12月1日(土)・2日(日)、横浜でエンドオブライフ・ケア援助者養成基礎講座を開催いたしました。当日は51名の皆さまにご参加いただきました(2日間の受講者、eラーニング+2日目集合研修の受講者、ファシリテーター候補者枠の方を含む)。開催にあたり、運営をご支援くださった地域学習会ファシリテーターならびにファシリテーター候補者のみなさまに心より御礼申し上げます。
職種の内訳は、看護師48%、医師8%、介護職7%、介護支援専門員6%、事務6%、リハビリテーション職4%、その他21%でした。その他職種には保健師、ソーシャルワーカー、相談員、在宅医療コーディネーター、セラピスト、患者会、傾聴ボランティア、障害者支援、美容介護、経営者など、多彩な職種の方々にご参加いただきました。
地域別では開催地の神奈川県周辺のほか、東北や四国、沖縄など、遠方からのご参加者もいらっしゃいました。
協会理事であり、横浜で在宅診療を行うめぐみ在宅クリニック院長の小澤 竹俊が、2日間の講師を務めました。
2日間の講座では、以下の要素を学びます。
ただ受け身で聞くのではなく、ロールプレイや事例検討のためのグループワーク、学んだことの振り返りなど、ほとんど休む間もなく、口と手をたくさん動かしていただきました。
終了後、約半数の方が懇親会にご参加くださいました。
受講後、職場に戻って実践していらっしゃるみなさまの声をお聴きしました。
橋爪裕さま、医師
緩和ケア萬田診療所(群馬県)
私はめぐみ在宅クリニック小澤先生のもとでの研修をきっかけにこの活動を知り、今回、エンドオブライフ・ケア援助者養成基礎講座に参加させていただきました。
在宅の現場は多職種が連携して成り立っています。全ての援助者が対等に参加してこそ在宅医療の力が発揮されます。エンドオブライフは何もしないということとは全く異なります。患者さんがこれまで歩んできた人生の、多くの選択の結果を支えるという大きな役割があります。ここで大事なことは、過去から未来へつながる線を描くということです。グリーフケアは亡くなった後から始めるものではありません。過去の存在が現在を生き、その現在が未来を支えていく、その大切さをグループワークで再認識することができました。
また、グループワークを通して感じたことは、エンドオブライフにかける思いや気持ちには職種は関係がないということです。生活そのものがエンドオブライフの多くを占めるからです。患者さんが今までどう生きてきたのか、そして人生の最終段階を迎えた今どう生きたいのか。人は皆支えを必要としています。その支えについて、話してもらえなければ良い援助を行うことはできません。そのためには、患者さんにとって自分のことをわかってくれる存在になれるかどうかが大切になります。問いかけは時として相手を傷つけることにもなります。良かれと思って言った問いかけも、本人にとってそうであるかは別だからです。また、医療者は答えられない無力感にも苦しむことがあります。しかし、それでもなお無力感を感じながらもそこから逃げないことが大事であること、そして全ての援助者がそれを共有できたなら少し気持ちが楽になるかもしれないことを皆で学びました。
今日もまた、訪問先で援助者の皆さんが安心して支援が行えるように、エンドオブライフの大切さを伝えてきました。少しずつ、私の周りでも考え方が浸透してきていると感じています。この活動をさらに地域で広げていきたいと思っています。
棚橋信子さま、医師
森町家庭医療クリニック(静岡県)
横浜開催の養成講座に参加致しました。
現在、在宅診療に携わっております。昨年は人生の最終段階を迎えておられる方々への接し方に自信が持てず、本当に患者さんに申し訳ない気持ちが強くなっていた頃、同僚に受講を勧めてもらい参加いたしました。
養成講座では、反復による思った以上の効果を実感し、また沈黙の時間の大切さ、むしろなくてはならない厚みのある時間であるということに、心底気づかせて頂きました。
講座を受けた後からがスタートとのことでした。日々患者さんと接する中で、目覚ましい成長というわけにはいきません。しかし訪問診療の現場だけでなく、外来でもその技法を少しずつ取り入れるたびに、少しずつ手応えを感じている毎日です。
患者さんの視線がまっすぐこちらを向く瞬間や、涙を見せてくれる時間が多くなったと感じております。自分にも、患者さんの声や訴えを少しゆったりと受け止めることができる構えができました。それまでは、何かすぐにでも対応をしなければならないと、何か急くような気持ちでいたのですが、患者さんはそれを求めているわけではなく、聴いてほしいのだと肌で実感できるようになりました。これは一つの小さい1歩かと感じております。
