第63回「エンドオブライフ・ケア援助者養成基礎講座」(横浜)

  • 開催レポート

2019年6月1(土)・2日(日)、横浜でエンドオブライフ・ケア援助者養成基礎講座を開催いたしました。当日は62名の皆さまにご参加いただきました(2日間の受講者、eラーニング+2日目集合研修の受講者、ファシリテーター候補者枠の方を含む)。開催にあたり、運営をご支援くださった地域学習会ファシリテーターならびにファシリテーター候補者のみなさまに心より御礼申し上げます。  

参加者

職種の内訳は、看護師57%、介護支援専門員11%、介護職6%、リハビリテーション職3%、相談員3%、保健師3%、学生3%、学生3%、医師2%、その他9%でした。その他職種にはメディカルアシスタント、機能訓練指導員、傾聴ボランティア、臨床工学技士、臨床美術士、管理者など、多彩な職種の皆さまにご参加いただきました。

地域別では、開催地の神奈川県と関東近郊以外に、中部・四国地方、九州地方からもご参加者がいらっしゃいました。

講座の様子

協会理事であり、横浜で在宅診療を行うめぐみ在宅クリニック院長の小澤 竹俊が、2日間の講師を務めました。


2日間の講座では、以下の要素を学びます。

  • 課題背景(2025年問題に備えて)
  • 人生の最終段階に共通する自然経過
  • 苦しむ人への援助と5つの課題
  • 意思決定支援
  • 自宅・介護施設で求められる症状緩和
  • 多職種連携で「援助」を言葉にする(マクロ)
  • 1対1で対応する(ミクロ)

ただ受け身で聞くのではなく、ロールプレイや事例検討のためのグループワーク、学んだことの振り返りなど、ほとんど休む間もなく、口と手をたくさん動かしていただきました。

懇親会

終了後、半数近くの方が懇親会にご参加くださいました。

受講者の生の声(後日)

受講後、職場に戻って実践していらっしゃるみなさまの声をお聴きしました。

 

岩崎泰士さま、メディカルアシスタント
ひきのクリニック(神奈川県)

・養成講座ご参加の動機
仕事上、末期がん患者さんとの関わりが数多くあります。命の最終段階に大きく苦しみ悲しむ患者さんやご家族がいて、それに対し何もしてあげられない自分に無力さを感じ、そして何を話して良いか困惑する自分がいました。何かをする、何を話す、それがゴールでもないと思い戸惑う中で、では何かを学ぼうと思った時にこの講座のことを知りました。そしてこれで何かが開けるのではと期待をして受講しました。

・養成講座で得られたこと
治らない病気、元の生活に戻ることができない現実など解決出来ない苦しみについてどのように捉え、そしてどのようにそれを支援していけばよいのか、考え方を得られたのはかなり大きい収穫でした。それにより苦しみの最中の患者さんに対して逃げずに会話することができている。

・現場で実践していること
苦しい中でも、残された時間をどうにか有意義に過ごしたいと思っている患者さん、その思いを形にしたり後押しできるように会話をしながら考えています。この間での大きな前進は、残される家族への手紙を綴るお手伝いができたことです。

・受講検討中の方へのおすすめのポイント
患者さんの為に何か一つでも役に立ちたい、そう思っていても実際には何をしたら良いか?自分に何ができるのか?そんな思いで毎日モヤモヤしている方々は、先ずは第一歩としてどうでしょうか?この講座の内容が皆さんにとってドンピシャにはまるかどうかはやってみないと分からないです。しかし、苦しむ患者さんに関わる自信に繋がり、そこから一歩踏み出すキッカケになるのでは?話をすることさえできれば、そこから色んなことができると思います。全てのキッカケを見つけられる(かも)、そんな講座だと思います。

 

岩見隆さま、看護師
横浜市立みなと赤十字病院 救命救急センターICU (神奈川県)

 私は現在ICU(集中治療室)で看護師として勤務しています。ICUでは重症な患者さんが多く突然亡くなるケースも多くあります。大事な人を突然失った家族の悲しみ、あるいはいつ失うかわかならいという不安や恐怖を抱える患者さんやそのご家族を日々目の当たりにしてきました。そのような辛い状況の中でどうしたら患者さんやご家族に寄り添い支援できるのか、という悩みが私の中で大きくなっていきました。不安や悲しみを抱える患者さんや家族により良い支援ができるようになりたい、そのような思いからこの講座を知り受講しました。


 この講座では人生の最終段階を迎えた人やその家族が抱える苦しみとは何か、そして関わり方や具体的な援助方法を学ぶことができました。座学にとどまらず、実際にロールプレイやグループワークを行なうことでより実践的な方法を身につけることができました。また職種もフィールドも異なる様々な方が参加されており、それぞれの立場や視点での捉え方や考え方を共有する機会にもつながったり、同じ熱意を持った仲間たちに出会えたのも貴重な体験となりました。現在ではその援助方法を思い返し、重篤で意識のない患者さんのご家族などに対して苦しみの共有、反復法や沈黙のとりかたを意識して、関わりの実践をしています。その実践の中でご家族から「あなたが担当でよかった。話を聞いてくれてありがとう。」などのお言葉を頂くことができたり、以前よりも自信を持って患者さんやご家族と関わることができるようになりました。


