第30回「エンドオブライフ・ケア援助者養成基礎講座」(福岡)

  • 開催レポート

7月21日(土)・22日(日)、福岡でエンドオブライフ・ケア援助者養成基礎講座を開催いたしました。当日は85名の皆さまにご参加いただきました。開催にあたり、当日の運営面で多くのご協力をいただきましたことを心より御礼申し上げます。 

参加者

85名の方にご参加いただきました。

職種の内訳は、看護師48%、医師14%、介護支援専門員12%、介護職11%、リハビリテーション職5%、ソーシャルワーカー2%、薬剤師2%、歯科医師1%、その他5%でした。その他職種には公務員や相談員、メディカルサロンセラピストの方にもご参加いただきました。

地域別では開催地の福岡県と九州各県のほか、山口県、岡山県、香川県、高知県など遠方からのご参加者もいらっしゃいました。

 

講座の様子

協会理事であり、横浜で在宅診療を行うめぐみ在宅クリニック院長の小澤 竹俊が、2日間の講師を務めました。


2日間の講座では、以下の要素を学びます。

  • 課題背景(2025年問題に備えて)
  • 人生の最終段階に共通する自然経過
  • 苦しむ人への援助と5つの課題
  • 意思決定支援
  • 自宅・介護施設で求められる症状緩和
  • 多職種連携で「援助」を言葉にする(マクロ)
  • 1対1で対応する(ミクロ)

ただ受け身で聞くのではなく、ロールプレイや事例検討のためのグループワーク、学んだことの振り返りなど、ほとんど休む間もなく、口と手をたくさん動かしていただきました。

懇親会

今回同日裏開催として、地域のファシリテーター主導のもと、ELC九州山口学習会が開催されていたのですが、懇親会では合流し、受講回をまたいで70名以上の方々が交流する機会となりました。会の終盤には各地域学習会のファシリテーターから、それぞれの活動の特長をご紹介いただきました。また、これから自らも学習会を立ち上げていきたいという方々から、仲間への呼びかけがありました。

受講者の生の声(後日)

受講後、職場に戻って実践していらっしゃるみなさまの声をお聴きしました。

 

濱田 努さま、医師 内科
医療法人浜友会 きいれ浜田クリニック(鹿児島県)

現在鹿児島市において在宅医療を中心にクリニックを経営する医師です。年間40名弱、1人で月3名ほどの看取りを行いながら、「死」と向かい合うことの難しさを日々感じていました。だからこそ、チームでの参加が必要と考え、今回の養成講座には他事業所スタッフも説得し4名で参加しました。

私は医師であるからこそ患者様を助けなければいけない、死なせてはいけないと常々考え、それ故に傍に居ることが辛い時が多くありました。今回の講座で自分の無力さ・弱さを知り、さらに「自分の支えてくれる存在」を考え、その存在に改めて気付くことが出来た瞬間から肩の力がスッと抜けたような、不思議な感覚を覚えました。これからも癌末期の患者様と多く接するからこそ、「無力である私であっても、あなたの傍で寄り添う」ことを伝えながら診療を行っていきたいと思います。

私は医師ですが、看護師や介護職など多くの医療介護の職種が支援の中で不安や怖さを感じることなく接することが出来るなら、これから到来する多死社会も恐れるものではない、と心から思います。むしろ接する時間が多い介護職の方々が最も必要とする知識・技術なのではないでしょうか。

私の夢は今後地域でエンドオブライフ・ケアの考え方が当たり前となり「関わる人が自信をもって接することが出来る」環境を作ることです。皆様の力をお借りしながら、ゆっくり進めていきたいと思います。

 

本 康剛さま
ソーシャルワーカー (長崎県)

私は、現在、精神科訪問看護に従事しています。

今年の春まで、20年ほど、急性期病院で退院支援とがん相談支援センターに従事してきましたが、絶望している患者・家族様を前にどう接したらいいのか、なんて言葉をかければいいんだろう、何を支援すべきかなど自分自身も悩み、どんなに頑張っても日に日に衰弱していく患者様の姿に自分自身の無力さを痛感する日々でした。そんな時に小澤先生の著書に出逢い、自分の弱さを認めながら、逃げないこと。そのために求められるのが「支えようとする私こそ、実は一番支えを必要としている」、それを自覚した人がプロだと思います。の文章から、心が洗われるような気持ちになり、現場で関わりたい気持ちから転職後、今回養成講座を受講させていただきました。


