コラム11:「私の人生は幸せだった」と振り返ることができるようなエンドオブライフ・ケアを目指して

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コラム11:「私の人生は幸せだった」と振り返ることができるようなエンドオブライフ・ケアを目指して

社会福祉法人足立邦栄会 施設長、看護師
新井 五輪子さま(ELC1回生、認定エンドオブライフ・ケア援助士)

 2000年4月 特別養護老人ホームさくら(定員60人)、身体障害者療護施設かえで(定員10名、現:障害者支援施設)が開設しました。東京都では初めての高齢者と障害者が一緒に生活する施設であり、障害者施設の民設民営が実現しました。

 私は開設準備から携わり、事務長を経て施設長となりました。開設当初から積極的治療を望まないご本人、ご家族の意に添える病院連携にはとても苦労をしました。その当時は、「食べることができなくなった=胃ろう」の時代でした。ご本人、ご家族の希望を伝えると、医師からは「餓死させるのか!」「患者を殺すのか!」と厳しい言葉を何度も投げかけられました。最期の時が近づき食べられなくなってきたら、ぎりぎりまで施設で過ごし、最期は病院へ入院するということが精一杯でした。何年か後に「DNR」の受け入れは良いという病院と連携することができました。実際3人の方を、施設で最期を迎えられた後に病院へ搬送しましたが、違和感がありました。その方は寿命を全うし、静かに最期を迎えられたのに、何故、担架に乗せ、車に揺られ病院へ死亡確認に出向かなくてはならないのだろうか、紙一枚のために。人生を全うされたその方の人生に対し、敬意を表し医師が出向くべきなのではないだろうか。この思いが私の感じた違和感であると思いました。

 施設は生活の場であるとともに、人生の最終段階の最期の時を過ごす場でもあります。この生活の場での医療の在り方について学びたい、お看取り支援を医療者として支援したいとの思いから、44歳で看護学校へ入学しました。法人本部勤務と2足のわらじではありましたが、医療、看護の学びは、今まで経験してきたことの根拠となり夢中で学びを深めていきました。卒業後は大学病院勤務後施設へ戻り、施設の看護業務に携わりながら、同時にお看取り支援の連携ができる病院を探し続けました。

 施設開設から15年、看護学校に入学してから6年後、悠翔会在宅クリニックの佐々木先生に出会うことができました。佐々木先生率いる悠翔会在宅クリニックの医師、看護師をはじめとし、施設看護師、生活を支える介護士、他多くの施設職員(リハビリ、食事、相談員、事務など)が連携し、平成27年4月から開始した「お看取り支援」は、6名の方を施設からお見送りすることができました。開始直後はクリニックとの連携に戸惑い、介護、看護、施設職員の役割分担も明確ではないなか手探り状態でした。しかし、手探り状態であっても決して失敗は許されなし、決してあってはならない。そんな思いで支援を続けてきました。

 お看取り支援をさせて頂いた方々は、当然ですが、家族構成や生い立ちなどそれぞれの人生を生きてこられています。ご家族の思いも今までの関係性が影響します。ご本人の意思を尊重するご家族、ご自身の思いを優先するご家族。あまり関与されないご家族。介護士はその方を思い支援方法を考えますが、介護士たちも対応方法がわからずその思いに右往左往していました。

 そんな手探り状態から光が見えたのは、佐々木先生のご縁で知ることになった小澤先生のスピリチュアルケア・援助的コミュニケーションの講演とエンドオブライフ・ケア援助者養成講座でした。「苦しみ」「支え」「多職種で支えを強めるための方策」「援助者への支援」をキーワードにその方の人生と施設での生活を紐解いていくと、支援方法のヒントがたくさんあることに気が付きました。そして、ご本人・ご家族へは援助的コミュニケーションの5つの課題を意識しながら「理解者」と思っていただけるような関わりを継続しています。今では、看護師、介護士、ご家族と「エンドオブライフ・ケア」についての勉強会を少しずつはじめています。

 ○人生の最終段階を考えるということは、それまでどのように生きるか、

  つまり「生」を考え、どのように過ごすかを考えること

 ○大切な時間を、どのように過ごすかを考えること

 ○人としての寿命を考えること

 ○「看取り支援」

  ・・・それは、その方の生きてきた証、

  「命」を繋いで行くこと・・・

  皆さんは、どのようにお考えになりますか?

 今までも、そしてこれからも、最期の時に「ああ、私の人生は良かった」と振り返ることができるような、心から心へ届く支援をしたいと思います。

エンドオブライフ・ケア協会では、このような学び・気づきの機会となる研修やイベントを開催しております。活動を応援してくださる方は、よろしければこちらから会員登録をお願いします。

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