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コラム30:離島へき地のエンドオブライフ・ケア


コラム30:離島へき地のエンドオブライフ・ケア

国民健康保険大和診療所 所長 小川 信さま
(ELC第4回生、認定エンドオブライフ・ケア援助士、認定ELCファシリテーター)

 大和村は鹿児島県の奄美大島、ほぼ中央西側に位置する人口1,514人の村で(平成29年5月)、主な産業はスモモやタンカンなどの果樹である。同村における高齢化は日本全国に先んじて著明であり、高齢化率は38%を越えている。独り暮らしによる寂しさ、家事の煩わしさ、疾患罹患のため、村を出て本土の子ども宅へ身を寄せたり、病院や施設に入らざるをえない高齢者が少なくない。

 同村の医療介護施設は診療所が1つ、特別養護老人ホーム(以下、施設)が1つあるのみである。診療所では、事務、看護師、医師スタッフ一同、「あなたに会えてよかったと思われる医療」を心がけながら診療にあたっている。奄美大島の中心地である名瀬まで乗用車で40分、バスで1時間であり、車を運転できる方々にとって名瀬へのアクセスは難しくない。よって交通手段がない高齢者を如何に支えて行くかが重要な課題である。村(シマ)で生まれ育った方々が、年老いても要介護状態になっても住み慣れた地域で、自分らしい暮らしを人生の最期まで続けることができる地域包括ケアシステムを構築するべく努力している。入院施設がない同村にとって施設や在宅は、看取りの場として重要である。

 長い間、終の住処として施設で暮らしてきた入所者にとって、最期だけ病院に搬送されることは望ましくない。当施設では、キーパーソンが島外在住であったり、入所者が村外出身であったりすることが多く、病状増悪時に十分な説明をする時間がなく病院搬送となることがある。 そのため平成27年度より入所者およびキーパーソンに対してアドバンス・ケア・プランニング(以下、ACP)を行っている。すなわち病状説明、家族背景の確認、人生の最終段階に対する考え方、過去の職業、宗教の有無、今後の療養場所の希望、食事ができなくなったときや急変時の対応などについて確認する。ACPを開始前後で比較すると、施設看取り率は1割から9割以上へ上昇した(嘱託医の交代あり)。介護士など施設スタッフからは「安心して看ることができる」といった肯定的な意見が聞かれた一方、「看取りに対する精神的負担が増える」と否定的なそれも聞かれた。スタッフの多くが人生の最終段階の方々を支えることに精神的負担を感じていたため、小澤先生のエンドオブライフ・ケア援助者養成基礎講座を参考に施設内勉強会を行った。勉強会後のスタッフの感想より、「利用者の苦しみを聴くことによって、希望はかなえてあげられなくても、苦しみは和らげることができると感じた。」「夜勤で具合の悪い人が居るときは、恐いとか不安があったが、講義を受けて気持ちが楽になり慌てなくなった。」「『看取り』という尊い仕事についている事を誇りに想い、これからも頑張って行きます。誰かの支えになろうとする人こそ、一番支えを必要としているんですね。」「利用者の思い出になるよう、いろいろしたい。もっと家族が面会にきてもらうようにしたいと思った。お年寄りは私たちより大先輩なので言葉に注意したい。」「自分はこの仕事に向いているのか考えながら仕事をしていた。講義を受けて、人生の最終段階にある入所者を見守る姿勢や考え方が変わり、役に立っていると思う。」など建設的な意見が聞かれた。


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