2019年2月16日(土)・17日(日)、仙台でエンドオブライフ・ケア援助者養成基礎講座を開催いたしました。当日は44名の皆さまにご参加いただきました(2日間の受講者、eラーニング+2日目集合研修の受講者、ファシリテーター候補者枠の方を含む)。開催にあたり、運営をご支援くださった地域学習会ファシリテーターならびにファシリテーター候補者のみなさまに心より御礼申し上げます。
職種の内訳は、看護師57%、リハビリテーション職9%、介護支援専門員7%、保健師5%、ソーシャルワーカー4%、介護職4%、その他14%でした。その他職種には医師、歯科衛生士、あん麻マッサージ指圧師、個別運動指導、相談員など、多彩な職種の皆さまにご参加いただきました。
地域別では、福島県からのご参加者が過半数を占めたほか、開催地の宮城県、岩手、山形、青森などの東北地方や長野など遠方からのご参加者もいらっしゃいました。
協会理事であり、横浜で在宅診療を行うめぐみ在宅クリニック院長の小澤 竹俊が、2日間の講師を務めました。
2日間の講座では、以下の要素を学びます。
ただ受け身で聞くのではなく、ロールプレイや事例検討のためのグループワーク、学んだことの振り返りなど、ほとんど休む間もなく、口と手をたくさん動かしていただきました。
終了後、受講者のうち多くの方が懇親会にご参加くださいました。
受講後、職場に戻って実践していらっしゃるみなさまの声をお聴きしました。
村上真基さま、医師
国立病院機構信州上田医療センター緩和ケア科(長野県)
私は、緩和ケア医となって約10年経ちました。緩和ケア病棟勤務の経験もありますので多くの看取りに関わってきました。思えば、私が緩和ケア医を目指す前に、亡き父が「1000人の看取りがあったとして、同じお別れは一人もいない。1000人の看取りに関われば、死について1000回勉強したことになる」という言葉を残していました。ようやく、この言葉の意味がわかってきたところで、エンドオブライフ・ケア協会と援助者養成基礎講座に出会うことができました。
本講座を2日間受講して、消化しきれないくらい多くのことを学びました。これを、私なりに一言にまとめてみると、「目の前のエンドオブライフを迎えた一人の方の“苦しみ”を言葉にすることを通して援助者になる」です。これを心に留めつつ日々の臨床と向き合っていますが、この文章を書いている数日前には、体力の限界が近づいている患者さんから「まだ、やりたいことがあるから、抗がん治療を続けたい」と言われました。自分が緩和医療を専門にしているからといっても、死を前にした一人の方に対しては、プロでもベテランでもなく、一人の援助者にすらなれません。1000人以上の看取りに関わっても、まだ学ばせていただく立場です。まだ自分にはエンドオブライフ・ケアを実践できていませんが、一方で、病院の中を見渡してみると、多くの患者さんが「苦しみ」を聴いてもらうこともできずに、さらに大きな苦しみを抱えています。
私は、緩和ケア医になったばかりの頃、先輩医師から「医師が“先生”と呼ばれるのは何故だかわかりますか。“先生”というのは、どの世界でも指導者となって、周りの人の模範になることですよ」と諭されたことがあります。これは、患者さんに対しての指導者というだけではなく、メディカルスタッフや一般住民に対しても当てはまることだとも諭されました。また、どなたでも経験することだと思いますが、「教育=人に教える」ということが自分自身の学習にもなっていることは、私も身をもって感じています。
回りくどくなってしまいましたが、私にできることは、目の前の苦しむ人と向き合うことに加えて、エンドオブライフ・ケアを実践できる仲間を増やすことだと考えました。
もっと患者さんから学び、学んだことを共有し広めていきたいと思います。
櫻井茂さま、ソーシャルワーカー
ホームケアクリニックえん(岩手県)
もう10年近く前、幕張で行われたある学会で小澤先生が担当された「いのちの授業」の短縮版に出席しました。とても感銘を受け、以後何度も他の研修でお話をお聞きする機会がありながら、ELC 援助者養成基礎講座を受講することなく過ごしていました。
当院は機能強化型在宅支援診療所の訪問診療専門クリニックであり、今後地域における他職種と関わりにおいて啓蒙してゆく役割を担えればと思っていたこと、職場の同僚もほぼ受講したことなどから養成講座を受けることとしました。
