問いかけるカンファレンスを始めています。少しずつですが、教育的な立場でこの学びを活かすことができます。そして、この支えを強める援助を急性期病院から在宅へと繋げていきたいと思うのです。

 

太田 純平さま、介護職
横浜市浦舟ホーム(神奈川県)

特別養護老人ホーム5年目の介護職員です。私は、2日間の学びから「お客様が心穏やかになれる存在になりたい」と思いました。

数分おきにコールボタンを押して、「俺はいつ帰れるんだ?」「早く帰りたい」と話す短期入所の男性がいます。以前、その場しのぎの対応することに精一杯だった私は繰り返されるコールにイライラしてしまうこともありました。

そこで、「苦しみを理解しようとする姿勢」をもって関わりました。そうすると、目が見えないこと、今いる場所や話している相手のことがわからないこと、そしてお花屋さんだったのにもう大好きな花に触れることもないという思い等を話してくださいました。そして、3つの支え(時間、関係、選択)をキャッチすることを意識しながら傾聴しました。ピンク色のフレージアが大好きなんだとニコニコと話してくださいました。退所の前日、「太田さんのためにもう少し泊まってこうかな。延長できる?」と笑ってもらえたときは、心が穏やかになるような関わりができたのかな、と嬉しくなりました。

この研修で印象的だったのは、ロールプレイです。「人に教えることを前提に学ぶ」というやり方のおかげで実践に繋がる質の高い学びができました。今後は、私自身が“支え”をキャッチする関わりが自然にできるように、そして、チームみんなで取り組んでいくことが課題です。

 

 

まとめ

第1回の2015年7月開催以降、東京では5回目の開催となりました。受講後、Facebook等を通じて各自実践している様子も伝わってきています。

協会としては2日間の講座を提供して終わりではなく、受講した方がさらに理解を深め、実践し、振り返り、自らと周囲を進化させていく、そんなお手伝いができたらと願っております。

次回は、9月10日(土)-11日(日)、仙台開催をレポートいたします。

 

 

 

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