第75回「エンドオブライフ・ケア援助者養成基礎講座」(福岡)

  • 開催レポート

2020年2月8(土)・9日(日)、福岡でエンドオブライフ・ケア援助者養成基礎講座を開催いたしました。当日は65名の皆さまにご参加いただきました(2日間の受講者、eラーニング+2日目集合研修の受講者、ファシリテーター候補者枠の方を含む)。開催にあたり、運営をご支援くださった地域学習会ファシリテーターならびにファシリテーター候補者のみなさまに心より御礼申し上げます。

 

講座の様子

協会理事であり、横浜で在宅診療を行うめぐみ在宅クリニック院長の小澤 竹俊が、2日間の講師を務めました。


2日間の講座では、以下の要素を学びます。

  • 課題背景(2025年問題に備えて)
  • 人生の最終段階に共通する自然経過
  • 苦しむ人への援助と5つの課題
  • 意思決定支援
  • 自宅・介護施設で求められる症状緩和
  • 多職種連携で「援助」を言葉にする(マクロ)
  • 1対1で対応する(ミクロ)

ただ受け身で聞くのではなく、ロールプレイや事例検討のためのグループワーク、学んだことの振り返りなど、ほとんど休む間もなく、口と手をたくさん動かしていただきました。

懇親会

終了後、半数近くの方が懇親会にご参加くださいました。

受講者の生の声(後日)

受講後、職場に戻って実践していらっしゃるみなさまの声をお聴きしました。

 

内田 直樹さま、医師
医療法人すずらん会たろうクリニック(福岡県)

 私は普段、主に認知症の人を中心とした在宅医療を行っています。他の医療機関と比較すると身体的には軽症な人が多いのですが、在宅医療に携わるようになって5年が経ちお看取りに関わることも増えてきました。苦しむ人への接し方としては、精神科医としての臨床経験で身につけてきたものがあり関わりを躊躇する事はなかったものの、それを他のスタッフに言語化して伝えることの難しさを感じていました。そういった中で、様々な活動を共にする仲間たちやSNSを通じてELCのことを知り、機会があれば講習会を受講したいと考えていましたがタイミングが合わず受講できずにいました。

 今回の講習についても別の予定があり二日目しか参加できないと受講を諦めていたところ、オンライン研修を事前に受ければ二日目のみの参加もできると知人に教えてもらい受講することができました。

 まず、オンライン研修のコンテンツの充実ぶりに驚きました。「苦しんでいる人は自分の苦しみをわかってくれる人がいると嬉しい」を援助的コミュニケーションの基本として、現実と希望のギャップである苦しみを捉え、その人の支えについても把握して、その人の支えを強める関わりについて考えるという援助の全体像が理論だって言語化されていました。そして実際の講習では、実例とユーモアがちりばめられた小澤先生の講義はとても面白く、少人数でのグループワークもとても興味深いもので知識の定着を行うことができてあっという間の一日でした。

 超高齢社会を迎えて10年以上が経ち、年間の死亡者数は増え続けています。これまで死に関わる事が少なかった介護職の方も死に関わることが増えていくことは確実な中で、ELCの知識はそのガイドとして大変有用なものであると確信しています。当院のスタッフも連れてまた参加したいと思います。

 

松尾 郁枝さま、医師
医療法人杏仁会 松尾内科病院(広島県)

 今、私たちの周りで「人生会議」という言葉が飛び交うようになり、アドバンス・ケア・プランニングの普及促進に向けて社会が大きく動き始めています。昨年、私は小児科から内科に身を置く立場となり、小児と成人の違いに戸惑いを感じながら、その中で変わらないものは何かを探し求めて過ごしていました。そんな折にELCもみじ(広島)の第1回地域学習会の案内をいただき、久保田千代美先生の講演会をきっかけに早速、ELC援助者養成基礎講座の受講を決めました。

 養成講座では人生の最終段階にある人を前に、私は、私たちは、どのように関わっていくことができるのかを医療職・介護職と多職種でグループワークなどを通して取り組みました。2日間の中で「知識を得る」だけではなく「経験する」ことで、客観的・主観的に多くの視点から物事を捉え、系統立てることで共通認識を持ち、同じ志を持ってそれぞれが行動できることの素晴らしさを知りました。同時に医療・介護の垣根のない多職種連携の基盤強化は、多死社会を迎えるこの日本で援助者側にとっても重要なことなのだと実感しています。

 ところで、道がつく日本の習い事はその精神こそが生涯に渡る修行であり、相手を思い遣る心なのだと教えられたことがあります。研修を終了し、このエンドオブライフ・ケアも私にとって仲間と共に歩む終わりのない道となったようです。

 最後にこの講座では、小澤先生から数々の名曲も紹介されます。私にとっては、子どもたちと口ずさんだ「アンパンマンのマーチ」や学童期に手話で交流した「切手のないおくりもの」が心の一曲なのですが、新たな引き出しに入ったこれらのメロディーは、困難なときに心を震わせる勇気の糧として再生されることと思います。

 医療・介護に携わっていらっしゃる方々や大切な人を支えたいと願う方々が、ご自身の支えも含めこのELC援助者養成講座に参加されることで、共に生きるということの素晴らしさを肌で感じて頂けることと確信しております。

 

荒木 弘さま、薬剤師 (福岡県)

