コラム15:エンドオブライフ・ケアの学びを大学から地域へ

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2016.06.27

コラム15:エンドオブライフ・ケアの学びを大学から地域へ

東京純心大学 看護学部 看護学科 准教授
戸塚智美さま(ELC8回生)

 エンドオブライフ・ケア援助者養成基礎講座第8回生の戸塚智美と申します。私は、東京純心大学看護学部で地域・在宅看護学を担当しております。本学は東京都でも自然豊かな場所、八王子市滝山町に位置しております。八王子市は多摩地域の南部にある人口約58万人の中核市です。八王子市においても高齢化率は上昇しており、平成26年度24.0%、平成29年度には25%を超え、市民の4人に1人が高齢者となると推計されます。

 エンドオブライフ、つまり、人生の最終段階の生き方、人生の終い方をどのように考えれば「自分の人生は良い人生であった」と思えるのでしょうか。また、医療に携わる看護者であれば、人生の最終段階にある人とその家族の方にどのようなケアを提供したら「充実した人生だった」「よい最期であった」と思ってもらえるのでしょうか。昨年度、南多摩地区の病院・介護保険施設・訪問看護ステーションに勤務する1300人の看護職の方々を対象に終末期看護に関する意識調査を実施しました。調査結果をまとめてみて気づいたことは、終末期医療・看護に携わっている看護職は戸惑いながら、悩みながら看取りを行っていることがわかりました。そんなときでした。今年の2月、本学音楽療法を担当されている鏑木教授からお誘いを受け、第8回エンドオブライフ・ケア援助者養成基礎講座を受講しました。エンドオブライフ・ケア協会は昨年8月15日に東京都足立区の西新井文化ホールで行われた町 亞聖さんの基調講演のチラシで目にしておりましたので認識はありましたが、2日間の講座で受講料32,400円は少々お高いという印象でした。しかし、受講してその気持ちは払拭されました。なぜなら、受講後同じ志を持つ方々と出会い、これからもその方々とともに学び、エンドオブライフ・ケアを多くの人に伝えたいという夢ができたことです。これは、お金で買えるものではありません。

 私自身のエンドオブライフ・ケアの経験の中で今でも強く心に残っていることを記します。一つは私の母の看取り、もう一つはALS患者様との忘れられない関わりです。もう20年も前になりますが、私の母は59歳で肝癌を発症し、余命半年の命と言われていました。肝癌が発見されたときには既に肝臓の9割が癌に侵され、すぐに腹水と骨転移の痛みで身動きできない状態となりました。父の希望は癌であることは本人には告げない、麻薬は本人の意識が遠のくので量を少なくしてほしい、私は、日に日に悪化する母と父の気持ちの間にはさまれ、看護者として娘としてどうしたらよいかの葛藤を重ね、悩みましたが答えは出ませんでした。最期は家族・親族そろって母を看取りました。母を見送った父の最期の言葉は「もうだめだ」「俺を一人にして」というように寂しさだけが残り、エンドオブライフ・ケアのような母の死を受け入れながら支えるといったものではありませんでした。私自身も家族として看取ること、死を目の前にした身内がどう生きるかを目の当たりにし、当事者(本人・家族)は冷静ではいられないことを痛感しました。

 ALSの患者様は40代半ばの男性の方でした。医師からALSの診断を受け、病名の告知、病気の進行と同時に人工呼吸器装着の選択の説明、その後の自己決定をされるときに関わった方でした。医師の説明を聞いたその方は「要するに死ぬか生きるかの選択だよね」と言われ、何と残酷なことであり、どちらを選択してもたいへんな暮らしが待っていると思いました。その方は自宅での生活を希望し、人工呼吸器は装着しないと選択して最期を迎えられました。看護者として本当にこれでよかったのか、この関わりでよかったのか、もっと違った関わり方があったのではと10数年を経過しても後悔の念が残りました。

 去る6月10日(金)に、本学に小澤竹俊先生をお迎えして講演会を開催しました。鏑木教授のパイプオルガン演奏の後、小澤先生にご講演『エンドオブライフ・ケア~人生の最終段階にある人への関わり~』を頂きました。近隣の病院・施設・訪問看護ステーションの看護職・介護職の方々、本学看護学部の学生等、約170名の方が参加して下さいました。小澤先生の優しい語りとエンドオブライフ・ケアに相応しい映像では、涙する場面もありました。講演後のアンケートでは、人生の最終段階にある人との関わりは難しいのですが、先生のご講演をお聴きして、患者様から「そうなんですよ」の言葉を聴けるようになりたいといような感想が多く寄せられました。そして、再び小澤竹俊先生をお迎えして平成29年2月に『エンドオブライフ・ケア~事例検討会~』を本学講義室で開催いたします。また、本学では終末期ケアのセミナー(全10回)も実施しております。エンドオブライフ・ケアに興味をお持ちの医療職・介護職の皆様、ご参加をお待ちしております。

 エンドオブライフ・ケア協会が目指す「可能な限り住み慣れた地域で、自分らしい暮らしを人生の最期まで続ける」、そして、「苦しくて自分を好きになれない人、家族に迷惑をかけるならば早く逝きたいと思っていた人が、生きていて良かったと思えるようになるような援助ができる」に共感し、この地域で活躍する医療・介護の方々とエンドオブライフ・ケアを学び・語り合い・考え、一人でも多くの人がいい人生だったと思えるようにエンドオブライフ・ケアの考えを広め、探究していきたいと考えています。

エンドオブライフ・ケア協会では、このような学び・気づきの機会となる研修やイベントを開催しております。活動を応援してくださる方は、よろしければこちらから会員登録をお願いいたします。

Theory of Change

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