【イベント】設立8周年『ユニバーサル・ホスピスマインドをすべての人生のそばに ~「半径5mの人を幸せに」を社会実装する』開催レポート

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 2023年4月15日(土)、エンドオブライフ・ケア協会設立8周年を機に横浜会場とオンラインのハイブリット形式でシンポジウム『ユニバーサル・ホスピスマインドをすべての人生のそばに ~「半径5mの人を幸せに」を社会実装する~』を開催いたしました。

 

 たとえいのちが限られたとしても、人は穏やかさを取り戻す可能性があります。ホスピスで培ってきた苦しむ人との関わり方は、人生の様々な場面で活かされてきました。このシンポジウムでは、「ユニバーサル・ホスピスマインドをすべての人生のそばに」をテーマに、家族・職場・地域コミュニティなど各方面で実践し、変化をともにしてきた方々にお話いただきました。

 

 事前登録者数254名。オンラインでのリアルタイム参加者数は最大時127名、また、会場参加者は約80名でした。ご登壇くださったゲストのみなさま、ご参加くださったみなさま、運営スタッフのみなさま、みかんの樹をご準備くださったELC愛媛のみなさま、そして素晴らしいグラフィックレコーディングを仕上げてくださった臼井さま、上村さまに心より御礼申し上げます。当日の写真はこちらからもご覧いただけます。

 

●第1部 コミュニティの変化

 ユニバーサル・ホスピスマインドが地域や組織などコミュニティに広がるなかで見られる変化や、他の活動と協同していくなかで広がる可能性について、3名の登壇者にお話しいただきました。

 

●田中 羊子(労働者協同組合ワーカーズコープ・センター事業団 理事長)
北海道育ち。人の地域づくりに直接かかわる仕事をしたいと、労働者協同組合運動に飛び込み36年。高齢者・市民と一緒に公共サービスへの挑戦に取り組む。東京事業本部長などを歴任。3・11後の2011年7月にワーカーズコープが設立した東北復興本部本部長。2017年度から日本労働者協同組合(ワーカーズコープ)連合会センター事業団理事長。

・ワーカーズコープの田中さんの共同労働の視点・困難を課題にする活動も素晴らしいと思いました。

 

・田中さんの感性の素晴らしさを感じました。ワーカーズコープさんの働きかけで、引きこもりの方がちゃんと仕事を持つことができて、支えを感じながら当事者として発信しているところ、困ったときにはいつでも支えるよ!という取り組みが凄いと思いました。

 

・あきらめない田中さんの人見知りプレゼンがとても伝わりました。

 

●長野 宏昭(呼吸器内科/在宅医)
「沖縄の次世代へ繋ぐ支え合いの輪」
沖縄では、学生、教育者、医療職などが世代や立場を超えて繋がり、まちづくりを見据えた活動を行なっている。この1年で4千人が参加。行政や自治体とも連携し、顔の見える関係ができつつある。県内の大学では、答えのない問いに向き合い、対話するサークルを学校・学部を超えて創設し学んでいる。マインドを次世代へと繋ぎ、互いの弱さを認め合いケアしあえる社会の創造を目指している。

  • ・長野先生には夢があり、医学部生や各大学生に対して、いのちの授業の大切さを伝え、小学校での講義を大学生ができる様に進めているところ、そして、沖縄のすべての小学校で授業ができる様に周りの協力者の方と一緒に取り組んで見えるところ、動画の社長さんとのインタビューも納得できました。こちらが引っ張って行かなくても「話をしっかりと聴く」と相手が穏やかになったり笑顔になる。それってすごい事だなと思いました。
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  • ・改めてELCの考え方は斬新であり、今の世界中の人たちがこのユニバーサル・ホスピスマインドの考え方が胸にあればあったかい世界が築いていけると思いました。対象に合わせてわかりやすく対話を重ねていく大切さを学ばせていただきました。
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  • ・もう一つ沖縄のおばあの「色分けしていいのは洗濯物だけだよね」深く幅広い意味がある言葉で、多様なこの世界において印象に残りました。
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●濵田 努(きいれ浜田クリニック院長、エンドオブライフ・ケア協会 理事)
「学校医から始める地域変革」
愛知医科大学医学部卒業、鹿児島大学大学院医学博士課程修了。2014年〜きいれ浜田クリニックの院長職。乳児から高齢者への地域医療の提供、認知症や在宅医療の啓発活動や死と向かい合う医療介護職の育成、がん教育など、地域包括ケアを推進する事業も行う。また小中学校でのがん教育やいのちの授業、医学生指導へも積極的に関わっている。