 小澤竹俊先生とは、昨年の緩和医療学会のポスター発表の場で知り合い熱い思いを伺いました。私は、多重がんの経験者で、家内をがんで亡くした遺族、そして外来がん治療認定薬剤師として病院に勤務しています。がんになり生まれて初めて深く精神的に追い詰められ、この苦しみは経験者にしか分からないと思っていました。そんな私に小澤先生は声を掛けてくださいました。患者さんに「話を聞いて貰える存在と認識してもらえば良いのだと!」私の固定観念が音を立てて崩れました。

 講義の中で、多くのワークがありました。難しい問いかけにも小澤先生の解説を聞きながら楽しく時間が過ぎ、グループ内に仲間意識ができて講演会が終わるころには「苦手意識は食わず嫌い」そんなイメージとなりました。今までの私は、分かったふりをして患者さんと向き合うばかりだったと反省しました。患者さんと同じ目線で思いを引き出してあげるお手伝いをする素晴らしい手法を学ぶことができました。

 今現在、私は現場を離れており受講後に患者さんとは接していませんが、難しい局面に接しても前向きに声掛けができるのではないかと考えています。

 命の灯が薄れると、落ち込んで前向きになれなかったり、自暴自棄になったりと、誰もが冷静ではおれません。そんな方にどのような声掛けができるのか?誰もが悩むテーマです。一緒に考えてみる機会になると思います。

 私は、患者さんらしい最期を迎えること、そして見守る家族が心残りなく送れる環境を整えるにはどうすればよいかと自問自答しています。そのまず一歩が今回の講習と思います。

 

松田 陽子さま、看護師
訪問看護ステーションやまびこ(福岡県)

 私が初めてELC養成講座に参加したのは2019年6月開催の福岡養成講座でした。

 当時、療養型病院へ勤務していました。私の受け持ち患者様が誤嚥性肺炎にて全身状態が悪化され、抗生剤、昇圧剤投与にて全身状態が改善してきた頃に奥様へ「もしもの時には〇〇して欲しい等のご希望はありますか?」と尋ねたところ次女様より「なぜ、今このタイミングでそんな事を聞くのですか?」と激しく責められました。
 自分なりに患者様の状態を考え看護をしてきたつもりでしたが、言葉かけ一つで本人、家族の信頼関係が失われてしまう…看取りへの言葉かけのタイミングが難しいものだと改めて痛感いたしました。

 人生の最終段階に対応できるよう、関わり方を学びたいと思い受講いたしました。
 援助的コミュニケーションの基本を学び、何度もロールプレイングを行い頭がカチカチになりながらも、小澤先生の声のトーン、話すスピード、人を惹きつける話術に大変感動し、あっという間の2日間でした。
 養成講座の最後に「誰かの支えになろうとする人こそ一番支えを必要としています」と聞き衝撃を受けました。
 実はその当時、私の思う看護師像と職場の看護のあり方がかけ離れている事に違和感を覚えながら働いていたので「はっ」となりました。
 「残りの看護師としての人生を悔いのないものにしたい」との思いが強くなり転職し現在は訪問看護師として働いています。時間の制限はありますが、利用者様と一対一で向き合いながら看護できることに「看護師になって良かった」とやりがいを感じながら働いています。

 利用者様の中には末期癌の方、ALSの方等、様々な病気の方がおられ人生の最終段階の関わりが密になりました。
 訪問する度に「もう死んだ方がまし、早く死にたい」との言葉を言われる方がおられ反復、沈黙、問いかけをする自信がなくなりました。

 「もう一度、小澤先生の講義を受けたい」と思い受講いたしました。
 小澤先生の声のトーン、話すスピード、人を惹き付ける話術に私のしぼみかけていた気持ちがまた膨らみました。また、グループワークで一緒になった方達の貴重なお話を聞く事ができ、養成講座に参加して良かった!と改めて思いました。

 現場では「声のトーン、話すスピード、表情、聞く態度」を意識しながら反復、沈黙、問いかけを行っています。迷った時「このような場合、小澤先生ならどのように答えられるだろうか?」と考え一呼吸置いています。残念ながらまだ利用者様の「そうなんです」との声を聞くことができていませんが、相手の「苦しみをキャッチ」「支えをキャッチ」し「援助を言葉」にし、私自身も様々な困難に向き合える、そんな人間に成長していけたらと思っています。

・受講検討中の方へのおすすめのポイント
「相手の気持ちに寄り添う」「信頼関係を築く」言葉にすることは簡単ですがどのように接すれば気持ちに寄り添えるのか?信頼関係を築くことができるのか?援助的コミュニケーションとは?お悩みの方は受講されて「援助を言葉に」できるように是非、習得されてください。

 

 

まとめ

九州山口地域では認定ファシリテーターのみなさまにより、山口、糸島唐津、福岡、北九州、宗像、長崎、波佐見、大分、熊本、鹿児島、喜入、奄美などで継続的な学習会が実施され、認定ファシリテーターも増えつつあります。ご関心のある方はぜひ繋がり、学び続けていかれますように応援しております。

協会としては2日間の講座を提供して終わりではなく、受講した方がさらに理解を深め、実践し、振り返り、自らと周囲を進化させていく、そんなお手伝いができたらと願っております。

次回は、2月15日(土)-16日(日)、仙台開催をレポートいたします。

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