第46回「エンドオブライフ・ケア援助者養成基礎講座」(大阪)

  • 開催レポート

6月2日(土)・3日(日)、大阪でエンドオブライフ・ケア援助者養成基礎講座を開催いたしました。当日は91名の皆さまにご参加いただきました(2日間の受講者、eラーニング+2日目集合研修の受講者、ファシリテーター候補者枠の方を含む)。開催にあたり、運営をご支援くださった地域学習会ファシリテーターならびにファシリテーター候補者のみなさまに心より御礼申し上げます。  

参加者

職種の内訳は、看護師58%、介護職11%、医師7%、介護支援専門員6%、リハビリテーション職3%、心理職3%、薬剤師3%、ソーシャルワーカー2%、相談員2%、その他5%でした。その他職種には管理栄養士、訪問理美容など多彩な職種の方々にご参加いただきました。

地域別では開催地の大阪および近郊の京都、奈良、兵庫からのご参加が目立つ一方、山陰、四国、九州からのご参加者もいらっしゃいました。

 

講座の様子

協会理事であり、横浜で在宅診療を行うめぐみ在宅クリニック院長の小澤 竹俊が、2日間の講師を務めました。


2日間の講座では、以下の要素を学びます。

  • 課題背景(2025年問題に備えて)
  • 人生の最終段階に共通する自然経過
  • 苦しむ人への援助と5つの課題
  • 意思決定支援
  • 自宅・介護施設で求められる症状緩和
  • 多職種連携で「援助」を言葉にする(マクロ)
  • 1対1で対応する(ミクロ)

ただ受け身で聞くのではなく、ロールプレイや事例検討のためのグループワーク、学んだことの振り返りなど、ほとんど休む間もなく、口と手をたくさん動かしていただきました。

懇親会

終了後、半数以上の方が懇親会にご参加くださいました。

 

受講者の生の声(後日)

受講後、職場に戻って実践していらっしゃるみなさまの声をお聴きしました。

大江秀一さま、医師 皮膚科
大阪国際がんセンター(大阪府)

 私は皮膚科医ですが、特に皮膚がんを専門としています。「皮膚科の病気では亡くならない」と患者さんにも医療者にも思われていたりもしますが、決してそんなことはなく、看取りをすることもあります。人生の最終段階でより良い援助ができるようになりたいと思い、ELC援助者養成講座に参加させて頂きました。

 講座が終了した時点で思ったことは、「疲れた!」でした。学会や勉強会で講演を聴くだけ、のような受動態では参加できません。言葉に詰まりながら、目線が泳ぎながら、冷や汗をかきながら、のロールプレイが盛り沢山でした。参加者の皆さんの名演技も素晴らしかったですが、私も患者役となった時はものすごく感情移入してしまい、援助者への不満を述べ、自分の思いを語り、その後でそれを分かってくれるとうれしい、ということを実感しました。ここで表出したことは、とりもなおさず自分が援助者として足りないところ、足りなくて不満に思われているのではないかと自分で思っているところなのだと思います。このロールプレイをこなすことで、援助者としてのスキルや心構えを学び、自分の苦手なところも分かりました。でも、繰り返します。非常に疲れました。

 講座後は、小澤先生が言われていた「この講座は入学式で、現場が先生です」ということを実感しています。現場では医療者間でもよく意見がぶつかります。また、医療者が良かれと思って提案したことでも、患者さんが希望されないこともあります。そういった時に、「患者さんが穏やかになれること」を基準に考えていくことを意識するようになりました。

 まだまだ援助士見習い一年生ですが、周りの人たちや今回出会った仲間たちに自身も支えられつつ、より良い援助を行えるよう精進していきたいと思います。最高の入学式に参加させて頂き、ありがとうございました。

 

高橋亨さま、訪問理美容
訪問理美容 ビューティクル(大阪府)

 昨年堺市で小澤先生の講演会を行うことが決まり、講演会前に養成講座を受講するように何名かの友人に勧められましたが、講演会主催者として自分に課せる事がありましたので講演会の翌日から受講させていただきました。前日に小澤先生から「社会によさそうなことをするのではなく、本気で社会を変えること」という言葉を聞いたことで、今回の受講で必ず何かを掴んで終えなければならないという気持ちになり、本気モードで当日を迎えました。

 講座では、ご縁がありグループになった方々のキャラの濃さに圧倒されながらも、受講が進むにつれて「反復」、「沈黙」、「問いかけ」の大切さを学ばせて頂き、身に付けてまいりました。そして二日目が終わった後は心身ともにフラフラになりました。

 受講後、訪問理美容でお伺いしたときに、奥様が「主人の食が減って好きなものを作っても食べてくれない」とご主人の横で話され、淋しそうにしているご主人が私に「食べられへんのや」と話されました。私は「食べられへんのですね」と言い、少しの沈黙が奥様とご主人と私にありました。そして「元気になってほしいという奥さんの気持ちがわかっていて食べれないのはツライですよね」と私が話すと、ご主人は「そうなんです」と言われました。その言葉を聞き奥様は気づいたようです。

