【講座】オンライン開催「第77回 エンドオブライフ・ケア援助者養成基礎講座」(7/25-26)

  • 開催レポート

 2月中旬から開催を見合わせて参りました、エンドオブライフ・ケア援助者養成基礎講座を、2020年7月25日(土)・26日(日)にオンラインで初開催いたしました。

 主催する公開講座としては通算77回目、各地の職能団体等が主催となるインハウス研修を含めると、95回目の開催となります。
 はじめてご参加の方や、今後ファシリテーターとなって学習会を開催していきたい再受講の方など含めて、44名の方にご参加いただきました。

講座の構成

 主に知識部分については開催日までに動画を視聴いただき、当日は演習を中心にWeb会議室「Zoom」で学んでいただけるようになっています。

 動画とオンラインを通して、以下の要素を学びます。

・課題背景(2025年問題に備えて)

  1. ・人生の最終段階に共通する自然経過
  2. ・苦しむ人への援助と5つの課題
  3. ・意思決定支援
  4. ・自宅・介護施設で求められる症状緩和
  5. ・多職種連携で「援助」を言葉にする(マクロ)
  6. ・1対1で対応する(ミクロ)

 ロールプレイや事例検討のためのグループワークなど、小グループにわかれて、ファシリテーターとともに、じっくりと学んでいただきました。

 

受講者の生の声(後日)

受講後、職場に戻って実践していらっしゃるみなさまの声をお聴きしました。

大塚雅春さま、介護支援専門員
エバーグリーンツルガヤ(宮城県)

 ケアマネジャーとして、患者様や利用者様本人から「こんな体になって苦しむことになるなら、早く死にたい、死なせてほしい」と死に対しての思いを告げられた私は、励ましや説明は無意味と思いながら、どのように答えればいいのか、わかりませんでした。死を前にした人に何もできない無力さを感じていました。何か自分にもできることはあるのではと模索する毎日が続いて、相談しても答えは見つかりませんでした。

 二〇二〇年二月十四日、宮城県名取市で開催された市民講座に、小澤先生が、一人の少年の心の苦しみを、かかわり方を変えただけで、少年の笑顔へと変わる事例を動画やパワーポイントなど、分かりやすく楽しく御講義して下さった内容が、スーと私の胸の中にどんどん入って、感動して涙が止まりませんでした。それが養成講座を受けてみようと思ったことがきっかけです。

 援助者養成講座を受講して、死を前にした人にできる援助を分かりやすく言葉にして噛み砕いて飲み込むことができるようになり、よかったと思っています。苦しみとは何か、苦しんでいる人は何をしてほしいのか、援助者は視点に注意して、どのようにかかわればいいのかを学び、得ることができてよかったです。

 受講後、現場へ戻り、私が担当している百歳の女性のターミナルの方は、娘さんを亡くされて、「早く死にたい」と口々に話していました。受講後から私は言葉のスピードや間合いなど注意してかかわり始めて二週間ほどして、死にたいと口にしなくなり、「イチゴが食べたい」と穏やかに苺を口にするようになりました。私は正直驚いています。

 私自身、死を前にした人に無力さを感じることは無くなりました。患者さんを理解しようとするのではなく、患者さんやその家族にとって、私自身が理解してくれる人に一歩近づけたと感じるからです。

 現在、受講を検討している方がいれば、ぜひ一緒に学びましょう。目の前に苦しんでいる人の力になれる援助をわかりやすく言葉で整理できます。

 

高橋睦美さま、看護師
社会福祉法人栄興会 特別養護老人ホーム和楽園(千葉県)

 私は急性期看護から介護老人保健施設を経て、現在特別養護老人ホームで認知症看護認定看護師として勤務しております。以前より認知症の方のACPに興味がありました。せっかく本人も含めて方向性を決めることができても、最期の時間を一緒に過ごし、支えていくために必要な具体的方法がわからず、個としてもチームとしてもジレンマを抱えておりました。

 そんな中ELCを知りました。コロナ禍中、勤務施設では外部集合研修参加に対し制限がありました。今回、自分のタイミングでeラーニングによる学習が可能であること。ZOOMによる実践が学べることから参加させていただきました。eラーニングの小澤先生の説明はとてもわかりやすく、なにより1コマが短いので何度も繰り返し聴講することができました。そしてZOOMでの実践においても、無駄のないファシリテーションにより様々な意見が聞けました。またとても話しやすい環境であり、楽しくグループディスカッションできました。

