2019年4月14日(日)、当協会設立4周年を機にシンポジウムを開催しました。
今年は大妻大学の講堂をお借りし、このテーマに関心をお持ちの皆さまから各所へご案内いただきました結果、おかげさまで351名の方々にご来場いただきました。このうち約100名は、(未就学のお子様含め)初めて当協会主催のイベントに参加くださった方々でした。
先行き不透明な変化の時代において、子どもから大人まで様々な困難と直面しながらも、しなやかにこれからを生きていくためには、生涯学び続けることが大切であると捉え、そのために必要なことは何か、様々な角度から、参加者との対話を通して探る場づくりを試みました。
今回、会場からの質問や回答を匿名で集められるツール“Sli.do”を導入しました。進行の過程で登壇者が質問に回答したり、加えて、参加者同士がフロアで小グループになって対話をする場を随所に設けたりしました。その結果、参加者の皆さまからのフィードバックとして、「自らの体験や考えをその場で共有することができ、より有意義な場になった」というコメントが多数寄せられました。
私達が大切に広げていきたいと切に願っていること、それは、一部のエキスパートだけではなく、職種や地域を越えて、活動に共感する「仲間をつくる」ことです。そのうえで、このシンポジウムは大変貴重な一歩になったと考えております。
進行
一般社団法人Teacher's Lab./東京都内公立小学校主任教諭・館野 峻先生
社会と学校を結ぶ教育活動として、学校外で活躍する大人と子どもたちとの出会いや学びのきっかけづくりを行ってきた館野先生に、全体の司会進行を担っていただきました。シンポジウムのタイトルについている、~主体的・対話的で深い学びを促す~について、文科省の考え方をわかりやすく紐解いていただいたほか、参加者の皆さまといかに対話しながら、インタラクティブに進行をするかという点においてもアイデアを多々頂きながら、シンポジウム成功のためにお力添えいただきました。
<第一部>
公開授業「いのちの授業~解決困難な苦しみから学ぶこと~」
(当協会理事・めぐみ在宅クリニック院長 小澤 竹俊)
公開授業として、壇上には14名の皆さま(小学校2年生~大人まで)が上がり、受講してくださいました。この「いのちの授業」のめざすことは、知識としていのちの大切さを説くものではなく、様々な困難に遭遇する人生において、1.自分の苦しみと向き合えること、そして2.目の前で苦しんでいる人がいるとき関われること、そのために、主体的、対話的で、深い学びを通して自己肯定感を育むことにあります。この春新たに制作した動画2本*を交えて、小澤から随所に問いを投げかけながら、壇上のみならず、フロアの皆さまも同時に対話する機会となりました。(*Nanaさんの詩は後段に掲載します)
<第二部>
1.エンドオブライフ・ケア協会 活動報告
(当協会業務執行理事 千田 恵子)
2018年度の主な成果のひとつに、私たちがめざす社会への変化の道筋を一枚で表す試み(セオリー・オブ・チェンジの作成)があります。その道筋をたどりながら、①援助者養成基礎講座、②地域学習会コミュニティ、③働く40-50代向け、④いのちの授業について、2018年度の成果と2019年度に強化する「いのちの授業」についてご報告いたしました。また、いのちの授業の教材として新たに制作した2本の動画は、2017年度FITチャリティ・ランを通していただいたご寄付をもとに、電通有志の制作チームのみなさまのお力添えのもと完成しました。業界を超えて様々なご協力をいただき、無事に5年目を迎えられますことを、心より御礼申し上げます。
2.講演①「涙も笑いも、力になる 病院内学級の子どもたちが教えてくれた大切なこと」
(昭和大学大学院保健医療学研究科 准教授・副島 賢和先生)
院内学級の教師であり、ドラマ「赤鼻のセンセイ」のモデルになり、「プロフェッショナル~仕事の流儀」にも登場された副島賢和先生から、院内学級の子どもたちが病気を抱えながらも強く生きようとする姿や、そのかかわりの中で子どもたちに教えてもらった大切なことについてご講演いただきました。「学ぶことは生きること」「当事者意識・自分ごと化」「ひとりじゃないよ」など、具体的なエピソードと心に残るキーワードをもとに、「自分は教育を使ってそれをやっている。みなさんはご自分の専門性を使ってそれをやっている」と、ご自身のお話と参加者との橋渡しを随所で行い、感情移入する方も少なくなかったようです。お子さんから赤鼻に関する質問が出るなど、世代を超えて引き込まれるお話をいただきました。幕間のアクシデントも笑いに変える臨機応変な対応をありがとうございました。
3.講演②「最終学歴ではなく、“最新学習歴”を更新する社会へ」
(京都造形芸術大学 副学長、らーのろじー株式会社 代表取締役・本間 正人先生)
「教育学」を超える「学習学」の提唱者である京都造形芸術大学、副学長の本間正人先生から、Life-long(一生を通じて)、Life-wide(あらゆる場面で)、Life-being(あらゆることを)、自ら学び続けることの大切さ、面白さについてお話いただきました。人間は本来学習する存在であるとして、意識して学ぶことでより深く学ぶことができること、そのために効果的なアプローチを教えていただきました。本間先生のユーモア、参加者のハートをつかむ巧みなスキルが、会場を笑いが絶えない場に変えてくださいました。また、最後のまとめとしてのパネルディスカッションでも、モデレーターとして登壇者の魅力を引き出しながら、会場全体に一体感を作り出してくださいました。
シンポジウムの最後には、参加者の一部の方々からの応援メッセージもいただき、私達の活動の場を広げる勇気やエネルギーを改めて頂きました。また、会場外のホワイエでは、認定ELCファシリテーターの皆さんが、全国各地における学習会やいのちの授業を紹介したコーナーをつくり、お互いの取り組みの発信や情報共有を率先して行ってくださいました。
ご参加くださったみなさま、ご登壇者のみなさま、開催にあたりご支援くださったスタッフのみなさま、そして共催、後援としてお力添えくださったみなさま、本当にありがとうございました。みなさまのお力添え、共感、エネルギーがより多くの仲間を増やすきっかけに必ずつながっていると信じています。心より御礼申し上げます。
*動画「Color」のベースとなった、Nanaさんの詩をご紹介します。
病がくれた勇気/カラー
苦しみは、一人でがんばらなければいけないと思い込んでいた。
わたしの目に映る景色はモノクロだった。
でも、ある日、ほんの少しの“勇気という一歩”を踏み出すことで、
あたたかな手を差しのべてくれる人たちがこんなにも
たくさんいることに気がついた。
その瞬間、わたしの目に映る景色に色がついた。
わたしが、あなたが生きているこの世界は、明るく・あたたかく・無限に優しい。
だから、一人でがんばらないで。
声にだして仲間を呼ぼう。
ほんの少しの勇気をだして。
この世界が七色に輝きだすから。 Nana
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