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コラム13:ディグニティセラピーとエンドオブライフ・ケア


コラム13ディグニティセラピーとエンドオブライフ・ケア
エンドオブライフ・ケア協会理事、めぐみ在宅クリニック医師 小澤 竹俊

 

 「エンドオブライフ・ケアとは何をすることですか」と問われたら、皆さんはどのように答えるでしょう。私であれば、「人生の最終段階を迎えた、その人の“尊厳”を守るケアです」と答えます。

 エンドオブライフにおいては、人は様々な形で、自分自身の“尊厳”を失っていきます。今まで1人で買い物に行けていた人が、行けなくなったり、今まであたりまえにできていた入浴やお手洗いですら、できなくなったりします。自分が果たしてきた役割を失い、家族や他の人に迷惑をかけ、本当は自分でやりたいことを制限されてしまい、自尊心が崩れていきます。

 

私が私でなくなっていく…

私はまだ、本当に私なのだろうか?

私には、まだ生きている価値があるのだろうか?

何のために生きているのだろうか?

 

 多くの人が、このような苦しみを抱えます。この苦しみは、何もがんという病気の人だけが抱える苦しみではありません。認知症や心臓病や神経難病を含むすべての人が抱える苦しみです。やがてお迎えが来るであろうすべての人とその家族が避けて通れない大切なテーマがここにあります。

 あらためてエンドオブライフ・ケアでは、このような苦しみを抱えた人の尊厳を取り戻すことを意識します。どうすれば、尊厳を取り戻すことができ、尊厳を守り、さらには、尊厳を維持していくことができるのでしょう。

 1つの可能性として、ディグニティセラピーを紹介します。カナダの精神科医であるチョチノフ博士によって考案された精神療法的アプローチです。9つの質問を中心としたやりとりを経て本人の尊厳を取り戻し、そして、本人の言葉を大切な人に宛てた手紙にすることで、取り戻した尊厳を、世代を超えて維持していくことを可能にするものです。手紙を書くのは、本人ではなくセラピストです。訓練は必要ですが、構造化されており、本人との信頼関係ができていれば、短期的で有効な精神介入方法であるとされています。

 めぐみ在宅クリニックでは、2年半ほど前からディグニティセラピーを実施し、約70名の患者さんが手紙を作成しました。ディグニティセラピーを通して、人生を振り返り、本人が誇りに思っていること、果たしてきた役割、学んで来たことなど、本人が大切にしてきたことや憶えていてほしいことを言葉にします。そして、その言葉は手紙という形で、大切な人に受け継がれていきます。


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