  • ・濱田先生が言われた、「皆さんのそれぞれの立場で、できる事をしたらよい」という言葉は励みになりました。
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  • ・濱田先生は小学1年生から~6年生、中学生、高校生、そして、認知症の当事者や家族に対して各段階に合わせた「折れない心を育てるいのちの授業」を実施(計画立案も含め)して見えるところが凄いと感じました。
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  • ・濱田先生が言われた、「皆さんのそれぞれの立場で、できる事をしたらよい」という言葉は励みになりました。
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  • ・学校医として深く関わりたいのですが学校側に時間が無く、今は健診や保健委員会で頂く5分程度の時間にいかに伝わる言葉を選ぶか苦心しています。先生方の活動を伺い、もっと遠慮せず交渉していこうと思いました。また、学校医のモチベーションの格差も課題かもしれません。地道に身の回りから取り組みます。
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 3名のお話を踏まえ、総合司会の本間 正人先生にて、小グループでの対話や全体での学びの共有をファシリテートいただきました。

 

●本間 正人(京都芸術大学教授、NPO学習学協会代表理事、弊協会アドバイザー)
「人は生まれてから最期の一瞬まで学び続ける存在である」という「学習学」の提唱者であり、「楽しくて、即、役に立つ」参加型研修の講師として最新学習歴を更新するアクティブ・ラーニングを25年以上実践。「研修講師塾」を主宰する。現在、京都芸術大学教授・副学長、NPO学習学協会代表理事、NPOハロードリーム実行委員会理事、松下政経塾研究主幹。コーチングやほめ言葉、英語学習法などの著書77冊。東京大学文学部社会学科卒業、ミネソタ大学大学院修了(成人教育学 Ph.D.)。

  • ・登壇者の方のそれぞれのお話から、地道にコンパッションの気持ちを持って取り組まれていることが伝わってきました。
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  • ・二人の先生からエンドオブライフケアの世界が大きく広がっていることを知り、まずはもっと学び理解したいと思いました。
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  • ・小澤先生、本間先生のファシリテーションは心地よく、最後まで良い時間を過ごさせて頂きました。配信や企画運営に携わって頂いた全ての方に感謝申し上げます。
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●第2部 個人の変化

 

●田原 真司(フリージャーナリスト)
「認知症遠距離介護13年目の気付きと支え」
大手出版社に記者として19年勤務し、うち10年余りを香港と北京で特派員として過ごす。2010年に独立してほどなく、故郷で独り暮らしの母親が認知症と診断された。以来、遠距離介護を続けて13年目となる。2017年にELCの活動と偶然出会い、介護との向き合い方が大きく変わった。

  • ・何があっても目標は「おだやか」として、ぶれずに進みます!
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  • ・自分の支えを大切にして、しっかり聴いてくれる人を目指します。
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  • ・私に出来ることがあるのだろうかと考えてしまっていましたが、「目の前の人の苦しみを聞く」ことから始めていけばいいんだ思えたら気持ちが楽になりました。まずは身近な家族に向き合ってみようと思います。
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●津野 采子(訪問介護事業所、所長)
「がんとともに生きる訪問介護士」
1971年大阪市生まれ。乳がん患者でありシングルマザー。ELC認定ファシリテーターでいのちの授業認定講師です。もともとは自分と同じくらいの末期がんの方に何もできず、小澤先生から「医師も末期がんは治せませんが訪問し続けます。無力です」と聴いたことから自分に何ができるのか学び続けています。

・津野さん かっこよかったです。

 

・津野さん、めちゃめちゃ、素敵な仲間がおられますね。今日はお誘いありがとうございます。

 

