教育委員会指導主事(公立小学校教員) スクールカウンセラー
室田ひろみさま
(折れない心を育てるいのちの授業 認定講師)
私は長く小学校教員をしています。心理師でもあるので、自分の学校だけでなく地域の子ども達の相談やカウンセリング、保護者の教育相談にも多くかかわらせてもらっています。
特に近年は、不登校の児童生徒や、生きること自体に希望が持てなくなっている子ども達、困り感を抱えたまま相談できずにいるお家の方々が急増していることを、現場でもひしひしと感じます。相談数は年間数百件以上にものぼり、年々ニーズは高まるばかりです。
現場での教育相談を進めながら、同時に、できるだけ多くの方が希望を持てたり、苦しみが楽になればという思いで、「折れない心を育てるいのちの授業」も学校現場に届けています。
でも、いつも思います。子ども達やお家の方々の力になりたいと思いながら、結局は、私自身が子ども達から学ぶことばかりです。
かかわっていた子どもが書いてくれた作文を紹介します。その子どもは、いのちの授業も届けた子どもです。そんな風に思っていてくれたんだ…やっぱり「支え」があれば人は頑張れる、ということを今回も改めて教えてもらいました。
「先生、困っている人がいたら、私の作文を紹介してもいいよ。」と承諾をもらったので、みなさんにもご紹介します。
みなさんは逃げるという言葉にどのような印象をもちますか?逃げることは悪いこととかダメなことと思う人もいるかもしれません。私も最初は悪いことだと思っていました。
でも、逃げるという言葉の印象を変えるエピソードがありました。それは、「逃げれる人は強い人」という言葉をもらったことです。わたしはこの言葉を自分に贈りたいです。
この言葉を自分に贈りたい理由は、逃げられることが悪いことだと思わない人もいるんだと思ってほしかったし、自分を励ましてくれた言葉だからです。私が5年生から6年生の最初くらいまで、朝から学校にいきたくなかったり休んだりするのが何日かありました。
学校を休み時にいつも、なんで休みたいのか自分でもわからないし、逃げたら負けという気持ちが大きくて不安になっていました。だけど、先生に相談したら「たまには休むことも必要だよ」とか「自分の気持ちを伝えて休むことはダメなことじゃない。自分を弱い人だと思わなくていいよ。伝えられるあなたは強い人だよ。」と言ってくれました。
自分の気持ちをわかってくれる人がいると思って安心したし、嬉しかったです。私はその言葉のおかげで、先生と話す時間が楽しくて学校を休む日が減りました。6年生の3学期からは休みたいと思わなくなりました。逃げられる人は強い人という言葉は私を支えてくれたけど、これから中学生に向けて、休んでばかりはいられないと思っています。
でも無理をしすぎないで、頑張っていきたいです。テストのために授業を真面目に聞いて家でも復習を頑張ったり、友達と楽しく過ごせたらいいと思います。
この子は、「逃げる」という言葉を使っていますが、本当に逃げたのでしょうか?時には立ち止まり、時には次のステップに進むためにエネルギーを充電しながら子ども達は成長していきます。この子はきっと、大人への階段をのぼるために、自分を見つめ直したり、エネルギーを充電した時間だったのだと思います。逃げずに自分に向き合い、自分なりの答えを見つけて再び歩き出せたのだと思います。
子ども達は一人一人すてきなエネルギーをみんな持っています。これからも、その力を様々な「支え」によってエンパワメントするお手伝いができればと思っています。
エンドオブライフ・ケア協会では、このような学び・気づきの機会となる研修やイベントを開催しております。活動を応援してくださる方は、よろしければこちらから会員登録をお願いします。
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