講座中のロールプレイにおいて、反復と沈黙を用いながら相手の方と一緒いるなかで、落ちていく気持ちを反復しつつ、問いかけることで、支えに気づく過程がとても勉強になりました。
研修を終え、実践の場において援助的コミュニケーションを意識して話を聴くようにしています。50代の乳がんの女性は、家の事情で自宅に帰ることが出来ず、ある施設に入所しています。入所後からどんどんうつ的になり、口数が減っていました。話を伺ううちに、これまでの入院生活との違い、施設での対応の仕方について悩んでいました。明確に解決できることがない中で、反復と沈黙を心がけ話を聴くうちに、笑顔が見られるようになりました。古くからの友人が心の支えであることが分かりました。その他に気付いたことはこの援助的コミュニケーションは、診療の場面に関わらずに生かせるという事です。私は職業柄、他院の看護師やソーシャルワーカー、ケアマネジャーや施設の職員等とも話をします。その様な方々ともじっくり話を聞く場合、援助的コミュニケーションはとても有効です。
また、当然のことながら職場における職員からの相談などにおいても同様です。苦しんでいる人は苦しみを聞いてくれる人がいると嬉しい…その事を実感します。ともすると、関わっている患者さんやご家族のみに目を向けがちですが、苦しみという事は援助しようとしている側にも起きうる事です。大切な仲間や連携しようとする多職種の方々においても 助言をするよりも、まず話を聴いてみる。そこから見えたり、気付いたりすることが数多くあると感じます。そしてそれは、結果としてより良い援助に繋がるのだと思います。
まだまだ学び始めたところですが、これからも機会あるごとに学び続けて行きたいと思っています。
堀米康子さま、介護福祉士
河北福祉会地域密着型特別養護老人ホーム眺葉の家(山形県)
2006年、介護報酬改定の際、看取り加算が加えられて、自施設でも昨年度から看取り介護加算が取り込まれました。看取りってなんだろうという意識が増え、生活面だけでなく、本人の意向、ご家族の思いにどう関わっていけばいいのかと思っている中、この協会の研修に参加した看護師から、死にたいって言われたらなんて答える?と聞かれ答えられませんでした。今までも何度も耳にした言葉でしたが、何気なく答えてしまって流していたことに気づき、言葉の大切さを感じ、講座を勧められすぐに申し込みました。
2日間、ロールプレイを通し会話の大切さ、聴いてもらえる、理解してもらえる、苦しみを分かってもらえるという安心感を学びました。それは終末を迎える方だけでなく支えを必要としている、苦しんでいる全ての方々もだと思います。
先日看取りを終えた方がいます。もう治らないという不安、最後まで家に帰りたい…連れてってほしいと話していましたが実現できず、それでも言葉のかけ方、返し方、受け止め方、研修で学んだ事を思い出し、穏やかでありますようにと願い、親族に囲まれながら安らかに旅立ちました。ご家族から家族のようにしてもらえて幸せだったと思う。とあたたかい言葉をいただきました。
小澤先生はじめ協会スタッフの皆さん、グループで出会った方々に感謝しつつ人として最期まで穏やかに暮らせますよう、ここでよかったと思ってもらえるように、多職種連携をもち、支えになれるように活かしていきたいと思います。
講座では看護師の方が多かったですが、生活の場と変わってきている施設介護に携わっている介護士の方々にも、支えや理解者となり人生の最終段階を迎える人の援助者となってほしいと思います。
仙台開催は、昨年9月に行われた第50回に続いて7回目の開催でした。東北でもELC福島、ELCきたかみが発足し、地域学習会が開催されています。今後も継続的な学習機会が広がっていくことを期待しています。
協会としては2日間の講座を提供して終わりではなく、受講した方がさらに理解を深め、実践し、振り返り、自らと周囲を進化させていく、そんなお手伝いができたらと願っております。
次回は、3月2日(土)-3日(日)、名古屋開催をレポートいたします。
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