・ご自分の言葉で思いを伝えられ感動を味わいました。

 

●宇田 真記(医療法人清友会 清水医院・副院長)
「医師として、死を前にして願う幸せ」
父の診療所で訪問診療を始め16年。がん、認知症、神経難病など、様々な疾患の患者さんの人生の最終段階に関わっています。医師として、どんなに頑張っても治すことのできない病状や疾患があります。死を前にしても穏やかで、最期まで生きている幸せを感じられるよう願い、訪問しています。

  • ・宇田先生の受け持った患者さんのお話が、私の受け持った患者さんのお話と重なり、つらく悲しくも、お話を聴いているうちに、最後は温かい気持ちになることができました。
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●賀数 りち(琉球大学2年生)
「温かさに気づく いのちの授業」
幼少期をきっかけに地域医療・へき地医療に携わりたいと考え、琉球大学に2022年地域枠制度で入学。現在の夢は、患者さんの健康と幸せをサポートすること。大学の部活を通じて、いのちの授業と長野宏昭先生に出会う。授業に感銘を受けて認定講師に挑戦、大学で「ヨリドコロ」の活動に参加。答えのない問いについて対話をする場、みんなの拠り所になるようなサークルを目指している。

  • ・自分にとって苦しんだことは無駄じゃなかったと私も思っていました。それを未来につなげるために自分にできる活動がある、と言われた学生さんの言葉が心に残りました。
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  • ・賀数さんのお話をききながら涙がとまりませんでした。自分自身プライベートでも仕事でもたくさんの苦しみを抱えてきたので、「苦しんできたことは無駄じゃない」という言葉に救われました。
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  • ・りち さんの思いがあふれるプレゼンに涙が。
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●伊良波 梨奈 (琉球大学5年生)
「対話で紡ぐ学びの輪」
沖縄生まれ沖縄育ち。人の役に立つことの喜びを知り、地域貢献、国際協力を志す。現在、医学生として日々実習に励んでいる。いのちの授業や援助者養成基礎講座を通して自分と向き合い、家族、友人、患者さんなど周囲との関わり方も大きく変化した。大学生サークル「ヨリドコロ」を通して、継続学習と学びの輪を広げている。

  • ・医学部生徒さんの活動に心打たれました!いのちの現場で日々人と向き合う若い世代のみなさんの声は、まだまだ日本捨てたもんじゃないよ!とおばさんは明日から頑張れます。

 

●鎌田 直子(作業療法士)・鎌田紗叶(新小学6年生)
「いのちの授業を学ぶ理由~友達・家族の話を聴くことから始まる関係~」
広島県に住んでいます。娘は4月で小学校6年生になり、いのちの授業の認定講師を目指しています。ひと足早く認定講師になった母親の影響かなと思っていましたが、理由はもっと深くにありました。子どもの成長を共に過ごすとは、子どもにとってどんなママであれば良いのか…。いのちの授業を共に学んでいます。

  • ・感情的になりがちな家族で覚悟して対話したからこそ、認め合い前向きになれたという話は、自分の子育てともリンクしました。鎌田さんの笑顔と娘さんの聡明な代読が印象的でした。
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  • ・鎌田紗叶さん、お母さんのサポート素晴らしかったです。隣で、お母さんを気遣うような姿もあって、優しさが伝わりました。鎌田さんが「子どもの景色を一緒に見る」と覚悟を決められたこと、私も両親の景色を一緒に見たいと思います。
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  • ・「反復すれば良いと思っているんじゃない?」の言葉。自分もそうなっているのではと、ずしっときました。
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●濵田 蓮音(新小学6年生)
「僕とウミガメとSDGs」
ウミガメが大好きな鹿児島の小学6年生です。2年前、地域の環境講座でウミガメとゴミの問題を知り興味を持ちました。歩ける距離にある砂浜には海ゴミがたくさんあり、ゴミの中で産卵するウミガメをみて「僕が環境研究家になって助けてあげる!」と夢を決めました。学校に行く前に海ゴミを拾いながら、このゴミが無くなる方法をかんがえています。

