9月12日(土)、協会設立後、2回目となる養成講座がスタートしました。今回も前回同様、東京での開催です。この日、明け方発生した地震の影響により、都内のダイヤは大きく乱れ、影響を受けた方もいらっしゃるなか、開始時刻を少し過ぎたころには全員が揃い、無事開始することができました。
55名の方にご参加いただきました。
職種の内訳は、看護師56%、介護関連職種15%、その他(ソーシャルワーカー、医師、薬剤師、地域包括支援センター職員ほか)29%でした。今回は看護師の方々に多くご参加いただきましたが、同じ職種であっても、職場は病院(一般病棟、緩和ケア病棟、地域医療連携室・・・)、診療所、訪問看護ステーション、居宅介護支援事業所、施設、高齢者住宅、など様々で、エンドオブライフ・ケアにおける各自がおかれた状況やニーズも多様であることにお気づきになったことと思います。
また、北は青森、西は岡山からお越しいただきました。今回も首都圏以外(※)からお越しの方が3割ほどいらっしゃいました。中には、地元で開催するまで待てないからと、東京までお越しくださる方もいらっしゃいました。
(※:青森、新潟、富山、福島、群馬、栃木、愛知、岡山・・・)
協会理事であり、横浜で在宅診療を行うめぐみ在宅クリニック院長の小澤 竹俊が、2日間の講師を務めました。
2日間の講座では、以下の要素を学びます。
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ただ受け身で聞くのではなく、ロールプレイや事例検討のためのグループワーク、学んだことの振り返りなど、ほとんど休む間もなく、口と手をたくさん動かしていただきました。
また、今回受講者のお一人に手話通訳の方が各日3名ついて、チームとしてご受講をサポートしていらっしゃいました。メッセージをくみ取り全身で表現する巧みな技と、4名での鮮やかな連携に、非言語コミュニケーションのお手本を間近に見させていただくことができました。
当日、新聞社2社および雑誌社によるオブザーブが入り、このテーマへの関心の高さを受講者のみなさま自身もお感じになったようです。
終了後、6割の方が懇親会にご参加くださいました。Facebookグループが早くも立ち上がり、参加者のみなさまは、名刺交換に記念写真撮影と大変な盛り上がりの一方で、現場で抱える悩みを真剣に相談したりと、あっという間の2時間となりました。
2日間の養成講座も終わりに近づいたころ、会場内で受講者のみなさまから、そのとき感じたことを生のお声として頂戴いたしました。
渡辺 美惠子さま
医療法人社団 悠翔会(東京都)、看護師
これまでも、終末期の方にはすごく苦手意識があったのですが、医療職だけでなく介護職にもできることがあると言ってハードルを下げてくださったことがうれしく、何か自分にもできることがあるのではないかと思って受講を決めました。患者さんだけでなく職場のスタッフに対しても、どこでも援助的なコミュニケーションが基本なのだということを学びました。
福留 洋志さま
医療法人社団湘南シルバーサポート湘南長寿園病院(神奈川県)、看護師
本人の苦しみとか、何について悩んでいるのかを確認していくときに、傾聴して問いかける、ということは聞くのですが、じゃあどうするのかということが、具体的な形として提示されることがあまりなく、通り一遍のことしか教わってこなかった気がします。今回学んだ、本人の苦しみや支えとなるものを言語化していくことや、どんなところを拾っていくのかを含めて、今関わるケアの場に活かしていければと思っています。
あれから3週間。職場に戻って実践していらっしゃるみなさまの今をお聴きしました。
藤井 大介さま
医療法人社団 悠翔会(東京都)、看護師
在宅患者様から「早く楽にしてほしい。」「生きてるのが辛い。終わりが見えない。」など聴くと返答に困り、自分も辛い気持ちになることやその方のところに足が向かなくなることがありました。少しでも力になりたいのになれていない悔しい気持ちでいっぱいでした。
そんなときに法人の勉強会で小澤竹俊先生を知り、「いのちの授業」を拝聴させていただいて感銘を受け、エンドオブライフ・ケア援助者養成基礎研修を受けて援助士を目指し勉強したいと思いました。
研修では講義の間に他の参加者とのロールプレイがあり、学習したことを実施して実践的なシミュレーションをすることができました。机上の学習だけではなく、経験として持ち帰ることができたのがとても有益でした。また、普段の看護が患者様の支えを強める援助になっていたかもしれないと気づくことができました。
