10月13日(土)・14日(日)、大阪でエンドオブライフ・ケア援助者養成基礎講座を開催いたしました。当日は90名の皆さまにご参加いただきました(2日間の受講者、eラーニング+2日目集合研修の受講者、ファシリテーター候補者枠の方を含む)。開催にあたり、運営をご支援くださった地域学習会ファシリテーターならびにファシリテーター候補者のみなさまに心より御礼申し上げます。
職種の内訳は、看護師58%、介護支援専門員14%、薬剤師5%、リハビリテーション職3%、医師3%、介護職3%、管理栄養士2%、その他12%でした。その他職種にはソーシャルワーカー、医学生、医療連携、司祭、事務職、心理職、相談員、弁護士、訪問理美容など、多彩な職種の皆さまにご参加いただきました。
地域別では開催地の大阪と近隣の京都、奈良、和歌山、兵庫等からのご参加が大半を占める一方、中国・四国・九州方面からもご参加者いただきました。
協会理事であり、横浜で在宅診療を行うめぐみ在宅クリニック院長の小澤 竹俊が、2日間の講師を務めました。
2日間の講座では、以下の要素を学びます。
ただ受け身で聞くのではなく、ロールプレイや事例検討のためのグループワーク、学んだことの振り返りなど、ほとんど休む間もなく、口と手をたくさん動かしていただきました。
終了後、半数近くの方が懇親会にご参加くださいました。
受講後、職場に戻って実践していらっしゃるみなさまの声をお聴きしました。
上田憲さま、司祭
カトリック大阪大司教区玉造教会(大阪府)
私はカトリック玉造教会において、助任司祭を務めております。司祭の務めの一つに、病人の方とともに過ごし、いわゆるスピリチュアルペインを緩和する務めがあります。しかし、聖職者として、現実に苦しんでいる人に対してどのように声をかけていいのか、わからなくなっていることも多くあります。「自分たちの領域ではない」と思い込み、患者さんを置き去りにしてしまうことも少なくありません。患者さんもそのような時、患者さんたちは、自分のことをわかってくれない司祭よりも、わかってくれる看護師の方や医療従事者をたよりにされています。私自身、何度か現実に苦しんでいる患者さんを前に、言葉を失い、自分の無力感を痛感することもありました。
そんな中、友人である看護師の川邉さんから、声をかけていただき、エンドオブライフ・ケアのことを知り、講座へと参加させていただきました。その中で繰り返し小澤先生が語られていましたが、「苦しんでいる人は、自分のこと(苦しみ)を理解してくれる人がいるとうれしい」とある通り、自分の気持ちを押し付けているだけでは、決して理解しあえず、心を通わすことができないことを、実感しました。
実際の講座を受けて、医療従事者、介護従事者との連携も含め、自分だけで背負うのでなく、療養者にとって最善状態をみんなで考えることで、互いに話し合うことができるようになりました。看護師の方から普段の様子を伺ったり、ご家族の方と話したりすることで、療養者の方が「穏やか」にある状態をキャッチする手がかりを得ることができるようになりました。そして、互いに支えあうことができることを知りました。
改めて、この講座を受けることができ、心から感謝しております。そして、これから受講しようと考えている方へ、ぜひ、参加し、お互いに話し、支えあえる「仲間」になりませんか。私たちを支えてくれる仲間がここにあります。
堀西祐多さま、医学生
島根大学医学科5年(島根県)
島根大学医学科5年生の堀西祐多と申します。元々病院薬剤師として病棟でがん患者さんと関わっていました。がん患者さんと関わる中で、どれだけ医療が発達して寿命が延びても幸せにならない人がいることを実感、医療の役割って何なんだろう?そんなモヤモヤを抱えながら、2018年冬に小澤先生の元で実習をさせていただきました。患者宅訪問時は「早く死にたい」と話されていた患者さんが、診療が終わる頃には、穏やかな表情で「残りの人生をどう過ごしたいか」語られました。自分もこんな関わりを大切にしたい!すぐに養成講座に申し込みました。
養成講座受講翌日、大学の臨床実習でⅣ期の肺がん患者さんを担当させていただきました。講座で学んだ「反復、沈黙、問いかけ」を意識して関わった結果、「これまで誰かに悩みを話したいと思ったことはなかったけど、話しても良いかなって思えた。少し気持ちが楽になった。」と言っていただきました。少しは患者さんの支えになれたと思います。
