第22回「エンドオブライフ・ケア援助者養成基礎講座」(福岡)

  • 開催レポート

1月28日(土)、福岡での養成講座がスタートしました。当日はリピーターの方やeラーニングを補う形でご参加の方を含めて、72名のご参加があったほか、地域学習会の認定ファシリテーターやこれから認定を目指している方もサポーターとしてご参加くださいました。開催にあたり、当日の運営面で多くのご協力をいただきましたことを心より御礼申し上げます。

参加者

72名の方にご参加いただきました。

職種の内訳は、看護師50%、介護支援専門員21%、リハビリテーション職9%、介護職6%、医師4%、薬剤師3%、その他7%でした。その他職種には心理職、相談員、弁護士、保健師、鍼灸マッサージ師などが含まれ、多彩な職種の皆さまにご参加いただきました。

地域別では開催地の福岡県のほか、山口県を始め近隣地域から多くのご参加をいただきました。また岡山県、沖縄県など遠方からのご参加者もいらっしゃいました。

 

講座の様子

協会理事であり、横浜で在宅診療を行うめぐみ在宅クリニック院長の小澤 竹俊が、2日間の講師を務めました。


2日間の講座では、以下の要素を学びます。

  • 課題背景(2025年問題に備えて)
  • 人生の最終段階に共通する自然経過
  • 苦しむ人への援助と5つの課題
  • 意思決定支援
  • 自宅・介護施設で求められる症状緩和
  • 多職種連携で「援助」を言葉にする(マクロ)
  • 1対1で対応する(ミクロ)

ただ受け身で聞くのではなく、ロールプレイや事例検討のためのグループワーク、学んだことの振り返りなど、ほとんど休む間もなく、口と手をたくさん動かしていただきました。

懇親会

終了後、半数近くの方が懇親会にご参加くださいました。

受講者の生の声(当日)

2日間の養成講座も終わりに近づいたころ、会場内で受講者のみなさまから、そのとき感じたことを生のお声として頂戴いたしました。

今吉 美和子さま、介護支援専門員
医療法人社団晴緑会みやざき総合介護サービス(宮崎県)

宮崎の居宅支援事業所でケアマネージャーをしております。(受講動機は)知り合いから声を掛けてもらったことが一番でしたが、普段の仕事の中で終末期の方に関わることがあり、その時に会話に詰まったり、これでいいんだろうかと思うことが日々ありましたので、受講させていただきました。患者さんから精神的な不安を聴いた時に、自分がどのように受け止めてよいのか、返してよいのかというところは、勘や経験で対応していましたが、これでいいのか、他の人がどうしているのかが普段からずっと気になっていました。実は昨日のロールプレイで、自分の表現力やコミュニケーション力の不足を実感し、落ち込んだんです。でも今日、いろいろ基本的なところを学んで、ロールプレイで患者さんの役をしたときに、これからケアマネージャーとしてどのように対応していけばよいのか、具体的に少し見えてきた気がします。実際に利用者さんとお話をするときには、とにかくまずはしっかりご本人の立場に立って話を聴くことと、反復、沈黙といった援助的コミュニケーションの技術を学んだので、それを明日から実践していきたいと思います。

 

江越 正嘉 さま、弁護士
わかくす法律事務所(佐賀県)

弁護士をしております。就活、尊厳死、リビングウィルというところで活動しているのですが、お話を伺っている中で答えられないような問題、言葉にして発することが出来ないような悩みがあるのに対して、なんとなく解決する方法があるような気もするのですが、もやもやしたままで終わってきていたので、実際どんな形で支援することができるのかを学ぼう、と思ってきてみました。実際に受けてみて、その方がなぜ苦しみを負うのか、それに対してどういったことが出来るのか、どういった形で見出し、どういう風にアプローチしていくのかを、具体的にどうすればよいのかが分かって、とても良かったです。臨床の場で本当に役立ち実践に移せるような研修になったと思います。私は終活とかリビングウィル、尊厳死の話をしていきますので、まず1対1の関係の時に、その方がどういう人生を生きてこられて、その中で今抱えている悩みとか苦しみをどう受け止めて、それに対してどういう支えを見つけていくのかを、話が出来たらと思います。後は地域ケア会議等で福祉、医療の方が悩んでいることに対し、「こういうアプローチがありますよね」という見方、考え方を伝えていけたらと思っています。