訪問診療同行看護師をしているので医師との会話の合間やバイタルサイン測定時、処置時など短い時間で話を聴かせてもらっています。患者様に「そうなんです。」と返してもらえると嬉しくなり、その積み重ねから信頼を深めることができてきていると感じます。看護師だけでなく、より身近にいて一緒に悩んでいるヘルパーさんにもぜひ参加していただきたいです。
高久 正行さま
(福)白山福祉会特別養護老人ホームラスール麻生(神奈川県)、介護職
・養成講座参加の動機は上司に「自分達がやっている根拠が見つかるから」と言われたからです。元々根拠を考えて介護をしてなかったので、根拠で何が変わるのか知りたいと思いも出ました。
・養成講座で得られたことは「その人らしさ」がいかに重要で、やってる事を周りにいかに説明して知ってもらい協力体制を作るか。それこそ施設職員だけではなく他の職種にも協力体制を組めば、今以上のケアの質が向上すると思いました。
また、医師に対して苦手意識はあります。救急搬送や受診等でも上から目線の医師ばかりだったので、「医者なんて…」と思っていました。今回の講座を受けて、気持ちのある小澤医師がいて自分達の担当でない事が残念に思ったのと小澤医師みたいな医師が増えて欲しいと思いました。
これからも様々な看取りを行う事となると思います。家族がいる方いない方・疎遠な方熱心な方、ご本人様の状態でも様々なケアが求められると思います。どこまでチームケアで・施設として対応出来るか、自分達がどんな対応をするために何が必要なのか、色々考えなければならないと感じました。
・現場で実践していることは傾聴です。話を待つ事の大切さ、繰り返す事の重要性を知ったので実践しています。感覚を掴むのが難しいですが、以前よりコミュニケーションが取れていると感じています。
・受講検討中の方へのおすすめのポイントは、小澤医師の話を聞いて欲しいです。ポイントを挙げるより、小澤医師の話し自体が全てだと思ってます。
金子 真美さま
私は両方の聴覚に障害があり、左耳のみ補聴器着用していますが、音声をはっきりと聞き取ることはできません。そのためコミュニケーションは主に手話で、学生時代は地元の学校に通っていたので音声で話すこともできます。また、相手にもよりますが1対1であれば口話(相手の唇の動きを読み取る方法)で会話することができます。
今回、第2回エンドオブライフ・ケア援助者養成基礎講座開催前から、事務局の方が手話通訳者に対して資料の事前発送、当日の配置やスケジュールの流れなどご考慮くださり2日間手話通訳者を3名ずつ派遣し、私も講座に参加することができました。
私は過去にピアカウンセリングを4年、聴覚障害者相談員を10年経験し、現在は退職して大学院で聴覚障害者支援体制における啓発資材の研究を進めています。経験からいいますと相談を受けるという姿勢や経験と熱意は必要ですが、その分スキルアップは必要と日々感じていました。在職中に小澤竹俊先生の本に出会い、2015年に初めてめぐみ在宅クリニックの地域緩和ケア研究会に参加、そこで一般社団法人エンドオブライフ・ケア協会の存在を知りました。
2日間にわたる講座ではヘルパー、看護師、福祉用具相談員などさまざまな職種の方とチームを組み、ケースについて検討したり、ロールプレイをしたりしました。これまで「目先の苦しむ人のこと」や「苦しむ人への支える方法」を考えることでいっぱいいっぱいでしたが、グループでの作業を繰り返すことで視野がひろがり、さらに重要ポイントを整理し苦しむ人への支えをグループで分担しまとめることが大切と気づきました。
また、講師や周りの音声言語を手話通訳者が視覚的表現する、立ち位置などによっては相談業務やケース会議に影響するので、現場を見極めて私から手話通訳者に指示を出していく必要があることも考えさせられました。
このようにロールプレイを短時間で繰り返し実践することで、自分の苦手なところなど気づかされますし、グループと話し進めながら考えを整理して話したり、他の意見を聞いたりできることも、講座ならではの魅力だと思います。後に続く仲間がこの「エンドオブライフ・ケア援助者養成基礎講座」の門戸を叩いて来られることを楽しみにしています。
和田 昌子さま
(財)神山復生病院(静岡県) 地域連携・医療福祉相談室 室長、社会福祉士・医療ソーシャルワーカー
過去にNHKの番組で小澤先生を知り、数年前から緩和医療学会で小澤先生の講演を拝聴しておりました。今年、学会に参加出来ないスタッフから、小澤先生の講演を伝達講習して欲しいと依頼され、小澤先生にご相談させて頂いた時、エンドオブライフ・ケア協会のお話しを伺いました。さっそく協会設立記念シンポジウムに参加し認定資格を取得する決意を致しました。
