コラム31:少しでも苦しんでいる人の力になれたら
2017.09.16
コラム31:少しでも苦しんでいる人の力になれたら
NPO法人きせき 代表 内海光雄さま (ELC第26回生)
私は、もうすぐ61歳になる脳性マヒの障害者です。8ヶ月の早産で生まれ、片手に乗るぐらいの身体の小ささで人生をスタートさせました。未熟児だったために脳性マヒになったようです。
幼少期から訓練を積んできたのですが、20歳になっても歩く事は出来ませんでした。それでも、電動車いすを手にしてからは、1人でどこへでも行けるようになり、障害者運動に参加しながらも、障害者歯科の歯科コーディネーターとして10年ほど働きました。その間に結婚して3人の子供ができました。その後市会議員をやらせていただきまして、脳性マヒという障害を乗り越えたような錯覚の中で40代後半を迎えていました。
やはり大きな落とし穴が待っていました。一人で電動車いすを操作しているときに誤って道路の段差にぶつかってしまい、電動車いすから放り出されてアスファルトに直接頭のてっぺんを打ち付けた頃から、脳性マヒの二次的障害とあいまって頸椎損傷が酷くになり、徐々に手足が動かなくなってしまいました。
その後、離婚して一人暮らしを始めたので、介護体制は居宅介護から始まり行政と交渉して重度訪問介護1日20時間となり、現在は1日22時間になっています。
このまま人生を終わらせたくない、今までの生活の中でも奇跡の巡り会いがたくさんあり、そのお陰で今の私が生きています。
多くの方々に支えていただいた恩返しがしたいと思い、重度の障害を持つ人の次の奇跡の巡り会いを応援するためNPO法人きせきを設立して重度訪問介護を中心とした訪問介護事業所を始めました。
当初、運営が厳しくここでもたくさんの方に支えていただきました。優秀なスタッフの力添えで、運営も軌道に乗り、何とか生活していけるようになりました。
今年5月からALSの利用者さんの重度訪問介護が始まり、不安でいっぱいでしたが、なんとかその利用者さんの生きがいを見つけるお手伝いができそうです。
7月にNPO法人きせきの研修で、ALSの利用者さんに講演をお願いしました。その講演を終えて、「今一つの大切な役目を果たせたことの安堵感に加え、自分にもこんなことができるようになったことに驚いています。改めて「NPO法人きせき」との出会いとスタッフの方々に感謝いたします。元気な限り‘次のステップへ’また前に進んで生きたいと思います。講演後にいただいたココアフロート格別美味しかったです!ありがとうございました」と感想をいただきました。
その利用者さんの初回の訪問面接のときに、こんなことを言われました「同じ境遇の人がやっているので安心します」と。 確かに私は仰向けに倒れてしまうとほとんど動く事はできません。上を向いて寝ていると眉毛のところに痒みが急に湧いてくるとき、手が動かないので自分でかくことができませんから、じっとヘルパーさんが来るまで耐えるしかありません。その辛い感覚はよくわかります。そこだけで言えば、歩ける人たちよりはALSの利用者さんに近いところにいるかもしれません。だからといって、ALSの利用者さんの苦しみがすべてわかるはずもなく、解決できない苦しみはなおも残ります。
手も足も動かない私ですが、それでも苦んでいる人の力になりたいと考えた時、援助的コミュニケーションが必要不可欠になることを、エンドオブライフ・ケア協会の援助者養成基礎講座で教えていただき、援助的コミュニケーションが実践できるようにご指導していただきました。しかしまだまだ勉強不足であり、障害者としての経験が優位になる自分をコントロールしなければなりません。障害者としての経験が苦しんでいる人の苦しみをキャッチするための1つのアンテナになるかもしれないと思っています。
「苦しんでいる人は、自分の苦しみをわかってくれる人がいると嬉しい」この言葉をもう一度心に刻み、私に与えられたフィールドで「その人の支えを見つけるお手伝いをして支えを強めていかれる」理解者になれるように頑張っていきたいと思っています。小澤先生をはじめエンドオブライフ・ケア協会の皆さん今後ともよろしくお願いいたします。
エンドオブライフ・ケア協会では、このような学び・気づきの機会となる研修やイベントを開催しております。活動を応援してくださる方は、よろしければこちらから会員登録をお願いいたします。
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