鹿児島市喜入町で診療所院長の傍ら、地元の小学校の学校医として2年目の全校学年別授業実施に取り組んだ、協会理事でいのちの授業認定講師の濵田努からの実践報告です。
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今年で2年目となる、「いのちの授業」全学年、学年別開催。
2週間かけて、全校生徒に行いました。
(1枚目の写真は私の娘が授業してます☺️)
年間通して引き続き行うことにどのような効果があったのか、講師視点からまとめてみます。
●開催概要:入学して間もない1年生から、卒業を控える6年生まで全学年に対して、4月に「いのち」を感じてもらう・考えてもらう時間を作ること。エンドオブライフ・ケア協会の「いのちの授業」をもとに、「いのちは大事」という概念論ではなく具体的に自分のいのちをまもる方法や、相手を援助する方法を学ぶ。単発授業とならないよう、担任の先生方と協力してその後も継続した学びとする。
●学年別内容:
(1-2年)いのちを感じる
聴診器を用いて実際に心臓の鼓動を聴く体験を通じて「いのちは見えないけど、そこにあることを感じる」機会を作る。さらに友達の心臓の音を聴くことで、同じいのちが相手にもあることを考える時間を作る。また、見えないいのちを傷つけるのはどんな言葉だろうか?逆にいのちを守る言葉はどんな言葉だろう?と問いかけることで、「使ってはいけない言葉」の理由を伝える。今後担任の先生が学級でも同様に継続した指導を行っていただけるよう、事前に打ち合わせを毎回行っている。
(3-4年)苦しみと、支え
新型コロナ禍となり、解決のできない苦しみが多い時代となってもそれを口に出しにくいことがある。3年生ではまずは自分の苦しみに気づくこと。そして相手の苦しみに気づく感性を持ってもらうことを目的として「苦しみの構造」を中心に話を進めた。独自にストーリーを作成(1:コロナ禍で苦しむ子供版、2:友達が引っ越す版)し、伝えることは同じであっても、子どもたちに飽きさせないように工夫をおこなっている。4年生では支えを中心に、苦しみの中にあるからこそ見える支えについて、こちらで決めつけないように工夫をしながら伝えた。
(5-6年)苦しむ人を援助する
苦しみの構造や、支えについて理解を促したのち援助的コミュニケーションを中心とした援助方法について、ロールプレイやデモンストレーションなどを利用し伝えた。
ここでは特に担任の先生にできる限りデモンストレーションに関わっていただくようにした。これにより「子どもからのSOSが出たときに、すぐ励ましやアドバイスではなく、まず「聴く」こと」というメッセージを子どもたちの前で伝えることができる効果があると考えている。中学生になるのを控えた6年生ではさらに1−2月に再度いのちの授業を行い復習を行いつつ、自尊感情(基本的自尊感情と社会的自尊感情)について学ぶ機会を作成した。
●継続した学びの効果:
3年前から当校にていのちの授業を6年生におこなってきたが、単発で行うことでその後の経過を追うことができなかった。しかし、昨年に引き続き全学年開催、また2学年にわたり同じ内容を学びつつステップアップするいのちの授業の構造を用いることで、学校全体でいのちの授業を「共通言語化」することができることを実感した。
(子どもたちのケンカなどがあっても「お互いの希望はどこにあるんだろう?」と先生が仲介に入ってもらうこともあるとのこと。授業に参加していただいた先生方が、積極的に言語化してくれることが最も浸透しやすいと感じる)
●今後のいのちの授業:
喜入では、いのちの授業を1−6年生だけでなく中学2年生でも開催している。中学生では「がん教育といのちの授業」のタイトルで、がんを患うお母さんに対してどのように関わっていくのか、を通じてがんの知識と共に自らの支えと対人援助についても再度学ぶ機会となっている。「いのちが大切であること」を伝えるのではなくいのちをどのようにして大切にするのかを学ぶこと。今後も、本当に苦しんている人へ伝えることができるようにしていきたい。
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