北海道枝幸郡中頓別町(なかとんべつちょう)は人口約1,500人が暮らすまち。
稚内市を含む宗谷管内南部に位置し、四方は山に囲まれ、森林が面積の8割を占めます。豊かな自然に恵まれる一方で、豪雪地帯に指定され、寒暖差は60度あるとのこと。
このまちで、文科省からの委託事業「新しい時代の学びの環境整備先進的開発事業」の一つとして、3 歳から15 歳が学べる幼小中一貫校の設立にとどまらない、人生100 年時代に子どもから大人まで学びつづけることのできる学びの拠点設立準備が進行中です。
義務教育期間終了後の長い人生を、どのように生きていくのか。
そのためにはどんな学びの場が必要なのか。
町民・教育関係者・行政が一丸となって、コミュニティデザインやUDL: Universal Design for Learningなど様々な手法を取り入れながら、地域の未来に求められる学びの拠点づくりが進められています。
奔走するのは、稚内市からこの地へ1年半前に赴任して来られた室田ひろみ先生。「折れない心を育てるいのちの授業」認定講師でいらっしゃいます。
今は教育委員会として、新しい学校づくり推進役のお立場ながら、公認心理士として子どもとその家族のカウンセリング、さらに、学校に通えずにいる子どもたちのためにフリースクールを教育委員会内に設置。
これにとどまらず、学校現場に教職として入るうえでご自身も、認定講師となられたのが半年前のことでした。
小中学生、隣町の高校生、大人へと、ご自身でも手ごたえを感じていらっしゃるなかで、このたびエンドオブライフ・ケア協会にお声がけいただき、2024年9月18~20日、地域の方々向けに2回の講演と、翌日、中学生に1回の授業を実施させていただきました。
今回のように、世代や職種を超えて対話の場を作ると、思いがけないことが起こることがあります。
中学生のお子さんがフリースクールに通う親御さん。午前の回に参加してくださり、これはぜひ、と、すぐにお仲間に口コミしてくださって、夜の回にその方々がご参加くださったり、
そのお子さんが、この授業は参加してもいいかな、と、翌日久しぶりに登校して、中学校でのいのちの授業に参加。友だちと席を並べて、緊張しながらもマイクをもって発言までしてくださったり。
また、住民向けの回で、ご自身の将来の夢として、ピンコロ(ピンピンコロリ)と発言してくださった地域のかた。その想いを伺ってみると、目を潤ませながらご自身の身の上に起きたことをお話くださったり。お話を伺った周囲の方々は、いろいろと考えさせられたとのことでした。
そして、これから小中学校とカリキュラムで連携を取る予定の認定こども園も、視察の機会をいただきました。ここでは、豊かな自然環境を活かしながら、「環境保育」を実践。子どもが自分で考え、自分で選び、自分で決められることを大切にし、主体性を発揮できるような環境づくりに力を入れておられます。
子どもが興味や関心を持てるような道具の数々。ひとり遊びなど個の自由が尊重されるとともに、一緒に遊ぶことの同意が学べるような手作りの素材。
片づけなどのルールも子どもの意見が尊重され、発達の課題にも数々の配慮がなされています。
やがて進学する小学校、中学校、そして、これから導入される通信制の高校、大学・・・
このまちを出ていく選択をする人もきっといるなかで、どんな道を歩んでいくにしても、自分で選んでも選ばなくても、ふりかえってみたとき、、これでよいと思える人生でありますように。
人生100年時代と言われるなか、義務教育を終えたら卒業、ではなく、地域とゆるやかなつながりを持ちながら、ご自身にとって必要な学びが折に触れて得られる、そんな拠点が令和9年にスタートすることを、応援して参りたいと思います。
#ユニバーサルホスピスマインド
#いのちの授業
#エンドオブライフ・ケア
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