・ウミガメやシロクマや野生動物たちと今後も共存していけるよう、私もゴミ袋とトングを持ち歩いて半径5メートルのごみを拾って歩いています。

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  • ・小学生のウミガメを守る、いのちの授業への取り組み、活動はとても心動かされた。
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  • ・ここは大阪でウミガメはいないんだけど、ゴミ拾いのボランティアを続けようと思います。
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これまでの変化を果実になぞらえて:みかんの樹

 設立8周年のイベントは、「果実」をイメージしてイベントをご案内しておりました。これまで撒いてきた種が発芽して、樹として成長し、地中では根を張り、他団体と想いを共有する一方で、実り始めた果実があります。今回の登壇者お一人おひとりのお話は、果実のひとつです。そして、参加してくださった方、当日参加することが叶わなかった方、お一人おひとりにも、果実があることと思います。会場参加者のみなさまには、これから実らせていきたい夢を、「みかんカード」に書いて、樹に貼り付けていただきました。

 

 みなさまの夢がいつか叶いますように、エンドオブライフ・ケア協会としても応援しております。みかんの樹とみかんカードを100枚作ってきてくださった、みかんの産地、愛媛のみなさま、ありがとうございました!

 

  • 参加者の声

  • ・専門職だけでなく、皆が安心して過ごせるようなコミュニティをみんなで作りたい

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    ・学びから自分の大切な体験の話を聴かせていただき心が震えました。

     

  • ・皆さんの体験をお話し下さり有難うございました。皆さんの思いがとても心に入ってきました。私も何故このELCに惹かれているのかを思い起こし、その思いを伝える事で救われる方も居られるのかも知れない、だとしたら幸せだと思いました。

     

  • ・決してターミナルのことだけでなく、日常にある課題、手の届くところから始めることの大切さ。そこから生まれる繋がりと拡がり。

     

  • ・冒頭の千田さんが分かりやすく説明しておられましたが、ELCの活動が時を経るほどに加速度を付けて深化・多様化してきている様子。

     

  • ・私たちが信じて学び続けていることと重なる部分が多くありました。大変良い刺激をうけましたし、「ユニバーサルホスピスマインド」についてもっと学びたいと思いました。

     

  • ・身近なところで人を素直に一歩前に進めてくれるものだということが分かりました。(私なりには、平たく言うと「人に押し付けるものではない自然な思いやり」が人と人とをつなげ、それがまた自分にも生きるにあたっての拠り所として返ってくる、そうした人と人との間で何かが行き来する、その姿の全体がユニバーサルホスピスマインドということなのかなと、、、そんな理解でおります。)

     

  • ・誰一人残されることなく誰もがお互いに思いやり、人生の様々な場面で穏やかに過ごせる、お互いが対話を通してかかわりあえる社会は、皆で作られていくんだなと改めて感じました。

     

  • ・競争社会が生み出した閉塞感や生きづらさ、加えて戦争など将来に対する不安がますます強まっているように感じています。こんな時代だからこそユニバーサルホスピスマインドが社会を変える力になるように思います。

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  • ・今回の発表を聞いていて、ELC援助者講習は援助者側としての立場で学ぶのですが、いのちの授業の講師をすればするほど、援助される側・・・自己開示を素直にできることを学べると思いました。自分自身が闇に葬っていた昔の想いもよみがえるとともに、授業後の参加者の生徒さんたちの感想を見せて頂くたびに、自分自身の支えを見つけることが出来る素晴らしさを毎回感じています。もっともっと広めていきます。

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  • ・第二部に登壇された皆さん、画面越しでも伝わる深い、深い想いのこもったお話の共有ありがとうございます。一つ一つが半径5mどころか、ヨーロッパまで十分伝わる尊いお話でした。今回の講演会を聞いてELCやいのちの授業についてもっと知りたくなりました。オンラインでも講師講習を受けられると聞いたのでまた別途で詳細お伺いしたいと思います。また、海外発信の際はぜひお手伝いさせてください。最後に小澤先生はじめ、企画に関わる全ての皆さん、本日はご貴重な講演会ありがとうございました!!

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