2020年11月、平日夜4回にわたり「エンドオブライフ・ケア援助者養成基礎講座」を開催いたしました。これまで5年間100回にわたり、土日の昼間に開催を続けて参りましたが、オンライン開催とすることで、平日夜4回にわけて、北海道や沖縄県からもお仕事の後にご参加いただくことができるようになりました。講師は奈良県から、理事の久保田千代美が担当いたしました。
受講者の生の声(開催直後)
・毎回「苦しむ人への援助と5つの課題(全体像)」を繰り返して説明していただくことで、その日の学びの内容だけでなく前回の学びを思い起こすことにつながり、理解が深まった
・平日夜間コースができて参加しやすかった
・4週に分けてのオンライン講座は、その間に実践を繰り返すので、より学びも体験も深められると思いました。
・オンラインでなければこの貴重な機会に巡り合わなかったです。
・わかったつもりになり話を聞かなくなるため常に繰り返しの学習は必要だと思います。
・オンラインでも、これだけ実りの多いコミニュケーションになったのは、ファシリテーターさんのお力によるところが大きいと思いました。
受講後、職場に戻って実践していらっしゃるみなさまの声をお聴きしました。
針原恵美さま、看護師
ネリヤ訪問ステーション(鹿児島県)
訪問看護師として、在宅に訪問させていただくなかで、難病と診断された方や人生の最終段階にあり解決できない苦しみを抱えている方と出逢ってきました。「こんなに苦しいなら、殺してほしい。」「苦しい。」「助けて。」と、涙ながらに話されることもありました。私は聴くことしかできず、一緒に涙を流し、自分も苦しみを感じる日々でした。こんな自分に何ができるのだろう…と悩んでいるときに、協会の方からELC養成基礎講座を勧めて頂き、受講させていただきました。
養成講座で得られたことは、何もできない自分であることを認めてよいこと。何もできない自分だから、【苦しんでいる人は分かってくれる人がいると嬉しい。】分かってくれる人…になるために、【反復・沈黙】を繰り返す。苦しんでいる人が苦しみから支えに気付くことができるように、【問いかけ】が重要であることを知りました。問いかけをすることで、本人が苦しみの中にあっても支えに気づき、支えを言葉にすることで、その方自身が生きていく希望や穏やかになれることを感じることができることを知りました。
受講後は、訪問先の方やご家族に、優しく落ち着いた心で「今いちばん気になることは何ですか?」と問いかけ、相手の気持ちを心で聴きながら【反復・沈黙・問いかけ】を実践しています。そして、苦しみ・支えを丁寧に言葉にして返し、その方やご家族の方が、苦しみと支えを「そう。そう。」と、ご自身で気づくことができるように心がけています。
【反復・沈黙・問いかけ】を実践する中で、無口な男性が「故郷の海岸を見に行きたい。」と望みを話されたり、90歳代の寝たきりの女性が、「足が動かない。自分の足で歩きたい。」と、考えてもいなかった苦しみと望みを話されたり、ALSの方が、「病気になって苦しい想いもしているけど、病気になって気づいたこともあるよ。子供たちと妻が支えです…。」と、ご自分の苦しみと支えを話してくださいました。また、援助を言葉にする場面では、「家で過ごしたい…。お母さんが望まれていることを、ご家族で叶えることができていますね。」と、丁寧に言葉で伝えることで、その後の訪問から朗らかで和やかな雰囲気になった家もありました。
このような経験を重ねるごとに、何もできない自分に苦しんでいた私から、何もできない自分でも、【苦しんでいる人はわかってくれる人がいると嬉しい】と感じてもらえる自分になり、苦しんでいる人の支えを強める支援を本人・ご家族を含むチームで実践していこうと思う私に変わった気がします。
受講検討中の方へのおすすめポイントは、同じような志しを持たれた方とロールプレイを実施し、患者体験をすることができることです。実際に患者になることで、苦しんでいる人にとって【反復・沈黙・問いかけ】で聴いてくれる援助者が、【苦しんでいる人はわかってくれる人がいると嬉しい】ということが、身をもって感じることができます。
富名腰朝史さま(沖縄県)
私は総合診療医で地方の診療所で働いています。この記事を読んでいる方の中に医師・研修医の方がいましたら、ぜひ読み飛ばさず御一読いただければと思います。
私の参加のきっかけはある勉強会でした。お世話になった先生のweb勉強会でELCの紹介があり、「支える側にも、レジリエンスや支えは必要だよ」という言葉に揺さぶられ、養成講座を受講することにしました。
養成講座は医療職のみならず、全ての人に自信を持ってもらうための講座で、とても実践的なプログラムになっています。しかし逆説的に言うと、医療職である医師にこそ、この講座がより「役に立つ」と感じました。我々医師は(自戒を込めて言いますが)、診断するための話の聴き方は得意な傾向にある一方、治療的な話の聴き方は苦手な傾向にあります。診断的であると同時に治療的なコミュニケーションを学べたことが、養成講座での私の一番の収穫でした。
実際に現場でどう実践しているか。私の職場では現在、人生の最終段階にある方との関わりがほぼありませんが、上記に書いたように様々な場面でこの「役に立つ」を実感しています。「90歳までどうにか一人暮らしだったけど、歩けなくなった」「高齢夫婦だったけど、夫が入院してしまった」など、答えのない問いや苦しみにぶつかることが多々あります。そんな時、それぞれの人が穏やかになれる手がかりはどこにあるのかな、という視点に切り替え、落ち着いて対応できるようになったと感じます。
受講の前後で自分の中で大きく変わったことは、「支える側の支え」についての考えです。うすうす大事だよなーと感じていた援助する側の支えが「なぜ大事か」「どう強めるか」をクリアカットに整理することができました。
受講検討中の方へおすすめのポイントをあげるとすると、やはり一番は「現場の様々な場面で実践できる幅の広さ」ではないかと思います。人生の最終段階にある方と関わることは少ない、と思っている医師や研修医にも、上記に述べたとおり必ず「役に立つ」講座だと思っています。もしかしたら自分自身の助けにもなるかもしれません。不確実性の高い、厳しい現場で働く方にこそ、この講座を受講してもらいたいと思います。
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平日夜4回コースは、ご好評につき3月にも開催を決定いたしました。
今回ご参加が難しかったみなさま、土日のお休みが難しいみなさま、ご参加をお待ちしております。
●今後の研修・イベント開催予定
○エンドオブライフ・ケア援助者養成基礎講座
※初回受講の方は、事前にeラーニングの受講が必要となります。
1)休日昼2回コース(講師:小澤 竹俊)
2021年1月30日(土)31日(日)13:00-17:30
https://endoflifecare.or.jp/programs/show/8830
2)平日夜4回コース(講師:久保田 千代美)
2021年3月18・25・4月1日・8日(木曜)
https://endoflifecare.or.jp/programs/show/8840
○新型コロナ・ショックに備えて最強のチームを作ろう
ゲスト:
2021年2月16日(火)18:30~20:30
https://4cteams-10.peatix.com/
○地域学習会
(認定ファシリテーターによる各地域での学習会)
https://endoflifecare.or.jp/study-groups/
○折れない心を育てる いのちの授業
~オンライン~ Vol.6 差別、偏見、いじめ・・・コロナ禍で優しくなれないあなたへ伝えるいのちの授業
2021年2月20日(土)14:00-16:00
https://okproject6.peatix.com/
○その他オンラインでの学習機会
https://endoflifecare.or.jp/posts/show/8832
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