講座では、多くのロールプレイを経験し、必死でしたが、人生の最終段階の患者・家族様との関わりにおける問いかけの難しさと重要性を最大限に学ぶことができました。現場に戻り、苦しんでいる人は自分の苦しみをわかってくれる人がいるとうれしいということを心掛け、実践に生かしています。

援助する視点が、この講座では、大きく変わるとともに、心がさらに温かくなると思います。

 

荒木 剛史さま、介護職
髙﨑 愛さま、介護職
グループホーム ヒューマンケア富合(熊本県)

グループホームで認知症の人をケアしている私達は、コミュニケーションの困難を常に感じ、それがストレスにも至っている。

当ホームはご家族が望まれれば「看取り」まで行っているが、死を直前に迎えている人の前では無力であると感じていた。また、ご家族に対しても大事な人が認知症になったという苦しみを理解するにも至らず、入居者のケアだけ重点的に捉えてしまっていた。しかし、受講の中で資格でなく、人として話を聞くこと、苦しみをわかってくれる人になろうとすることが信頼関係の一歩であると気づかされた。

受講後は、大切な人がわからなくなる・・出来なくなるというご家族の気持ちを考える援助的コミュニケーションの重要性を意識し、考える機会が増えた。そしてご本人やご家族にとって理解者となる為に、講座内容を振り返りながら、まず出来る事から実践している。受講は私達にとって、経験のないハードな講義やロールプレーだったが、多職種の方達の意見を聞けたこと、話せたこと、考えることができたことは、今後、業務だけでなく多種多様な場面で生かし、被災した地域の方の心のケアを積極的に行っていきたい。また、ホーム自体が地域の相談所としての役割を担っていくためにも、積極的に活動をしていきたい。

 

青木恵さま、看護師
神経内科クリニックなんば(岡山県)

訪問看護、ケアマネジャーを経験し、現在は訪問診療を専門に行なっているクリニックで看護師をしています。

クリニックの性質上、終末期の段階の方に関わることが多く、終末期の研修、エンドオブライフケアの講演を聞く機会もありました。「傾聴」「反復」「沈黙」「問いかけ」、現場でやっている、できていると思うけど、本人は満足なのか?自分は?できてない?援助が終わってからも、モヤモヤ感が続きました。こんな気持ちがあり、何かみえるかなぁと思い、今回の講座に参加しました。「援助者養成」とありましたが、患者さんを支えようとする「自分のために」の参加でした。

2日間、びっちりでしたが、眠くなる暇もないくらい「あっ」という間の2日間でした。「傾聴」「反復」「沈黙」「問いかけ」でコミュニケーションをとり、相手の苦しみをキャッチする。苦しんでいる人は、自分の苦しみをわかってくれる人がいるとうれしい。相手に、「わかってもらえた」と思ってもらえる。思ってもらえなくても、「それでいい」と自分を認められる。できないこと、困難なことに気付きながら、1人ではない。誰かの支えになろうとする人にも支えが必要。共に考えることができる仲間がいる。「仲間が支えになっている」ということに気付けました。

講座参加以降の勤務では、モヤモヤ感が少し晴れ、自信を持ってコミュニケーションがとれていると思います。「自分のため」の参加でしたが、きっと他にもこんな気持ちを持っている人がいるだろうなぁと思うので、伝えていけるといいなぁと思い始めています。自分自身も一歩一歩進みながら・・・。

 

まとめ

福岡での開催は今年1月に行われた第22回に続いて4回目でした。今後九州では、すでに立ち上がっているELC山口、糸島唐津、熊本、奄美のほか、北九州にて個別の地域学習会や横断的な学習会が認定ファシリテーターのみなさんにて企画されています。

協会としては2日間の講座を提供して終わりではなく、受講した方がさらに理解を深め、実践し、振り返り、自らと周囲を進化させていく、そんなお手伝いができたらと願っております。

次回は、7月29日(土)-30日(日)、名古屋開催をレポートいたします。

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