日々、人生の最終段階を迎える方を前にしております。時々、その重さに逃げたくなることもあります。でもチームで支え合いながら乗り越えていることに気づかせてもらったこと、これは大きな収穫でした。
死を迎えつつあるその人その人ごとに、やはり少し動揺しながらでも、講座で体験した一つ一つの心構えを思い返し、手ほどき頂きつつ参加者みなで考えたことを、お返ししていこうと思っております。
まだまだ広くこの体験を伝えていくに至っていないところですが、心の準備ができましたら、伝えていけたらと思っております。
今後ともどうぞよろしくお願い申し上げます。
吉野ゆかりさま、介護職
㈱中央防災技研 クリンライフケア事業部(神奈川県)
私は介護職10年目。そして3年前に乳がんに罹患した、乳がんサバイバーです。エンドオブライフ・ケア援助者養成基礎講座を受講した動機は、今の私が学ぶ事で、何を感じ、何が見えてくるか・・・を感じたい!知りたい!がきっかけでした。
訪問の仕事柄、余命宣告を受け病院から自宅で終末期を迎える方に対して、介護職としてサポートする場面が少なからずあり、そんな時、どのように向き合うのがベストなのか?場面場面でいつも模索し、突き当たる想いでした。
講座内のロールプレイングなどで感じた感覚は、まず「私に何ができる?」と自然に力んでしまう、思考と感覚からの脱却でした。優しいリズムで会話、相手をしっかり見つめ、会話の中から、相手が吐き出したい想いの糸口を探す。そして少しずつ引き出していく。そんな過程で、相手に「私の気持ちをわかってもらえる人」と感じてもらえる様な、寄り添い方ができる自分になりたい。小澤先生の講座、ワークなどで感じて見えてきた部分でした。
私自身、乳がんになり、そこから感覚や見方も変わってきたからこそ、余計に、迷う部分などありましたが、相手の心地良いリズムを作る。そして自分を調和させていく。それで良いんだ・・・と、フッと力が抜けました。
職場に帰り、この感覚は終末期の方に限らず、高齢者、障害の方に向き合う時も、意識する様になっています。とっても深い学びができました。
小澤先生、エンドオブライフ・ケア協会スタッフの皆様、感謝の気持ちいっぱいです。ありがとうございました。
井川桃香さま、看護師
道都病院(北海道)
死に向かう人への接し方に苦手意識があったのと、現場で働く中で本人・家族が望むその人らしい最後を迎えられるような支援が出来ていない現状に葛藤があり、講座を受けることにしました。
講座では、死を目の前にしてる人の関わり方やわかってくれる人になれるような接し方を学ぶことができました。また、同じように悩んでどうにかしたいと思う人がいるという心強さと、誰かの支えになろうとしてる人こそ1番支えを必要としてるという言葉に心を救われました。
受講後は、本人と家族が穏やかになるような関わりを意識しています。本人・家族と意識をして接することで、心の中で溜め込んでいたものを吐き出してくれ、関わりをさせて頂く前後で表情が変わったのが実感できました。そして、今まで苦手意識から足が遠のいていたことでこのような関わりが出来ていなかったことにも気がつくことが出来ました。講習を受けたことで、死に向かう人へ積極的に関われるようになれ、関わることで悩んだり葛藤しても講習を思い出すことで支えられまた頑張ることが出来ています。
死は必ず訪れるものですが誰もが目の前にすると怖いものです。そして、誰も経験したことがないからこそ関わる中で葛藤も多いと思いますが講習を受けることで救われました。講習を受けた後に実践や日常で糧となるものだと思います。死と向き合う人と関わる中で悩んでいる方はぜひ受けてみてほしいと思います。
横浜開催は、昨年4月に行われた第49回に続いて10度目の開催でした。横須賀市などでは、認定ファシリテーターの皆さまにより、受講後に継続的に学びを振り返り、交流する場が設けられています。
協会としては2日間の講座を提供して終わりではなく、受講した方がさらに理解を深め、実践し、振り返り、自らと周囲を進化させていく、そんなお手伝いができたらと願っております。
次回は、1月19日(土)-20日(日)、福岡開催をレポートいたします。
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