第1回「エンドオブライフ・ケア援助者養成基礎講座」(東京)

  • 開催レポート

7月25日(土)、協会設立後はじめての養成講座がスタートしました。この講座の前身である、JSP(人生の最終段階に関わる人材育成プロジェクト)をこれまで3回開催して参りましたが、今回は規模を拡大し、内容もブラッシュアップして、医療介護現場のみなさまにとって、よりわかりやすく、そして理解から実践につながるプログラムとなるよう、協会として準備して参りました。

開始時間を前に多くの方が早くからお集まりくださり、スタッフ一同、お一人おひとりの、講座への期待を感じながら、ご挨拶させていただきました。

参加者

85名の方々にご参加いただきました。

職種の内訳は、看護師44%、介護関連職種35%、その他(医師、薬剤師、臨床宗教師ほか)21%でした。受講者のみなさまからいただいたお声から、多職種で肩を並べて学べることに1つの価値を感じていただけたことがわかりました。

また、北は青森、南は沖縄からお越しいただきました。首都圏以外(※)からお越しの方が1/3ほどいらっしゃり、休憩時間には、お土産のお話から地方ネタに話題が及んだり、方言で盛り上がったりするなど、地域というテーマ1つでも話題は尽きなかったようです。養成講座の中で触れますが、患者利用者様との関わりにおいても、その人のふるさとに関する話題は、大切にしたいテーマです。
(※:青森、秋田、石川、新潟、長野、茨城、栃木、静岡、愛知、福井、岡山、福岡、宮崎、鹿児島、沖縄・・・)

 

講座の様子

協会理事であり、横浜で在宅診療を行うめぐみ在宅クリニック院長の小澤 竹俊が、2日間の講師を務めました。

2日間の講座では、以下の要素を学びます。

  • 課題背景(2025年問題に備えて)
  • 人生の最終段階に共通する自然経過
  • 苦しむ人への援助と5つの課題
  • 意思決定支援
  • 自宅・介護施設で求められる症状緩和
  • 多職種連携で「援助」を言葉にする(マクロ)
  • 1対1で対応する(ミクロ)

 

ただ受け身で聞くのではなく、ロールプレイや事例検討のためのグループワーク、学んだことの振り返りなど、ほとんど休む間もなく、口と手をたくさん動かしていただきました。

当日、テレビ局と新聞社からの取材が入り、このテーマへの関心の高さを受講者のみなさま自身もお感じになったようです。

 

懇親会

終了後、6割近くの方が懇親会にご参加くださいました。25日はちょうど隅田川花火大会の日。隅田川にほど近い会場で夏の風情を感じながら、参加者のみなさまは、名刺交換、情報交換、記念写真撮影・・・と大忙しで、あっという間の2時間となりました。

 

受講者の生の声(当日)

2日間の養成講座も終わりに近づいたころ、会場内で受講者のみなさまから、そのとき感じたことを生のお声として頂戴いたしました。

白井 握美さま、瑞光園居宅介護支援センター(青森県)、ケアマネージャー
久保 夏海さま、訪問看護ステーションえがおみょう(青森県)、看護師

八戸在宅クリニックの山名先生が率いる多職種連携のモデルチームに参加しています。 人生の最期に関わる責任をすごく大きく感じていたところ、連携しながらこれまでしてきたことが、「ああ、よかったんだ」と思え、また、これまでしてきたこと、今回の研修で学んだことをみんなにきちんと言葉で伝えていくことができる、という貴重な時間になりました。これから二人で八戸の多くの人たちにしっかり伝えて行きたいと思います。

 

羽生 美恵さま
老人保健施設 看護責任者

自分が現場の介護職を支えたい。どういうことをすればいいか、自分の中で糸口がつかめたかなという思いです。

 

 

上野 邦靖さま
オレンジホームケアクリニック(福井県)、介護職

援助する存在は、支えるだけではなく、支えられる。患者さんからも僕らは支えられているんじゃないか、という考えがどんどん深まっていく。そういう時間が持てたことはうれしく思いました。ますます仕事がおもしろくなってきます。

 

 

受講者の生の声(後日)

あれから3週間。職場に戻って実践していらっしゃるみなさまの今をお聴きしました。

広畑 晶子さま
社会福祉法人白山福祉会(神奈川県)、介護職

施設へ入居されているご夫婦のうちご主人様が、末期癌の診断を受け余命1週間から10日と言われ、施設での最後を希望されたことから、「施設での最後」を「第二の我が家での最後」に変えるためのヒントと、実際に看取りを行う介護職員が看取り終了時に後悔や喪失感に潰されないための根拠探しとして受講を決めました。

実際に受講してみて、「苦しみをキャッチ」する事、「その人の支え」となっているものを考えることがその人の尊厳を守り、尊重された最後につながると感じ、医療行為の出来ない介護職にもできることは多く、「身体の痛みをとってあげられない」事や「点滴もしてあげられない」事に悩むのではなく、気持ちを受け止める事は出来るのだと自信を持って取り組むことが大切だと思えました。

実際に今も看取りを行っており、職員には「支え」「苦しみ」を中心にアンテナを張るように話した結果。とある利用者様の苦しみは「大好きな猫と離れた事」であり、支えは「猫」であることがわかりました。

必ずしも支えの対象は人では無いことを痛感し、人では無い支えに応えるためにどうすれば良いかを考える職員に育っています。

感染症のリスクなども考慮しながらレンタル猫をご家族に提案し、今はお部屋で猫と過ごし、猫が食事するのを見ながら、ご自身も一口、二口とお粥を食べたり、牛乳を飲むなどされ、笑顔も多くなっています。