 

受講者の生の声(後日)

受講後、職場に戻って実践していらっしゃるみなさまの声をお聴きしました。

井上 祐嗣さま(佐賀県)
特定非営利活動法人ひまわり 理事長
デイサービス真心の家 管理者兼相談員

 小さなお寺の長男として生まれ、中学を卒業してから僧侶として修行をする中で、常に出てくるテーマの一つが「命」でした。介護という世界にご縁を頂いて間もない頃、50代のALSの方を最期まで自宅でケアさせていただき、人の「命」についてさらに深く考えるようになりました。この経験が、今の宅老所での看取りへとつながっています。

 看取りケアを実践する中で、従業員へも「人の死について」の話をしていたものの、自信をもって伝え切れていないと感じていました。その時、友人からエンドオブライフ・ケアのことを聞き、「援助を言葉にする。」というフレーズに、自分の足りないものはこれだと感じ、受講することを決めました。

 講座に参加して、相手の苦しみをキャッチしようとする時の自分の心の向きから違うことに気づきました。これまでの自分を振り返ると「自分が相手を理解してやろう!」と頑張っていた気がします。自分が相手を理解したつもりでも、「相手が私を理解してくれる人と思う。」ことは違うことを学びました。

 これは、終末期を迎える方だけでなく、日頃のコミュニケーションにおいても大切なことであると感じ、普段の会話から意識するようになりました。まだまだ、自分自身への意識付けも甘く、大きな成果を感じているわけではありませんが、受講前より人との会話が好きになったように感じています。

 今回学んだことと、この講習会で出逢えた仲間、さらに、この先出逢うであろう仲間を大切に、これからの人生を充実したものにしていきたいと思います。そして、苦しみを感じている方などから「あなたに会えて本当に良かった。」と言っていただけるよう努めていきたいと思っております。

 最後に、受講を悩んでいる方へ、「人の命の最期に会える」仕事をしている者として、人の苦しみから逃げず、人の死を遠ざけず、命に感謝できる人となるためにも、とても有り難い講習会でした。

 

齋藤 崇さま、心理士
宇部協立病院(山口県)

 今回ELCの研修を受けようと決めたのは、人生の最終段階を生きるひとを支えるために理念や観念だけでなく、そこに技術が含まれたものを得たいという思いからでした。「苦しんでいる人は自分の苦しみをわかってくれる人がいるとうれしい」というキーワード。それを作るために「反復」「沈黙」「問いかけ」を行う。それ自体は心理面接にも通底するものでしたが。それが人生の最終段階にいる人にも役立つのだろうかと不安もありました。しかし実際養成講座の中でロールプレイで患者様役をさせていただいたとき。「もう終わっていくんだ」という悲しみが聴き手の「反復」「沈黙」「問いかけ」を通して「よりよく生きるには」という希望に変わるという体験をして、この中で学んだことは臨床で役に立つと実感しました。

 現場ではただ話を聞くしかないという諦念のような思いでの関わりしかできていませんでしたが、今はこの聴くということに意味があり。それをよりよいものにするための技術があり、それが少しは患者様の利益に通じると感じながら、「反復」「沈黙」「問いかけ」を意識して実践しています。

 この養成講座はとても疲れます。しかし講義とその内容についてのロールプレイは日々の臨床に意味ある疲れを提供してくれます。対話しかできない無力感を感じている援助職の方は、その対話でこそできる支援があることを体感できる二日間になると思います。また養成講座全体にある暖かい雰囲気は「支えとなる人にこそ支えが必要」という援助者の支えにもなります。

 

まとめ

福岡での開催は3回目でした。今後九州では、すでに立ち上がっているELC山口、糸島唐津のほか、熊本、北九州、奄美と、個別の地域学習会や横断的な学習会が認定ファシリテーターのみなさんにて企画されています。

協会としては2日間の講座を提供して終わりではなく、受講した方がさらに理解を深め、実践し、振り返り、自らと周囲を進化させていく、そんなお手伝いができたらと願っております。

次回は、2月11日(土)-12日(日)、大阪開催をレポートいたします。

<追記>講座当日は講師を務めた小澤 竹俊の誕生日でした。みなさまから温かいお祝いをいただきました。まことにありがとうございました。

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