第3回「エンドオブライフ・ケア援助者養成基礎講座」(大阪)

  • 開催レポート

 10月17日(土)、協会設立後、3回目となる養成講座がスタートしました。今回は初めての大阪開催です。

 

参加者

75名の方にご参加いただきました。

 職種の内訳は、看護師49%、医師16%、介護関連職種16%、薬剤師8%、その他(ソーシャルワーカーほか)11%でした。今回も最も多かったのは看護師の方ですが、医師や介護関連職種の方にも多くご参加いただきました。

 

 地域別にみると、60%が地元大阪の方でした。さらに京都府、兵庫県、滋賀県、奈良県、和歌山県を加え、84%の方が関西の方です。その他、新潟県、東京都、愛知県、鳥取県、広島県、岡山県、香川県、宮崎県、鹿児島県からお越しいただきました。

 

 同じ法人から複数名でご参加くださったり、これを機に地域での勉強会につながったなど、地域開催ならではの特長がよく表れた回となりました。

 

講座の様子

 協会理事であり、横浜で在宅診療を行うめぐみ在宅クリニック院長の小澤 竹俊が、2日間の講師を務めました。

 

2日間の講座では、以下の要素を学びます。

 

  •  課題背景(2025年問題に備えて)
  • 人生の最終段階に共通する自然経過
  • 苦しむ人への援助と5つの課題
  • 意思決定支援
  • 自宅・介護施設で求められる症状緩和
  • 多職種連携で「援助」を言葉にする(マクロ)
  • 1対1で対応する(ミクロ)
 

ただ受け身で聞くのではなく、ロールプレイや事例検討のためのグループワーク、学んだことの振り返りなど、ほとんど休む間もなく、口と手をたくさん動かしていただきました。

 

懇親会

 終了後、7割近くの方が懇親会にご参加くださいました。懇親会では、お互いを知っていただくためのコーナーを設け、過去の受講生に司会を務めていただきました。関西の方はお話し好きというイメージがあり、もしかすると時間内に終わらないのでは・・・とのスタッフの懸案をよそに、みなさま簡潔ながらインパクトのあるスピーチを披露してくださいました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

受講者の生の声(当日)

2日間の養成講座も終わりに近づいたころ、会場内で受講者のみなさまから、そのとき感じたことを生のお声として頂戴いたしました。

 

村田 一美さま、株式会社フリーステーション フリーステーション訪問看護ステーション(大阪府)、看護師
山邊 伯子さま、株式会社フリーステーション フリーステーション訪問介護事業所(兵庫県)、介護職

在宅の現場で、ヘルパーさんと一緒にやることが多いのですが、なかなか言葉として通じることが少なかったので、今同じ舞台で勉強することで、ヘルパーさんに伝えていけることがもっとあるということがわかりました。

 

宏明さま、医療法人つじ・クリニック(大阪府)、院長
井上 明美さま、医療法人つじ・クリニック つじ訪問看護ステーション(大阪府)、管理者

同じ事業所内で、同じ患者さんを毎日診ていますので、その患者さんに対して同じ方向を向いているということは、医師、看護師、職種を問わず、関わるものとして こういう場で2人が共有の認識を持っていることを確認し合うことは非常に大事なことかと思っています。事業部内のスタッフにも同じように勉強していってほしいなと思っています。

 

受講者の生の声(後日)

あれから4週間。職場に戻って実践していらっしゃるみなさまの今をお聴きしました。

 

杉井健祐さま
医療法人橘会 東住吉森本病院(大阪府)、医療ソーシャルワーカー

丹後ゆかりさま
医療法人橘会 訪問看護ステーションたちばな(大阪府)、看護師 

※受講の動機

私丹後が東住吉森本病院の緩和ケア勉強会に参加し、4年前に緩和ケア研修会に杉井MSWと共に参加、そして緩和ケア病棟が立ち上がって2年が経ちます。日頃から病院・在宅医療・介護が連携し、病院でも在宅でも症状緩和できるようになり、理不尽な苦しみへの支援を行うにはどうすればよいか模索しているときに、協会と出会いました。6月の協会設立記念シンポジウムに参加し、地域の仲間との講座への参加を心待ちにしていました。

 

※講座で得られたこと、現場での実践

杉井)人生の最終段階を支えるための自身の姿勢について捉えなおし整理する貴重な時間になりました。社会的な側面からつなぎ・つながることを得意とするソーシャルワーカーだからこそ、当事者の物語られる「いのち」の中から、苦しみをキャッチし、そして支えを見出し、ともに強めることができる職種であると確信し、自信につなげることができました。これまで見逃してきた当事者の支えの灯を消すことなく受けとめていきたいです。

 

丹後)一部のエキスパートのみでなく関わる全ての人ができる支援、理不尽な苦しみの中にいる人が、それでも生きる意味を見出せる支援。講座で学んだ援助的コミュニケーションを関わる人が共通して実践できたなら、支援者も支援し合えたなら、人生の最終段階のみでなく生きるすべての人への支援に対応できる可能性があると思える内容でした。地域でも研修会を開催したところ、地域多職種のシンポジウムにエンドオブライフ・ケアを取り上げることが決まりました。介護職への講義、市民講座の機会もいただきましたので、講座での学びを実践し伝えていきます。