受講すると、学会で伺っていたお話しがより深く理解出来ました。大切なキーフレーズ『苦しんでいる人は、自分の苦しみを理解してくれる人がいると嬉しい。ただし、相手を理解する事と、相手の理解者になる事は異なる』があります。これは、私が相手を理解するのではなく、相手が私を分かってくれた理解者だと思う事は可能性があるという事で、受講後、私は自信を持ってスタッフに説明しています。また、相手の理解者になるための聴き方として、相手が伝えたいメッセージを言語化して返す“反復”、相手の心が準備できるのを待つ“沈黙、“相手の支えを意識して尋ねる”問いかけ“を学び、相談業務はもとより日常会話にも生きています。
現場に帰り、支えを強める援助的なコニュニケーションを意識しながら患者様に接するようになりました。言葉を反復すると笑顔で『そうなんです』と返ってきます。私達の現場は簡単に支えが見つからない事は多いですが、苦しんでいる患者様の希望と現実の開きを意識するだけで、何気ない言葉や態度から、苦しみに気付く事が出来ます。そして、どんなに困難な状況でも、その苦しみと支えをしっかりキャッチし、支えを強めることが出来たなら、人は穏やかさを取り戻すことが出来る事を目の当たりにしました。苦しくて自分を好きになれない、迷惑をかけるなら早く死んでしまいたいと思っている人が、こんな自分でも生きていて良かったと思えるような援助を、これからも続けて行きたいと思います。
受講を検討している方へ:養成講座は、最期まで尊厳を尊重した人間の生き方に着目した医療や介護を目指す為のエッセンスが沢山盛り込まれています。受講後は、自己肯定感が高まり業務への自信につながります。
相田 里香さま
相仁介護支援サービス(東京都)、介護支援専門員
・養成講座参加の動機
ケアマネジャーという仕事は、直接的な援助は出来ず、主に言葉を使ったコミュニケーションという形のない「援助」を、一番遠巻きで行うことが多い。その独特の苦しさや歯がゆさに、自身の出来ることや役割、存在意義を言葉にすることが出来ず、いつも言葉にならない思いを抱え、役に立てていない自分に失望しながらも、逃げずに学びたいと手に取った本が小澤先生の本でした。
・養成講座で得られたこと
じっと耳を傾け理解しようと話しを「聴いてくれるひとの大切さ」・・・。
ロールプレイを通してその存在の大きさを実感。自分に出来ることや自身の援助を言葉に出来るようになったときにつく自信をこころと身体で理解しました。
2日間で学んだことはたくさんありますが、私自身が「役に立つ」という価値基準であったこと、私の苦しみをわかってくれる人、学び語り合える仲間が必要であったことに気付き、奥歯の噛み締めがほどけ、私らしくいこうと笑顔になれたことが何よりの成果だと思います。
・現場で実践していること
大切な面接の前には家族を相手にロールプレイをしています。少しずつこころが穏やかになり、力が抜けて自然な笑顔でゆったりと面接に臨めているような実感があります。また、受講する前は何より苦手だった「沈黙」や「待つこと」に時間をかけ、大切に共有するようにしています。主人公を「私」から「あなた」へ。暮らしの中にふとこぼれる笑顔を増やし、ささやかだけれど嬉しいと思えることを共にだいじに出来るように。小さな花が咲くような話題を1つ探し、訪問の準備をしています。
・受講検討中の方へのおすすめのポイント
誰か(何か)を長く支え続けていくために・・・。私たちにも支えが必要です。ここにはあなたの「苦しみをわかってくれるひと」が側にて、自信がもてる手がかりがきっと見つかります。人生を変える出会いを是非!ご一緒に。
早くも年内に再会の約束を誓った第2回参加者のみなさま。受講後の実践を通じて、うまくいっていること、悩んでいることなど、様々な報告が行き交うことと思います。協会としては2日間の講座を提供して終わりではなく、受講した方がさらに理解を深め、実践し、振り返り、自らと周囲を進化させていく、そんなお手伝いができたらと願っております。
この後、希望する受講者のみなさまには、協会として以下をご支援して参ります。
次回開催は、10月17日(土)-18日(日)、いよいよ大阪に参ります。
多様な参加者のみなさまとお会いできますことを、スタッフ一同楽しみにしております。
© End-of-Life Care Association of Japan