 本来は、もう少し沈黙を待つところだったのかもしれませんが、ご主人と奥様の表情を見ていて、思わず、ご主人の苦しみを言葉にしていました。感情の先取りもあったかもしれません。次回への反省点もあります。それでも、「そうなんです」と実際に言われたとき、初めて先生が話されていたことはこれなんやと使命感が生まれてくる自分に気づきました。そしてこの学びを実践することは、大切な方々すべてに対して必要なことが徐々にわかってきています。答えはその人が持っていると思いますが、その支えになることができることを実感しています。

 次の大阪での講座に友人たち数人が受講します。共通言語ができるのが今から楽しみです。

 

川邉綾香さま、看護師
かわべクリニック(大阪府)


 現在、東大阪で在宅訪問診療のクリニック看護師をしています。訪問診療を受けておられる患者さんのほとんどが癌を患われている方、難病の方が多く、緩和ケア専門のクリニックです。“最後は自宅で”という思いを支援し、心通う医療サポートができるように日々奮闘しています。

 看護師になった当初から終末期医療に携わることが多く、人生の最終段階の方々と関わってきました。「まだ伝えたいことがあったのに」という後悔や「まだ時間がある、明日また会える」と思って接していたけど明日はなかった…。そのような経験以降、『今、この時間を大切にするケアとは』ということを考えて看護実践を行ってきました。そして現在行っている看護を改めて見つめ直す機会と巡り合ったのがこのエンドオブライフ・ケア援助者養成基礎講座でした。

 『苦しみは、希望と現実の開きである』。急性期病院の救急に勤務していたとき、望まない救急搬送や医療を受ける終末期患者さんたちの姿を見て、「患者さん自らが望む形での終末を迎えるために、自分の力を尽くしたい」との思いを抱き、今のクリニックを開設しました。小澤先生も同じ思いで、エンドオブライフ・ケアをより多くの人に広めようとしている。その姿勢に、強い共感を覚えました。また『死に対して、嫌、怖いと思う人もいれば、穏やかになれると思う人もいる。自分の価値観にあてはめない』との言葉に、私ができることは何か、を改めて考えさせられました。「最期は幸せだった」と患者さんたちに思っていただけるために、医療の視点だけでなく、私たち看護師だからできる心のケアを考えていきたいと思う講座でした。

 講座を受けて、スタッフに、まずは患者さんにとって『わかってくれる人がいるという存在』になろう!そのためには「苦しみをキャッチしようとする姿勢、その姿勢こそが支えとなれる第一歩。」であることを伝えています。そして、「それをどのように支えるのか、支えを強めるのか…。」はチームみんなで考えていこう。

 このケアを、この東大阪で広めていこうと思っています。

 

柳田千草さま、保健師・会社代表・訪問看護ステーション管理者
合同会社BigSmile びっぐすまいる訪問看護ステーション(鹿児島県)


 今回、6月の大阪での養成講座に参加させて頂きました。私は長年訪問看護に関わり、様々な年齢や疾患の方々と出会う中、看取りの機会を得ることも多くありました。日々変化する患者さんの心と身体に、そしてご家族へ、看護者として精一杯のケアをしてきたつもりでした。

 しかし、本当にその方の気持ちに寄り添えていたのだろうか。知識だけ持っていて、ご本人ご家族の心を救うことはできていたのだろうか。相手のどんな反応であれば(言葉であれば)私が正しく向きあっていたということになるのか、などと考え、実は‘結果オーライ’なだけで、自己満足な対応だったのかもしれない、と支援根拠を求める気持ちが強くなっていました。そんな思いの中、小澤先生が初日に「わかっていても出来ないのなら意味がない」という言葉は、誰しもが言えないことを言って下さり、私は胸のつかえがとれたような気がしたのを今でも覚えています。

 延々と続くロールプレイで、「反復」「沈黙」「問いかけ」を役を変えて行い、「わかってくれる人(理解してくれる人)がいると嬉しい。」という患者心理を身をもって体験することが出来ました。正直な話し、ロールプレイはその場しのぎの言葉の掛け合いとそれまでは真面目に取り組むことをしたくなかったのですが、メンバーの演技力と場のもつ力とでも言いましょうか・・息つく暇もない時間が過ぎ、心地よい疲労感を味わえました。この濃厚で価値ある2日間を無事に乗り越えられた?のも同じ思いを持った仲間がいたからこそと参加者皆さんに感謝の気持ちでいっぱいです。

 そして、講座を活かすべく、すぐにステーション内で事例検討会を開始、ロールプレイもどきを試行しました。現在も月に2回、訪問看護師・訪問リハ職がその方の苦しみ(現実と理想の差)は何か、「わかってくれる人」になっているか、自分たちの支援の振り返りをしています。
生きるとは共に未来を語ること、共に希望を語ること。その一助に私達はなりたいと、より一層強く思う毎日です。

 

まとめ

近畿には継続学習の場として、ELC近畿があります。年に4回、自主的に学習会を開催、次回は9月22日とのことです。ご関心のある方はぜひ繋がり、学び続けていかれますように応援しております。

ご参加のみなさま、おつかれさまでした。この2日間は入学式です。これからもそれぞれの地域で、現場での実践と振り返りが誠実に行われていきますことを、協会として応援して参ります。

次回は、7月21日(土)-22日(日)、名古屋開催をレポートいたします。

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