コラム35:緩和ケア病棟でのリハビリの介入と葛藤、そして援助的コミュニケーションとディグニティセラピーの経験

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2018.01.22

コラム35 : 緩和ケア病棟でのリハビリの介入と葛藤、そして援助的コミュニケーションとディグニティセラピーの経験

社会医療法人 共愛会 戸畑リハビリテーション病院
リハビリテーション科 主任 理学療法士
久保 貴照さま(ELC第30回生)

 

 当院は、福岡県北九州市の戸畑区にあります。

 北九州市(門司区、小倉北区、小倉南区、戸畑区、八幡西区、八幡東区、若松区)は福岡県の東部に位置する政令指定都市であり、九州地方で第2位の人口(96.13万人)を有しています。また、北九州市は全国の政令指定都市では高齢化率が1位(29.6%)となっています。

 戸畑は7つの行政区では一番小さな面積でありますが、国の重要無形民俗文化財に指定されている戸畑祇園大山笠があります。夏に博多祇園山笠、小倉祇園太鼓とともに福岡県夏の三大祭りの一つとされ、競演会には毎年10数万人の観衆が訪れます。

 当法人は急性期~生活期まであり、地域医療の中核を担っています。回復期、地域包括ケア病棟、一般外来、緩和ケア外来、えんげ外来、ペインクリニック、訪問診療、ケアハウス、短時間通所リハビリもあります。

 私が働く緩和ケア病棟は17床あり、入院している方々の余命は殆どが月~週単位です。私は人生の最終段階においてもQOLの維持、向上が目指せるよう、患者さん、ご家族の要望に応じて医療スタッフの一員として関わっています。

 お会いした方によっては身体機能の低下は軽度で、「一人で歩きたい」等の要望がみられれば、リハビリの計画を長期的に立てて「身体機能やADLを改善させたいといった気持ち」になる瞬間があります。ところが人生の最終段階にある方々は、今日できていた事が明日明後日できるとは限りません。身体機能を改善させたい気持ちと病状の進行を受け入れていかなければならない現実との差に苦しむ事があります。

  そのような中、エンドオブライフ・ケア援助者養成基礎講座で「苦しむ人への援助と5つの課題」を小澤先生から学びました。人生の最終段階では、援助的コミュニケーションをもとに丁寧に聴く事、穏やかな表情を見られる事が重要だと知りました。

 臨床においても患者さんの苦しみや支えをキャッチし反復することで、「いつも話を聞いてもらってすみません。理解してもらえるのがこんなにうれしいものなんですね。」と穏やかな表情で言って下さる方もおられました。この言葉は研修後、自分自身の支えにもなりました。

 今後、地域包括ケアシステムが構築されていく中でリハビリスタッフの職域は広がり、人生の最終段階となった方々に対して関わっていく事が増えると考えます。しかしリハビリの学校教育や臨床実習では、やがてお迎えがくることを想定しながら、どのように関わるとよいのかを具体的に学ぶ機会が少ないのが現状だと思います。どのような考え方や関わり方を持つと良いのか、コミュニケーションの仕方を学生時代から伝えていく必要があり、今後の課題と考えます。

 先日、援助的コミュニケーションで関わっていったところ、「私はもう長くないです。死んでしまいたいです。」と苦しみを訴えた方がいらっしゃり、その方にディグニティセラピー(精神支持療法)をご提案し、実施する事が出来ました。めぐみ在宅クリックのホームページにある手順を用い、人生で大切にしてきた事、重要と思う事、大切な人に伝えたい事等を伺い、書き記したものを確認していただくという過程を通じて、伝えたいメッセージをまとめるご支援をしました。

 患者さんは、ベッド上で寝た状態で、自分が述べた文章を確認する事で、「その通りやね」と笑顔を見せて頂きました。ご家族には別日に確認してもらい、「こんな事言ってましたか?知ってる内容もあるけど文章にするのも良いですね」と、介護疲れがあるなか、表情に穏やかさを感じる事ができました。

 人生の最終段階における方に対しては、リハビリの介入を行うにしても長期的なゴールを目指すのではなく、その方の要望に応じたその時出来ることを支援していく事が重要と感じています。その上で尊厳を守る事を目標に、丁寧に患者さんやご家族に寄り添って行き、支えが何なのかを知り医療チームの一員として強めていきたいと思います。

エンドオブライフ・ケア協会では、このような学び・気づきの機会となる研修やイベントを開催しております。活動を応援してくださる方は、よろしければこちらから会員登録をお願いいたします。

Theory of Change

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