 受講前の私は、死を前にした人に何かできないか、何かしてあげたいと考えていました。そして今抱えている問題をなんとか解決できないかと考える事が多かったのです。しかし受講したことで、私は根本的に間違った考え方をしていたと気付きました。受講後は支えや苦しみは何なのかに目を向け、聞く・反復・沈黙・問いかけをひたすら繰り返し、今はわかってくれる人になるための技術を磨いております。

 この技術は身近な人の死を前にしたご家族にも有用ですが、認知症の人とのコミュニケーションにも有用だと感じております。反復は今までも使用していました。しかし反復の次にくる会話の手段が見つけられず、反復だけを繰り返す会話になっておりました。しかし受講後からは反復・沈黙・問いかけにより会話が可能になる場面も見え始めています。認知症の人の場合、会話からの情報はとても少ないです。しかし何度も繰り返すことで、苦しみや支えを見つけだし、少しでも穏やかに生きられる時間やほっこりする瞬間を積み重ねていきたいと思っております。

 

板谷真紀子さま、看護師
医療法人恵泉会 せせらぎ病院(群馬県)

 私は、長年、透析患者さんに関わってきた看護師です。時に患者さんから、「お先真っ暗、なんにもない。」などといわれ、私は、内心、オロオロします。このような場面ではよく「患者さんを理解する」「患者さんに寄り添う」といいますが「理解ってできる?」「寄り添うとはどういうこと?」とモヤモヤしていました。また、ディグニティセラピーについて学びたいと思っていた矢先、辿り着いたのがこの講座でした。受講したことで私が得たことは、相手を理解しようとすることは大切だが、完全に理解することはできない、相手が私のことを“苦しみをわかってくれる人”だと思うことは可能性として残ること、“苦しみをわかってくれる人”になるための具体的なコミュニケーションです。私のモヤモヤがスッキリしました。

 受講後すぐ、気力を失い食事が摂れなくなってきている患者さんを担当しました。自分のことが自分で出来ないようになってきており、特に排泄について気にしている様子でした。そこで、学んだ反復を使い話を聴きました。構音障害で聞き取れないこともありましたが、時間をかけて丁寧に反復することで「そう、そう!」という反応があり、無気力に横になっていた患者さんが身体を起こしました。そして、話の最後に、排泄については安心して私たちに任せてほしいことを伝えました。それからというもの、排泄時にはナースコールで「出るよ、出たよ。」と教えてくれます。車いすに座り食事も自分でモリモリ摂取している今日この頃です。

 受講後、前述のような体験をしたことで、患者さんへの接し方に少し自信が持てたことは私の心を強くしてくれています。臨床に戻ってすぐに実践でき、患者さんから嬉しい反応が返ってきた体験ができたのは、はじめてのことでした。

 研修は、小澤先生のお話がとてもわかりやすく、ファシリテーターのみなさんが、苦手なロールプレイの時にしっかりサポートしてくださるので安心して学ぶことができました。私は、自分の体験から、この講座で学ぶことで、援助を受ける側はもちろん援助する側、多くの方が救われると思いました。多くの方にこの講座を受講してほしいと思い、まずは職場でお勧めしています。

 

水谷紀子さま、ソーシャルワーカー
神奈川県社会福祉士会(神奈川県)

・養成講座参加の動機
 成年後見人という仕事をする中で、認知症があり、財産行為や法律行為についての判断能力が低下している方でも、ご自身が自分でなくなる感覚や、思うようにならない事柄があり、混乱や怒り、困惑でどうすることもできない気持ちをしぐさや態度でも表してくださる場面に出会います。その気持ちや想いを汲み取ることについて、より深く学びたいと思い参加しました。

・養成講座で得られたこと
 傾聴から一歩進んだ、「聴いてくれる」+「わかってくれる」ことについて理解が深まりました。特に、オンラインでのグループワークでは、広い会場で周囲を気にしつつのワークにはない利点がありました。役に入り込むことが容易で、応答が深まりました。また観察時も会場よりもやり取りが見聞きしやすく、振り返りの際の意見交換やファシリテーターの方からのフィードバックを、より細かく受けられました。自身の取り組みが画面を通して見えることで、自分の口調や姿勢の癖がよくわかりました。

・受講後に現場で実践していること
 自分が聞きたいことを質問するのではなく、とにかく相手の話を「聴き」、「反復」して「問いかけ」ることを心がけています。聞かねばと気負わず、落ち着いた態度でいられることで、相手が事柄ではなく気持ちを話しやすくおられると感じます。

