エンドオブライフ・ケア協会
小澤 竹俊
本来であれば春が近づき、桜の開花がいつになるのか話題になるこの時期ですが、今年は新型コロナウイルス感染のニュースで、先行きが見えない状態となりました。まさにVUCAな時代そのものです。
不条理な世の中にあって、いろいろなことを決めていく難しさ、特に決断する人は、その責任を負うことになります。どちらを選んでも後悔する選択にあたり、わかってくれる誰かの存在が鍵となります。
皆さんは自分自身の悩みや苦しみをわかってくれる人はいるでしょうか?私たちが生きていくためには、自分の苦しみをわかってくれる誰かの存在が欠かせません。そこで、今日は、苦しんでいる人からみて、わかってくれる人になるためのポイントを紹介します。
基本的な考え方として、5つのステップとして紹介します。
第1のステップとして、大切なことは、目の前で誰かが苦しんでいるのであれば、その人のことを心配して、気づかい、観察することです。それがなければ、何も生まれません。大丈夫ですか?と案じることは、すべての始まりです。
第2のステップとして、どれほど心を込めて観察したとしても、私は相手のすべてを理解することはできないことを意識します。どれほど心を込めて相手を気づかったとしても、相手の苦しみのすべてを理解することは不可能であることを認めなければいけません。
第3のステップとして、誰が理解するのか?という視点の変更を行います。つまり私が相手を理解するのではなく、相手が私を理解してくれたと思うことを大切にするのです。
第4のステップとして、対人援助の最も大切な基本。苦しんでいる人は、自分の苦しみをわかってくれる人がいるとうれしいということを肝に銘じます。ここが大切です。
題5のステップとして、どんな私であれば、苦しんでいる人からみて、わかってくれる人になれるのか?という問いのもと、聴いてくれる私が大切であることを考えます。
聴くことの大切さは、皆さん知っています。しかし、多くの聴くことは、第1のステップである、相手を理解するために、自分が知りたいことを聞いていることがほとんどです。痛みがありますか?夜眠れていますか?熱はありませんか? あなたかわりはないですか…♪。
次に聴くことの難しさは、相手を理解したと思ったとき、相手の話を聴かなくなるのです。聴くこと1つとっても、実はとても奥が深い援助だと、現場にいてつくづく思います。
さて、ここで、上記の5つのステップを呪文のように覚えてもらうために、以下の文章を紹介します。
5つの呪文
①私が相手を理解しようとすることは大切。
②しかし、私は相手を100%理解することはできない。
③相手が私をわかってくる人(理解してくれる人)と思うことは可能性がある。
④苦しんでいる人は、自分の苦しみをわかってくれる人がいるとうれしい。
⑤どんな私であれば苦しむ相手から見て、わかってくれる人(理解してくれる人)になれるか。それは、聴いてくれる私。
エンドオブライフ・ケア援助者養成基礎講座の受講生を中心に、それぞれの地域の方言で翻訳してくれました。ここに挙げきれないほどのあるのですが、一部を紹介します。皆さんの心にフィットする方言で、心に刻んでください。
長崎県波佐見弁
①私がね、相手の人ば理解したかって思うとは大事かとよ、
②そいばってん、私はどげんしたっちゃ、100%理解しきらんとたいね、
④そがんときね、私ば、わかってくるっ人って思うてくれらすとは、可能性のあっとよ。
④苦しんどる人は、自分の苦しかとば、わかってくるっ人のおったら、うれしかとよ。
⑤どげん私ぎん、苦しか人からみたときに、わかってくるっ人になるっちゃろか、そいはね、、、聴いてくるっ私なんよ。
薩摩弁
①おいがわいを分かろちすっとは大切
②じゃっどん、おいがわいを100%分かっこつぁ出けん
③わいがおいんこつ分かっくるっやっじゃち思ぅとは可能性があっ
④苦しんじょっしは、わが苦しみを分かっくるっしがおっとうれしか
⑤どげなおいじゃれば、苦しんじょっしから見っせぇ分かっくるっしにないがなっどかい?そいは聴っくるっおいじゃっど!
広島弁
①うちがあんたをわかろう思うんは大切じゃろ。
②そがいなこと、どがいしてもうちはあんたをみなわかるわけないでがんす。
③ほでも、あんたがうちをわかってくれとってんじゃのう~思うんは可能性があるじゃろ。
④苦しんどってん人は、自分の苦しいのをわかってくれとるんじゃのう~ゆう人がおったら嬉しいんじゃけん。
⑤どんようなうちじゃったら苦しんどるあんたから見てわかってくれとるんじゃのう~ゆう人になれるんかのう。そりゃ~、聴いてくれるうちじゃろ。
大阪
①うちがあんたを理解しよおもうんはたいせつ。
②せやけど、うちはあんたをヒャクわかるちゅうのんはでけへんおもうねん。
③あんたがうちをわかるじぶんっちゅうんは可能性があるからな。
④苦しんでる人は、自分の苦しみを「ほんまそれ」いうてくれる人がおるとうれしい。
⑤どんなうちやったら苦しむあんたから見て、わかってくれる人になれるんか。それは、聴いてくれるうちやな。
名古屋弁
① 私がおみゃーさんを理解しようとすることは大切だわなも。
② ほんでも、私はおみゃーさんを100%理解することはできんわなも。
③ おみゃーさんが私をわかってくれる人と思やーすことは可能性があるわな。
④ 苦しんどりゃーす人は、自分のえらいことをわかってくれる人がおったら、うれしいわなも。
⑤ どんな私だったら、でら苦しんどりゃーすおみゃーさんからみて、わかってくれる人になれるんかなぁ。そりゃぁ、聴いてくれる私だわさ。
甲州弁(山梨)
①わたしがおまんとうを理解しとうするこんは大切。
②だけんど、私がおまんとうを100%理解するっちゅうこんはごっちょじゃんね。
③おまんとうが私をわかってくれる人と思うこんは可能性があるじゃんね。
④苦しんでいる人は、自分の苦しみがわかってくれる人がいるとうれしいじゃんね。
⑤どんなわたしんとうなら、苦しむおまんとうから見て、わかってくれる人になれるか。
それは、聴いてくれる私
秋田弁(県南)
①オラがオメどご わがろうどするごどなば大切だなぁ。
②んだども、オラはオメのごど皆わがるごどなばでぎね。
③オメがオラどご わがってける人だど思うごどは、可能性なばあるべなぁ。
④苦しんでる人なば、わぁが苦しぃどぎにわがってける人いれば嬉しべなぁ。
⑤どんたオラなば、いっぺ苦しんでるオメがら見で、わがってける人さなれるべ。
それなば話こ聴ぐオラだべが。
(つづく)
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