人生の最終段階の患者さんに関わる時、どうすればよいか分からなくてモヤモヤする。そんなモヤモヤ、「援助を言葉に」してくださるのがELC援助者養成基礎講座です。笑いあり涙ありの講演に加え、徹底的なロールプレイやディスカッションを行うことで「わかる」が「できる」に変わる。その濃密な過程を一緒に過ごすメンバーは一生の支えです。
在宅医志望の私ですが、大学には人生の最終段階におけるケアや在宅医に関心がある学生は少なく、これまで孤独を感じることもありました。しかし、今は小澤先生や養成講座を通じて出会った皆様、そしてELCしまねという支えがあります。沢山の出会いのおかげで、「医療の役割は病気を治すことに加えて、その人らしさ、穏やかさ、幸せを支える手段の一つ」なんだと気付くことが出来た今の私は幸せです。この幸せを必ず将来、患者さんやご家族に還元したいと思います。
田中道徳さま、医師
岡山家庭医療センター(岡山県)
終末期の患者さんを受け持つ機会が増え、患者さんが答えられない苦しみに対して「何かをさせてもらいたいのに何もできない自分」に直面して悩んでいました。どうしていいか分からない、何もできない、と悩み、心が折れかけて病室に行きにくくなってしまったことが度々あり、どうやったら患者さんと向かい合えるか知りたくて参加させていただきました。
実践できたこととしては、定期訪問の糖尿病網膜症でほぼ全盲となった高齢男性の患者さん。「わしの目はもう治らないんだろう・・・」と言われたときに「スピリチュアルな苦しみ」だと理解して、”反復””要約”を通して「自転車で自由に街に行って温泉に入りたいのに入れない」という”ギャップ”を冷静に聴いて、医療者のサポートを約束して(ゆだねてもらい)、働いている町の温泉参加のイベントに誘うことができ、笑顔を引き出すことができました。前なら「何か言わなければ」と焦ってしまう場面でしたが、今回の研修会で参加者同士で面接の練習を何度もさせていただいていたお陰で「何かしたい自分」を持ちながら「冷静に」対応することができました。
研修会を通して、悩んでいる仲間がいることもわかり、とても勇気を持てた研修会でした。今回の研修で学んだ内容を今後も活かせるように頑張っていきます。ありがとうございました。
明松真喜さま、看護師
淀川キリスト教病院(大阪府)
ホスピス緩和ケア病棟3年目の看護師です。苦しむ人を目の前にして、力になりたいと思いながらも何もできず、無力感を感じることがこれまで多々ありました。そのような中、以前に養成基礎講座を受けた職場の先輩から、とても良かったとの感想を聞き、受講に至りました。
講座では沢山の学びがありましたが、一番は『苦しんでいる人は、自分の苦しみをわかってくれる人がいるとうれしい』です。
受講後に、痛みや気に入らないことがあると声をあげ、不安やいらだちが大きい患者様の担当となりました。以前の私であれば、どのように関われば良いのか不安がありましたが、今の気持ちは『わかってくれる人になりたい』です。怒りや不安などマイナスのメッセ―ジであっても相手の世界観を理解できるように、そして、穏やかに過ごせる可能性を「反復」「沈黙」を用いながら丁寧に探っていくことを意識しています。上手くいく時もあればそうでない時もありますが、諦めずに関わっていく姿勢ができました。
講座から1ヶ月少し経ちますが、本当に受講して良かったと感じています。実際のロールプレイを通して、「理解している」と「できる」とは異なり、援助を言語化することの難しさを実感しました。養成講座は入学式。これからも、迷いながら教えてもらいながら、現場から学んでいきたいと思います。
また、小澤先生の情熱にも心を揺さぶられました。苦しみが大きい人と関わる時、私たちの苦しみも大きいですが、謙虚に誠実に関わり続けていく姿を見せて頂きました。
講座で一緒に学ぶことができた同じ志をもつ方々との出会い、つながりにも感謝しております。ぜひ、多くの方が受講されることを願っています。
近畿には継続学習の場として、ELC近畿研究会があり、その他にもいくつかの学習会が定期的に開催されています。ご関心のある方はぜひ繋がり、学び続けていかれますように応援しております。
協会としては2日間の講座を提供して終わりではなく、受講した方がさらに理解を深め、実践し、振り返り、自らと周囲を進化させていく、そんなお手伝いができたらと願っております。
次回は、10月27日(土)-28日(日)、東京開催をレポートいたします。
© End-of-Life Care Association of Japan