・受講前後でご自身が変わったと感じたこと
 間を取れるようになり、沈黙を苦と感じずにいられるようになりました。
 逃げたいと思わずに、その場に居られるようになりました。
 「聴く」ことについて、自身でも伝えられるようになりたいと思います。

・受講検討中の方へのおすすめのポイント
 技術を学ぶというより、自分の在りように気付く講座です。
 人生の最終段階だけでなく、援助の様々な場面で、そして自分自身の生活の中で、聴くことと聴いてもらうことの意味と支えについて理解する第一歩となります。

 

塩谷菜穂子さま、看護師
訪問看護ステーション(群馬県)

 「なんで私、ガンになっちゃったの?毎年健診もきちんと受けていたのに・・・なんで私、もう死ななくちゃいけないの?なにも悪いことしてないのに・・・。」20数年前、胃がんで末期状態にあった姑がポツリと言いました。そのとき、私はどんな言葉をかけたのか覚えていませんが、恐らくうわべだけの励ましとか、気休めだの類だったのだと確信しています。なぜなら、姑の残念そうな、あきらめたような、寂しい表情と、私の中の「逃げ出したい」という感情が胸の奥に刻まれているからです。

 あれから時がたちましたが、死を前にした人とのかかわりは不安で苦手でした。そのような中、ELCを知り2018年5月に初めて講座に参加しました。講座の熱も冷めやらぬ翌日に早速「反復と沈黙」を試してみたところ、「そうだよ。よくわかるね・・・」と利用者さん。「やったー!!」思わず、私は心の中でガッツポーズと共に鳥肌が立ったことを覚えています。なぜなら、その利用者さんはなんとなくいつもしっくりこない、苦手な利用者さんだったからです。そして、その時になって初めて彼の話を「聴いていなかった」こと、彼にとって「わかってくれる人」になっていなかったことを知り、恥ずかしい思いになりました。

 あれから2年。まだまだ「かかわる自信」はありませんが、講座での小澤先生の言葉「現場が先生。」を胸に勇気をもって日々業務にあたっています。しかし、苦しむ人を支えるにはもっと仲間が必要。職場にも地域にも支えあえる仲間を増やしたい!でも、このご時世にどうすればいいのかわからない。モヤモヤした気持ちを抱えながら今回の初オンライン講座に参加しました。初めはZoomの使い方に戸惑いましたが、グループが少人数になりその分ファシリテーターのサポートもさらに手厚くなっており、リアル講座と変わらぬ体験ができました。さらに延期、中止となった講座がこのような形で実現できたことは、むしろ地方在住者にとっては交通費や時間的な負担が軽くなりメリットもありました。この機会に仲間をもっと増やそう!きっとできる!そんなパワーをもらえた2日間でした。

 

まとめ

 オンライン開催だからこそ、時間や距離の制約を越えて参加機会が広がったという方が何名もいらっしゃったり、また、全国の認定ELCファシリテーターにサポートに入っていただいたことで、小グループに分かれてのロールプレイや事例検討がより集中しやすく視点の広がりや深まりを実感できたというお声が多くありました。

 新型コロナウイルスの影響が長期化するなか、病で苦しむ人や、支える医療・介護の専門職だけではなく、その家族や、仕事に影響が生じている人たちなど、様々な人が解決が困難な苦しみを抱えていて、そのような状況において、私たち一人ひとりに何ができるかを、みなさまと引き続き考え、実践していきたいと思います。

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◆今後の研修・イベント開催予定

○エンドオブライフ・ケア援助者養成基礎講座(オンライン)
8月29日(土)30日(日)13:00-17:30
※初回受講の方は、事前にeラーニングの受講が必要となります。
https://endoflifecare.or.jp/pages/program-overview

○新型コロナ・ショックに備えて最強のチームを作ろう
 ~Vol.5 なぜ人は、大切な人を失うと悲しい気持ちになるのでしょう?~
2020年8月18日(火)18:30~20:30
https://4cteams-5.peatix.com/

○親子で参加したい!!「こころの表現授業」
聴いて・書いて・話して・動いて ー モヤモヤの正体を発見しよう ー
第3回 医療デザイン大学LIVE
2020年8月8日(土)13:30~17:00(13:15接続開始)
https://mdu-live-200808.peatix.com/

○その他オンラインでの学習機会
https://endoflifecare.or.jp/posts/show/8832

 

 

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