 この講座では人生の最終段階にいる人々との関わりについて、じっくり考えその関わり方について学ぶことができます。それは単に慢性期や急性期、あるいは医療現場だけではなく、様々な分野やフィールドにも当てはまることだと思います。苦しむ人々を支えたいと思う方はどなたでも、ぜひ受講して頂きたいと思いました。

 

阿部学さま、リハビリテーション職
医療法人社団 協友会 横浜なみきリハビリテーション病院(神奈川県)

・養成講座参加の動機
日々の臨床業務、地域でのリハ支援活動、失語症者への支援活動等において、患者や利用者である前に一人の人であるその方に対して言語聴覚士である自分を入り口として向き合っています。人の尊厳やそのひとらしさの復権、治療だけでは解決できない事象と対峙する中で、出来る事も増えた半面、無力さもそれ以上に感じる事が増えました。どうやったらその方は『これでいい』と満足出来るのか、そのヒントを得たかった。多死社会を迎える日本。穏やかに暮らし、生ききるヒントを2025年や2040年を前に、今、聴いて感じる必要があるのではないかと、それが養成講座参加の動機です。

・養成講座で得られたこと
希望と現実のギャップに苦しむそのひとは、聴いてもらえていると感じられると、支えがあると感じられると嬉しい。援助者やかたわらにいる私はその方の支えを強め、また自らの支えを知ることで、ひとは穏やかになれる。選べるということに自由や幸福を感じる。役割は人を強くする。人生の最終段階であるひとに対する寄り添い方。伝えたい人に伝わりやすい伝え方のヒント。歌やコトバ、間、の効果的な活用方法。志や課題意識が似ている仲間や同志。穏やかな気持ち。

・現場で実践していること
相手の感情の動きが妨げられないよう、【反復】、【沈黙】、【問いかけ】を意識して用いています。『そうなんです!』という言葉や表情の硬さが緩む瞬間をキャッチするようにしています。また、私は『話を聴いてくれる人』と思ってもらえているかな?と振り返る間をもつようにしています。

・受講検討中の方へのおすすめポイント
  ・誰かの支えになろうと思った方
  ・こころがすり減って疲れかけている方
  ・子育てに迷っている方
  ・いじめられている誰かを護りたいと思った方
  ・気づいてしまった方
 お薦めします。面白い小澤先生や小澤先生の面白い話。ぜひ一度聴いてみてください。

 

佐橋正寅さま、学生
北里大学医学部医学科(神奈川県)

・養成講座ご参加の動機
私は2019年の3月に、学生実習として小澤先生がいらっしゃるめぐみ在宅クリニックの往診に2日間帯同させていただきました。その時に小澤先生からの紹介でELCとこの養成講座の存在を知りました。私自身将来はコミュニケーションをより重視した医師になりたいと考えていたので、この講座に参加しようと思いました。

・養成講座で得られたこと
「私」が「相手」を理解することは難しいが、「相手」が「私」を理解してくれる人だと思うことは可能であるという視点です。日常での会話にもよくあることですが、私たちは相手を理解した気になっていることがあまりにも多いと思います。そこで知ったような言葉を相手に投げかけたとき返ってくるのは、「私のことなんて何も分かってないよ」という言葉でしょう。しかし元々他人である私たちにできることは、まずは目の前にいる人の話をしっかり聞くことだという考えを得られました。そして「相手」が「私」を理解してくれる人だと思うための援助的コミュニケーションについてロールプレイなどを通し学ぶことができました。

・現場で実践していること
私はまだ大学生なので学生生活での実践についてお話しします。今回の講座で人の苦しみは現実と希望の離れだということを知りました。私はこういう苦しみを持っているのは人生の最終段階にいる人たちで養成講座はそのような人たちへの援助的コミュニケーションを学ぶ場だと考えていました。しかし講座が終わって学校に戻ってみると、意外にも苦しみを感じている人が多いということに気が付きました。そのような人達の苦しみをキャッチしたらなるべく反復などの技法を使って話を聞くようにしています。何人かはとても笑顔になっていました。

・おすすめのポイント
養成講座は学生でも気軽に参加できる内容です。学生での参加でしたが非常に勉強になることが多かったです。

 

まとめ

横浜開催は、昨年12月に行われた第54回に続いて11度目の開催でした。横須賀市などでは、認定ファシリテーターの皆さまにより、受講後に継続的に学びを振り返り、交流する場が設けられています。

協会としては2日間の講座を提供して終わりではなく、受講した方がさらに理解を深め、実践し、振り返り、自らと周囲を進化させていく、そんなお手伝いができたらと願っております。

次回は、6月8日(土)-9日(日)、福岡開催をレポートいたします。

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