2020年2月15(土)・16日(日)、仙台でエンドオブライフ・ケア援助者養成基礎講座を開催いたしました。当日は45名の皆さまにご参加いただきました(2日間の受講者、eラーニング+2日目集合研修の受講者、ファシリテーター候補者枠の方を含む)。開催にあたり、運営をご支援くださった地域学習会ファシリテーターならびにファシリテーター候補者のみなさまに心より御礼申し上げます。
協会理事であり、横浜で在宅診療を行うめぐみ在宅クリニック院長の小澤 竹俊が、2日間の講師を務めました。
2日間の講座では、以下の要素を学びます。
ただ受け身で聞くのではなく、ロールプレイや事例検討のためのグループワーク、学んだことの振り返りなど、ほとんど休む間もなく、口と手をたくさん動かしていただきました。
終了後、半数近くの方が懇親会にご参加くださいました。
受講後、職場に戻って実践していらっしゃるみなさまの声をお聴きしました。
山崎あいさま、ソーシャルワーカー
福島県立医科大学附属病院 患者サポートセンター(福島県)
小澤竹俊先生には当院にて何度もご講演をいただいており、その度に心動かされる学びが多くありました。また、すでに受講した先輩方、同僚から講座の様子を聞いていたこともあり、もっと深く学ぶためにもエンドオブライフ・ケア援助者養成基礎講座を受講したいと常々考えておりました。
今回、終末期の患者様との関わり方に非常に悩んだタイミングで、仙台での開講予定を知り、すぐに受講を決めました。
2日間の中で、人生の最終段階を迎えた人と関わるためにはどのような私たちであればよいか、苦しむ人とその家族、その人たちを支えようとする人を支援することについて徹底的に学びました。具体的なテクニックを先生の講義と実演で学び、ロールプレイで即実践します。患者側も経験するので、沈黙の心地よさを発見したり気持ちの揺らぎを実感したりすることもできました。
受講後、反復・沈黙・問いかけを実践しています。まだまだ理想通りにはできませんが、患者様やご家族からの返答に手ごたえを感じられる場面も出てきました。ステップアップしていけるよう、これからも学び続けていきたいと思います。
2日間、心身ともにハードな研修になりますが、それ以上に得るものがあるのは間違いありません。一緒に頑張る仲間が増えることを祈っています。
岸田真人さま、看護師
フォーレスト訪問看護ステーション(宮城県)
養成講座は、自分が訪問看護を始める時、既に訪問看護で様々な取り組みをされている方たちを調べている際に知りました。僕自身、医療機関で働く中で緩和ケアや人生の最終段階にある人への支援をもっと深く学びたいと思い、いずれは地域で暮らされている方々の手助けや支援することに関わりたいと考えていました。
養成講座では、様々な職種や色々な人生の体験をしてきた方とお話したり、一緒にロールプレイングをする機会があります。〈専門職種だから〉といった知識的なことも大事ですが、今までの自分の人生観のようなものが特に大切だなと感じました。実践的なところで特に印象に残ったのは、人生の最終段階にいる方と接する際に『苦痛を捉え、その方の支えを強める関わり』をすることでした。説明されると『なるほど!』と思えるのですが、いざ実践となると中々うまく出来ませんでした。頭の中では理解しているのですが、話されていたほうはちぐはぐだったに違いありません。しかし、何回かロールプレイングをすることで一連の流れができる瞬間があり、『なるほど!』と再び気づかされることがありました。
養成講座後に、ある悪性リンパ腫の方とコミュニケーションする機会がありました。その方からスピリチュアルペインの訴えがあった際、その方の『支え』についての話題を掘り下げることができました。もちろん話はちぐはぐでしたし、うまく引き出せていなかったと思いますが、今まであったコミュニケーションの苦手意識より、『支えを強めたい』という気持ちのほうが出ていたように思います。これからも少しずつ実践していこうと思います。
少しでもこの養成講座が気になり、自分の中で変化したい、何か学びを持ち帰りたいと考えている方には、きっと学びの多い講座になると思います。また、小澤先生のキャラクター、饒舌さを堪能するのもひとつの楽しみだと思います。講座中は余裕がなかったですが…笑
谷地千明さま、管理薬剤師・課長補佐
ラッキーバッグ株式会社 はやせ薬局(岩手県)
・養成講座参加動機
私は医師の訪問診療に同行して在宅業務を行っている薬剤師です。慢性疾患で自宅療養されている方、がん末期で自宅療養を希望された方、それぞれに終末は訪れます。死期が近づいた患者様に対して、かけられる言葉がない、死の話から遠ざかりたいと思っていた私がいました。訪問診療医が私に言いました「在宅は医師一人では難しい、同じ考えの持てる仲間がいれば任せられるしもっと強くなれるし患者の穏やかな最期の支えになれる」と。仲間になろうと動かされたのがきっかけです。
・養成講座で得られたこと
死の話から遠ざかりたい、重い話に苦しくて感情が揺さぶられるのが嫌だった私が、その方の希望、尊厳、未来へ託す思いをその方の大切な人と受け止められれば、必ずしも死は不幸ではなく温かい思いとして心に漂ってくれるものであると肯定できました。また支えている人が一番支えを必要としている人であることは重要なことでした。
・現場で実践していること
相手の気持ちを別の表現に言い換えないでそのまま反復すること。
言葉を探している「間」を邪魔しないこと。
数年前に子宮がんで娘を亡くし、肺がんで夫を亡くした女性が私に言いました。「娘の看取りのときは亡きあと無力感で抜け出すのにとても時間がかかった。でも今回夫のときは別でした。信頼できるスタッフさんたちが気持ちと声をかけてくれた、私もやり切った感があり悔やむことはありません。」
・おすすめポイント
仕事だけでなく、自分の生活でもすぐに実践できる講座です。相手が自分の気持ちを分かってくれると感じられる話ができるようになります。
講座は老若男女、同じ熱さで仲間になれます。
仙台開催は、昨年9月に行われた第68回に続いて9回目の開催でした。東北でもELCファシリテーターが増えつつあり、ELC福島、ELCきたかみ、ELCひとめぼれ、ELC会津による地域学習会が開催されています。今後も継続的な学習機会が広がっていくことを期待しています。
協会としては2日間の講座を提供して終わりではなく、受講した方がさらに理解を深め、実践し、振り返り、自らと周囲を進化させていく、そんなお手伝いができたらと願っております。
© End-of-Life Care Association of Japan