残された時間を良いものにしていくために、今後もアンテナをはり、今のその人の苦しみや希望をキャッチしたいと思います。

受講検討中の方へ

研修では目には見えないもの、形の無いものをいかにつかむかを、問いかけや復唱するタイミングなどロールプレーイングで教えていただきます。実際に思い出せるような対象者がいると頭にはいりやすいように思います。

清水 さかえさま
いずみ訪問看護ステーション本木(東京都)、訪問看護ステーション 所長

在宅で療養されている利用者様やご家族と関わる中で「何で自分がこんな病気になったのか?」等の訴えを聴く事も多くあり、どのようにアプローチをしていけばよいのか日々悩んでいました。以前からお話を聞きたかった小澤先生が講師との事で参加を決めました。

普段は利用者様やご家族様と話す際に先回りして聞いてしまう事も多い為、始めは沈黙や反復は相手が苦痛に感じるような気がしましたが、受講生同士で役割を変えてロールプレイを繰り返す事で沈黙や反復の効果を実感する事ができました。

今回の学びを生かしたいと思っていた利用者様を先日、ご自宅でお看取りしましたが、援助的コミュニケーションを実践する事で穏やかに最期をお迎えする事が出来たのではないかと思っております。今後は事業所などでの伝達講習を通じて一緒に援助できる仲間を増やしていきたいと思っています。

エンドオブライフ・ケアの研修会は多くありますが、講座が終了した後の継続学習や一緒に参加した皆様とコミュニティが形成できるのも魅力の一つです。

福﨑 伊豆美さま
鹿児島厚生連病院(鹿児島県)、看護管理者

人生の最終段階において、死を意識した人の苦しみや希望を支えるスタッフが、躊躇せず勇気を持って関われるようになるために、看護管理者としてどのように支援していけばよいか、そのヒントが得られればと思い、養成講座に参加しました。

ロールプレイを通して、相手の苦しみをキャッチするために意図的に聴く姿勢と、そこから見えてくる支えとなるものを一緒に探していくプロセスを具体的に体験できました。また、グループ内でも職種が違う人同士でディスカッションすることで、さらに視野が広がるようでした。

受講を終えて、現場で実践していることとしては、できなくなることが多くなっていく患者さんの苦しみを意図的に聴きながら、その人が穏やかになる瞬間や支えとなるものを探していけるよう、積極的に関わるようにしています。出会った翌日には息を引き取られた患者さんとの関わりで、目を見て話していただけなかった人が、穏やかになる瞬間を共有できたとき、素敵な笑顔で目を合わせてお話しくださったことが印象的でした。今でも、苦しみから抜け出せない患者さんとその時を一緒に過ごし、共にいることを意識していく姿勢を続けながら、後輩指導に活かしていこうと思っています。

受講検討中の方へ:やる気がある人であれば、誰でも学ぶことができると思います。何よりも、その中で全国のネットワークで受講生同士がつながっているのも醍醐味です。

江本 幸子さま

7/16(木)に開催された、悠翔会の佐々木先生が開催された在宅医療カレッジ04の「スピリチュアルケア/援助的コミュニケーション」で小澤先生のお話を聞いたことがきっかけで養成講座に参加しました。在宅で2名の看取りを。グループホームを開設して1年半、この期間に3名の看取りを行いました。看取りに関して特別に勉強した事が無く、具体的な小澤先生のお話に、看取りの方への関わりをもっと学びたい、小澤先生のお話をもっと聞きたいと思い講座の申し込みをしました。今回の研修の趣旨を上司に話した所、今後は在宅でもホームでも看取りを積極的に行っていきたいので学んで来て他の社員にもフィードバックをして欲しいと後押しをされた事も一つの動機です。

人生の最終段階を迎えた人と関わる為には「理解した」と言って理解したつもりになるのではなく、相手にとっての理解者になるために理解しようとする事が重要で、そのためにはキーワードを反復し対話する事が重要と学びました。笑顔や表情もキャッチしながらです。

現在看取りの方はいらっしゃいませんが、認知症を抱え人生の最終段階を苦しみと共に迎えようとしている方へ反復の対話を通じてコミュニケーションを取っています。また、学んだ事をホームにてリーダーに伝えています。

人生の最終段階を迎えた人との関わりは何となく、避けてきたように思います。しかし講座で学んだ具体的な方法などをきっかけに、苦手としてきた人生の最終段階を迎えた人への関わりを一歩ずつですが出来る様になった気がします。そのきっかけを作ってくれる講座が『エンドオブライフ・ケア』援助者養成基礎講座だと思います。

 

まとめ

受講を通じて新たな気づきや学びがあったという方、これまでやってきたことはよかったのだと整理できたという方、そしてともに学ぶ同志とのつながりを得て、実践に向けて弾みがついたという方。様々な想いを伺いました。協会としては2日間の講座を提供して終わりではなく、受講した方がさらに理解を深め、実践し、振り返り、自らと周囲を進化させていく、そんなお手伝いができたらと願っております。

この後、希望する受講者のみなさまには、協会として以下をご支援して参ります。

  • 「エンドオブライフ・ケア援助士」認定と、これに向けた課題レポート
  • eラーニングによる継続学習
  • 仲間とのコミュニティを通じた交流

 

次回開催は、9月12日(土)-13日(日)、東京(八重洲)です。
多様な参加者のみなさまとお会いできますことを、スタッフ一同楽しみにしております。

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