コラム21:ELC~草の根の仲間

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2016.12.19

コラム21:「ELC~草の根の仲間」
宇部協立病院 医師(在宅医療担当)
立石彰男さま(ELC8回生、認定エンドオブライフ・ケア援助士、認定ELCファシリテーター

「背景」tateishi-sama

 わたしは、山口県宇部市にある在宅療養支援病院の勤務医をしています。山口県は、人口145万人、高齢化率28%、人口10万人あたり病床数1,900床は全国平均の2倍を超えます。なかでも、療養病床が全国平均を大きく上回っています。現在は医療充足地域に見えますが、療養病床が削減対象となっているなかで、今後、慢性期の療養場所が、自宅・施設・居住系にシフトしていことが予想されます。と同時に、エンドオブライフ・ケアに対する介護・福祉職の役割がより大きくなっていくことでしょう。


 「体験」

 15年前、在宅医療に足を踏み入れたころ、がんや慢性疾患のため“人生の最終段階”に差しかかった患者さんに対しても、医師の役割である“症状緩和”を通しておだやかな時間、そして、人生をふり返る時間をもっていただくという診療の姿勢を思い描いていました。
 印象に残っている二人の患者さんがいます。10年くらい前に出会った患者Aさん(60歳代、女性、乳がんの骨・肝転移)。診察の間も、病状の解釈の話題に終始するわたしに対して、Aさんは、おだやかな笑顔で、“先生、もういいですよ(これ以上の治療は)”と諭すように話してくれました。わたしは、いつの間にか、“症状緩和のために自分ができることをやってあげたい→自分を生かしたい”という思考、Aさんの苦痛や希望のあり様とは離れた、誤った“誠実さ”のなかに入り込んでいたのです。
 また、わたしには、“人生をふり返る時間の内実は悔しさや苦しみに満ちたものではないのか?”という疑問がありました。昨年、担当したBさん(20歳代、女性、消化器がん)は、病床日記を残していました。そこには、吐き気のない日に、わずかでも家族と食事が楽しめたこと、自分が食べられない日に、家族に作ってあげた食事を喜んでもらえたこと、など、日々のありふれた出来事が綴られ、そのことを記した末尾には、つねに、“ありがとう”の言葉が添えてありました。“人は苦しみの中から学ぶことが出来る”ことを教えてくれた貴重な記録でした。


 「ELC山口」

 わたしが、Aさん、Bさんなど、関わった患者さんからいただいた学びに気付くことができたのは、援助者養成基礎講座での、苦しみと援助に関する発想の転換が導きになっていることを実感しています。いま、山口県では、同じような思いでエンドオブライフ・ケア協会の人材育成プログラムに関心を寄せる多職種が「ELC山口」として全県的な活動に着手しています。

 きっかけは、6月11日に、山口県介護福祉士会が主催した、小澤竹俊先生の講演会の終了後に、小澤先生を中心に、受講者、未受講者をふくむ12名の有志の方々が集まったことに始まります。8月8日に第2回、11月12日に第3回の「ELC山口」の集いを持ちました(第4回予定は2月4日)。その間、あらたに受講者が増え、また、山本英雄さん(美祢市、介護福祉士)、三隅恵美さん(宇部市、看護師)と立石は、広島市、福岡市でのフォローアップ研修に参加しました。この3名は、現在、援助士とファシリテータの資格を取得しています。登録も医療・介護・福祉職37名に達し、1月の福岡市での援助士養成基礎講座には、あらたに、約20名の参加を予定しています。各職能団体からの働きかけではなく、同僚や連携仲間を通しての草の根の広がりです。

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Theory of Change

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