コラム29:あなたの支えになりたくて・・・
社会福祉法人 日本医療伝道会 湘南国際村クリニック
事務長補佐 古川 英孝さま
(ELC第10回生、認定エンドオブライフ・ケア援助士、認定ELCファシリテーター)
●今日が人生最後の日だと思って
人生の最終段階にあって、答えることのできない苦しみを抱えている人に医療・介護の専門職だけではなく、家族や民生委員、ボランティアなど関わる全ての人がみんなで支えることが出来るようにとの想いで設立されたエンドオブライフ・ケア協会。私は一塊の事務員ですので「専門職」ではない方に分類されます。
よく「事務員なのに?」と問われます。ですが、援助的コミュニケーションの基本は「苦しんでいる人は自分の苦しみをわかってくれる人がいるとうれしい」です。苦しみをわかってくれる人は専門職でなければならないということはありません。それが魅力だと私は思います。そして、答えることのできない苦しみを抱えている人は何も人生の最終段階にある人だけではありません。答えることが出来ない苦しみを抱えて「死」を選んでしまう方もいますし、事故や震災で大切な方を亡くされた方もまた、答えることのできない苦しみを抱えます。決して「死」は病気や寿命の先にあるものではなく、明日突然訪れるものかもしれません。そう、「今日が人生最後の日」になるかもしれません。
●より良い「死」を迎えるために
家族と「死」や「病気」の話をすることがあります(他に共通の話題がないからですが)。救急車の音に「もし蘇生が必要な場合、後遺障害(全身マヒ、言語障害等)が残る可能性が何パーセントまでだったら、蘇生する?」と聞いたり、医療・介護現場の番組をみて、「介護が必要になったらどうする?」と聞かれたり。ただ聞くのではなく、なぜそう思うのかまできちんと聞いておくと、この人が今何を大切にしたいと思っているかがわかります。もちろん、これは人生のステージ、また置かれている状況により変わりますが、もし「今」何かあった時の一つの指標としては十分足りる素材だと思います。普段の何気ない会話の中ではなかなか聞きづらい事ですが、大切なことだと思います。私は家族と話すのが苦手なので、エンディングノートを作り、渡すだけにしてあります。が、これもまた節目で見直し、書き直す必要があります。社会での立場、家族や周りとの関係・・・、夢の道半ばではまだ死ねないと思うかもしれませんし、近親者が延命して、辛い思いをして亡くなったのを目の当りにしたら、何もせずに穏やかに逝きたいと願うようになるかもしれません。自分も周りも納得して「死」を迎えられたら、死後もまた穏やかでいられるような気がします。
●誰かの支えになろうとしている人の支えになりたくて
私は直接人生の最終段階にある人を支える機会は多くありません。ただ、一生懸命頑張っていた「誰かの支えになろうとしている人」の支えになれたらと思い、援助士を申請しました。もちろん、人生の最終段階にある方のところへも足を運びます。ご家族とも話し、援助を言葉にします。医師やケアマネジャー、訪問看護の間にも飛び込みます。ですが、失ってみて改めて、大切なことは自らが支えになることではなく、相手の支えをキャッチして強めることだということに気付かされました。
●ゆだねる
人の苦しみ、悲しみに触れる時、胸が締め付けられるような思いに駆られます。何もできないという無力感。技術や知識があれば、少しでも苦しみを解決することができるかもしれないが、それすらもできない。ご自宅で介護なさっている方も同じような想いを抱えること、あるかもしれません。でもその想いは、ゆだねることができます。地域には誰かの支えになろうとしている熱い仲間が待っています。想いは仲間にゆだねます。そして、その仲間に支えが必要な時、その支えに出会える場を作っていけたらと願っています。皆が穏やかに過ごせる街になりますように。ELC横須賀衣笠、素敵な支えとの出会いに感謝します。
エンドオブライフ・ケア協会では、このような学び・気づきの機会となる研修やイベントを開催しております。活動を応援してくださる方は、よろしければこちらから会員登録をお願いします。
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