第47回「エンドオブライフ・ケア援助者養成基礎講座」(名古屋)

  • 開催レポート

7月21日(土)・22日(日)、名古屋でエンドオブライフ・ケア援助者養成基礎講座を開催いたしました。当日は64名の皆さまにご参加いただきました(2日間の受講者、eラーニング+2日目集合研修の受講者、ファシリテーター候補者枠の方を含む)。開催にあたり、運営をご支援くださった地域学習会ファシリテーターならびにファシリテーター候補者のみなさまに心より御礼申し上げます。  

参加者

"/職種の内訳は、看護師64%、医師6%、介護支援専門員6%、介護職5%、ソーシャルワーカー3%、リハビリテーション職3%、保健師3%、その他10%でした。その他職種には薬剤師、鍼灸師、コーディネーター、産業カウンセラー、施設長、塾講師など、多彩な職種のみなさまにご参加いただきました。

地域別では開催地の愛知や岐阜、三重、静岡などの東海地方が目立つ一方、遠方からのご参加も少なくなく、北は茨城、南は鹿児島から多くの方にご参加いただきました。

 

講座の様子

協会理事であり、横浜で在宅診療を行うめぐみ在宅クリニック院長の小澤 竹俊が、2日間の講師を務めました。


2日間の講座では、以下の要素を学びます。

  • 課題背景(2025年問題に備えて)
  • 人生の最終段階に共通する自然経過
  • 苦しむ人への援助と5つの課題
  • 意思決定支援
  • 自宅・介護施設で求められる症状緩和
  • 多職種連携で「援助」を言葉にする(マクロ)
  • 1対1で対応する(ミクロ)

ただ受け身で聞くのではなく、ロールプレイや事例検討のためのグループワーク、学んだことの振り返りなど、ほとんど休む間もなく、口と手をたくさん動かしていただきました。

懇親会

終了後、半数近くの方が懇親会にご参加くださいました。

 

 

受講者の生の声(後日)

受講後、職場に戻って実践していらっしゃるみなさまの声をお聴きしました。

川邉正和さま、医師
かわべクリニック(大阪府)

 病院で経験した入院患者さまの「最期は自宅で」「自宅に帰りたいと思った時が退院する時」という希望をかなえるため、東大阪市で在宅緩和ケアを中心に在宅訪問診療を行っております。大学病院時代の先輩医師から、「受講により在宅緩和ケアを行っていく中で、今後が大きく変わるよ」というアドバイスを受け、受講を決めました。


 講座受講後は、「苦しみは、希望と現実の開きである」という言葉をいろいろな物事に対して考えることが日課になっています。実際の日常生活の中の出来事(子どもたちの兄弟喧嘩など)だけでなく、映画、テレビドラマ、歌詞と色々なことに対してです。すると、そのひと、その物事、出来事の向こう側にあるもの、真実が見えてくるような気がしています。

 そして、今後が大きくかわった学びがあります。それは、「誰かの支えになろうとする人こそ一番支えを必要としています」ということ。つまり、「多くの支えとなろうとする人が、悩み、苦しんでいる」ということが学べたことです。そこで、今、私が積極的に取り組んでいるのは、患者さまを支えておられる、在宅医療に関わるすべての人(訪問看護師、介護士、ケアマネジャー、薬剤師等々)の支えになる!ということです。さらには、私たち医師だけが誰かの支えになっているのではなく、その在宅医療に関わるすべての人が、いろいろな方々の支えにもなっているのだということを伝えていくようにしています。

 今回が2回目の受講でしたが、回を重ねるごとに新たな発見や気付きが得られ、「もっともっと学びたい!そして、学んだことを多くの方に伝えたい!」という思いに駆られます。

 私も、「援助とは相手の顔が穏やかになること」だと心に留めて、日々の医療に携わっていきます。

 

大城京子さま
介護支援専門員 (愛知県)

 介護支援専門員として働く中、車を運転する方からターミナルの方まで、様々な方に関わります。皆それぞれの人生の物語と価値観をお持ちです。人生の最終段階の方に関わるものとして、ご本人の意思を尊重した支援をしてきましたが、「なんでこんな体になったんだろう。こんなんじゃ、死んだ方がマシ」「もっと生きたい!まだ死にたくない」といった、苦しみを抱えた方々の問いに対して、言葉に詰まったり、向き合えず、常にモヤモヤ感、を感じていました。エンドオブライフ・ケア援助者養成基礎講座を知った時、『これだ!!』と、思い受講しました。

 受講後の率直な気持ちは、『頭クラクラ。でも心はメラメラ!』です(笑)。援助的コミュニケーションの基本である(反復)(沈黙)(問いかけ)(苦しみをキャッチする)について、ロールプレイを通して学び、シンプルで最強の基本だと感じました。そして、苦しんでいる人に、『正論は通じない』ことが、確信に変わりました。また、(苦しむ人への援助と5つの課題)では、「苦しみを抱えながらでも、その人が穏やかになれる条件を探し続ける」という言葉が衝撃と共に自分の心の中にストンッと落ちました。