 

※受講を考える方へ

今回同法人・同地域の仲間と講座に参加できたことで、組織・地域の中で人生の最終段階を支えることができる輪の広がり、支えの強まりを感じています。ぜひ、地域の多職種で参加し地域でエンドオブライフ・ケアの実践を目指しましょう。

 

成田 敏和さま
株式会社共和コーポレーション 関西薬局(大阪府)、薬剤師  

 

 在宅訪問が今後も増え続けて行く中で、患者支援の質を向上するには具体的にどのような事が必要なのか模索していた時、ある学会で小澤先生の講演を聞かせて頂く機会があり、同一法人である訪問看護ステーション・ケアプランセンターの看護師とケアマネージャーとともに3名で今回参加させて頂きました。

 

 養成講座では、ご本人の苦しみや支えをキャッチしどのようにして支援に繋げていくかを学ぶ事ができました。また、たくさんのロールプレイを通して、机上の学びだけではなく実践することにより、難しさやポイントなども具体的に学ぶことが出来ました。

 

 現場では、「反復」や「沈黙」でご本人の話にじっと耳を傾け理解しようと実践しています。ある患者様は本当に豊かな表情でお話しをしてくれる様になりました。本人の苦しみをキャッチする事もひとつの治療法ではないかと実感しています。今後も繰り返し実践し、よりよい支援ができればと考えています。

 

 受講検討中の方へ:本当に分り易い言葉で具体的に学ぶことができました。医療従事者・介護従事者問わず、参加できる内容だと感じました。

 

大塚真美さま
在宅療養支援診療所、医師

 

 現在、在宅療養支援診療所で在宅医として勤務し、多くの看取りを経験してきましたが、人生の最終段階に十分に対応できているのか自信がありませんでした。どのように学習すれば身につくのか考えておりましたところ、偶然にもエンドオブライフ・ケア協会の設立と援助者養成基礎講座の開催を知りました。

 

 実際に講座に参加して、全国から多くの同志が、同じような悩みを抱えていることを知り、悩んでいたのは自分だけではなかったのだと知ることができました。講座では、人生の最終段階における医療について言葉で説明できるように「援助を言葉にすること」を大切に扱っており、今まで正確に言葉を使って説明をできていなかったことに改めて気づきました。この講座を通して大変感銘を受けたフレーズが、「苦しんでいる人は、自分のこと(苦しみ)を理解してくれる人がいるとうれしい」。「相手を理解する」ことと「相手の理解者になること」は異なっており、理解者になるための「聴き方」を学び、参加者と実際にロールプレイしながら学習していくことができました。

 

 受講後は、人生の最終段階にある患者さんかどうかに関わらず、今回学習した「聴き方」を意識して、お話しするように心がけています。そうすることで、いろんなお気持ちを聞くことができるようになりました。

 

 エンドオブライフ・ケアに興味がある、もしくは目の前で苦しんでいる人に何をしてあげたらいいのか分からないと自信がない方、この2日間の受講で参加者と励ましあいながら学習することで、知らない間にステップアップできるので是非参加をお勧めいたします。

 

三輪恭子さま
よどきり医療と介護のまちづくり株式会社(大阪府)、看護師

 

 急性期病院で、人生の最終段階を迎えた患者さんへの退院支援に関わるなかで、療養場所・療養方法についての意思決定支援は、最も重要かつ難しい支援でした。家族の意向や病院側の都合、地域の受け入れ体制に影響されることも多く、「その選択は、本当に本人が希望していることなのか?」とジレンマを感じることがしばしばありました。現在は病院での退院支援からは離れましたが、地域の中でそのような段階の人びとを援助するための能力を養いたいと考え、受講しました。

 

 本講座で学んだことは、援助的コミュニケーションの技術だけではなく、人としての基本的姿勢です。「理解者」になることが相手の喜びにつながること、苦しみを抱えたなかでの相手の「穏やかさ」を意識することなど、小澤先生の豊かな経験と深い洞察から得られた知見を余すところなく伝授してくださり、またロールプレイにより一層学びが深まりました。

 

 これからの現場では、人生の最終段階を迎えた人びとだけではなく、市井に暮らす住民の方々と関わっていくことになりますが、その人から引き出された宝石のような希望の言葉を大切にし、日々の実践を行なっていきたいと思います。

 

 小澤先生より、「本講座は入学式」と仰っていただいたように、受講後の継続的な支援もあり、同じ志や悩みを持った多職種の仲間と交流できるのが魅力です。ぜひ、仲間に入ってください!

 

まとめ

受講後、すぐに地域で勉強会を企画し、開催につなげたというご報告も聞こえてきています。ぜひ、今後も地域で継続的に、仲間と勉強会や振り返りの機会を持っていかれることを願っております。

協会としては2日間の講座を提供して終わりではなく、受講した方がさらに理解を深め、実践し、振り返り、自らと周囲を進化させていく、そんなお手伝いができたらと願っております。

 

次回第4回の開催は、11月14日(土)-15日(日)、東京開催です。多様な参加者のみなさまとお会いできますことを、スタッフ一同楽しみにしております。

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