 受講後は、自分の価値観を押し付けず、選択肢は相手、を忘れず支援に当たっています。受講初日の小澤先生のブラックジョーク、「ここ(受講)に来た人達は、職場で浮いてる人ですよね」、受講後は、更に浮く!結果になりました。笑。が!気にすることなく、自分と自分のチームを信じて、不安や苦しみを抱える利用者さんに、向き合っています!受講を検討している方、是非一歩踏み出して欲しいです。迷いの中にある自分にケアに意味が見えます。

 

橋本淳子さま、看護師
私立柏原病院(大阪府)

 私は、大阪府にある市立病院に勤務している看護師です。がん患者さんの痛みや苦しみを、少しでも取り除きたいと思い、がん性疼痛看護認定看護師を志しました。認定学校の授業の講師に小澤先生が来てくださり、それが小澤先生との出会いでした。死を目の前にして苦しむ患者さんとどのように関わったらよいのか、たくさんの本を読み、知識として理解しているものの自分の中で納得できるものはありませんでした。そんな時、学校の授業で小澤先生の講義を聴き、「私の求めていたものは、これだったのだ」と思いました。そしてエンドオブライフ・ケアを自分の体に染み込ませ、現場でもっと活かせるようになりたいとELC援助者養成基礎講座を受講しました。

 この養成講座では、一部の認定資格を持ったエキスパートや医療者だけのものではなく、死を目の前にして苦しむ人に誰もが実践できる援助でした。私が相手を理解するのではなく、相手が私をわかってくれる人、理解してくれる人と思うことが大切であり、どうしたらそんな自分になれるのか、ロールプレイを通して身につけていくことができました。

 がん患者さんから「あとどれくらい生きられますか?」と答えられない質問をされても、反復、沈黙、問いかけを実践することで、逃げない自分になれました。今後は自施設の看護師を対象にエンドオブライフ・ケアの研修を行い、一人でも多くのスタッフが、援助的コミュニケーションができるようにしたいです。

 この講座を受講し、同じ志を持ったピュアな仲間達と出会うことができました。その仲間達が私の心の支えとなっています。

 

鳥海幸恵さま、看護師
川崎市立川崎病院(神奈川県)


 急性期病院で病棟勤務10年目の看護師です。厚生労働省GL(「人生の最終段階における医療・ケアの決定プロセスに関するガイドライン」)改訂を受け、ACPの取組をどのように進めていくかを所属施設で検討中であり、自身の知識とスキルを整理するとともに、命の終わりに向かう方との対話に辛さを感じるスタッフに伝える言葉を持ちたいと考え、受講しました。

 受講により得られたことは、「苦しみの構造」を念頭において対話を重ね「相手がどうであれば穏やかか」をゴールに据える援助の枠組です。自分が何をしているのかを言葉にして同僚に伝える助けになりました。

 受講後担当した患者さんに、糖尿病性腎症により長年透析治療を受け、視力障害や自律神経症状の増悪、脳腫瘍拡大(放射線治療後、追加治療困難)による症状のため日常生活全般に援助が必要となった方がいました。自宅の構造から通院援助サービスの調整が難しく、また妻が不在中患者をひとりにしておくことの不安が大きいため転院調整中でした。病気になってから経験してきたことを中心に、彼の苦しみと支えに焦点をあてて対話を重ねました。やがて、フルタイムで働く妻が元気に仕事を続けてくれることが、その方にとって最も大切なことであることが語られました。そのことを伝えると、「そうなんだ、だから僕も透析ができるうちは、透析できる場所で頑張る。ありがとう」と笑顔を見せてくれました。家に帰りたいと訴え苛立つことが多かったこの方への対応に否定的反応を見せていたスタッフも、彼の苦しみと支えに対する理解を深めることができたようでした。

 受講を考えておられる方へのおすすめポイントは、学んだ知識をそのままにせず、実践知として身体に刻み込む怒涛のロールプレイです。優れた援助についていくら学んでも、実践できるようにならなければ、そして一緒に実践できる仲間をつくることができなければ、地域のケアは一向に良くならない――シビアですが、このようなことを問われていることこそ、この養成講座の意義だと思います。

 

まとめ

 東海地区には継続学習の場としてELC東海がありますが、東海をベースとしながら、愛知、三重、岐阜と、各地でも小さな学習会が広がりつつあります。次回は9月29日(土)午後にELC東海として学習会を予定されているとのことです。ご関心のある方はぜひ繋がり、学び続けていかれますように応援しております。

 協会としては2日間の講座を提供して終わりではなく、受講した方がさらに理解を深め、実践し、振り返り、自らと周囲を進化させていく、そんなお手伝いができたらと願っています。

 

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