<私には夢があります>

  • 人材育成
  • 支える人の支え
  • 関わるすべての職種にできる援助
  • わかってくれる人がいるとうれしい
  • 解決できない苦しみ
  • 不条理
  • 新型コロナウイルス

 新型コロナウイルス感染拡大は、社会で暮らす多くの人に暗い影を落としています。外出を自粛することによる体力低下だけではなく、心の面でも不安定となり、眠れない、食欲が出ない、疲れやすいなどの症状を自覚する人が増えていくことを案じます。そして、苦しみのあまり、誰かを批判したり、自らを傷つけようとしたりする人が増えてくるからです。

 いのちを守るために医療崩壊を防ぐことは大切です。感染拡大を防ぐため、人との接触を減らす動きは、これからさらに数ヶ月は続くことでしょう。一方で、経済的な支援も大切です。仕事ができない社会において、生活費に困窮する人はかなりの数にのぼるでしょう。

 ニュースでも、これらの情報にあふれています。その1つ1つは、大切です。しかし、これだけでは、社会でくらす人達は、笑顔にはなれません。心の苦しみは、取り去ることができないからです。

 このままですと、いつか生活を苦に感じた人達が窃盗や暴動を起こすのではないかと、不安になります。経済的な支援だけではなく、食べることすら厳しい人達に、それぞれの地域で生きていくために最低限必要な、水や食料が提供されるセーフティーネットが形成されることも、窃盗や暴動を防ぐためにも必要になると思います。

 新型コロナウイルス感染対策として、これから特に注目されるテーマの1つに、心のケアが重要になると考えています。最近、ニュースにも少しずつ取り上げられるようになりました。問題は、ここからです。

誰が、苦しむ人の支援にあたるのでしょう?

それぞれの地域で、職場で、家庭において、苦しむ人の心に届くケアを誰が提供できるのでしょう?
具体的に関わる人は、足りているのでしょうか?

 例えるのであれば、スクールカウンセラーが、各学校に1人配置されたとします。もし、担当校で、心のケアを必要とする人が10-20人程度であれば、何とか1人のスクールカウンセラーで対応ができるかもしれません。

 ところが、全校生徒と教職員、さらにはその家族までが心のケアが必要になれば、1人のスクールカウンセラーだけでは絶対に対応ができません。限られた時間でできることは、資料を作成して、配布するぐらいかもしれません。心を閉ざし、何もしたくない人が、資料に目を通して快復することは、かなり難しいと感じています。

 苦しむ人と誠実に関われる担い手が必要です。

 私はホスピス・緩和ケアの現場で、死を前にした人とその家族の支援にあたってきました。その関わり方を、一部の専門職だけではなく、必要とするすべて人が行えることを夢見てきました。もちろん、その関わる事ができる対象者には、子どもたちも含まれます。

問い もし、自分の人生で、大きな困難に遭遇したら、自分はその困難とどのように向き合っていくと良いのでしょうか?

問い もし、自分の目の前で誰かが苦しんでいたら、自分は何ができるのでしょうか?

 この問いに皆さんはどのように答えますか?

 この問いに、専門用語ではなく、子どもからお年寄りまで、多くの人のわかる言葉で、伝えることができると良いですね。

 人によって捉え方は異なるのかもしれません。ここでは、ホスピス・緩和ケアで実践してきた関わり方を苦しむ人への援助と5つの課題として提唱してきました。今日は、いつもより意識して平易な言葉で表現してみたいと思います。

苦しむ人への援助と5つの課題

1.苦しんでいる人は、自分の苦しみをわかってくれる人がいると嬉しいです。相手からみてわかってくれる人になれるために、聴くことが大切です。そして、その人との信頼関係をつくっていきましょう。

2.信頼関係をつくりながら、相手の苦しみに気づいていきましょう。苦しみは、希望と現実の開きです。そのことを意識するだけで、何気ない相手の苦しみや困難に気づくでしょう。苦しみに気づいたら、解決できる苦しみは解決できるように助けましょう。

3.もし、解決ができない苦しみを抱えたとしても、穏やかに過ごせる可能性を探ります。たとえ、解決ができない苦しみの中でも、その人にとって大切な自らの支え(穏やかになれる理由、頑張れる理由)が見つけたならば、表情は穏やかに変わります。

4.苦しむ人が、穏やかに過ごせる支えを、強めるために私たちにできることを実践しましょう。具体的には、わかってくれる人として話を聴くこと、穏やかに過ごせるために、生活の支援を行うこと、頑張れる理由を探して一緒に応援すること、たとえどんな人生であったとしても、1人の人間として尊厳を大切に守ることなどです。

5.苦しむ人の力になろうとする私たち自身の支えを大切にしましょう。決して現場は、うまくいくとは限りません。力になれずに、私たちの心も折れそうになります。それでも、私たち自身の支えがあれば、たおやかな心を持って関わり続けることができます。

苦しい時代なからこそ、苦しむ人の力になりたい人が現れます。
苦しい時代だからこそ、暖かな心を持った人が増えていきます。
苦しい時代だからこそ、専門家だけではなく、小さな力が必要です。

 よければ、皆さんの近くの誰かのために、私たちができることを探しませんか?

 それぞれ、ご自身が得意とする内容を実践できればよいですね。しかし、苦しむ人にどのように関わる事ができるのか、知りたいけれどもわからない人もいることでしょう。

 もし、学ぶ機会を探されているのであれば、オンラインで学ぶことができる機会を提供したいと考えています。さらには、それぞれの地域での取り組みが形となってつながっていくことを大切にしていきたいと考えています(#コロナ4Cチャレンジ)

 5月に予定している学ぶ機会を以下のサイトで紹介します。

https://endoflifecare.or.jp/posts/show/8832…

苦しむ人の力になりたいと願う人がいる限り、私は、その人を全力で応援したいと思います。

私には夢があります。

いつの日か、その人が、私の代わりに、苦しむ誰かの支えとなり、絶望にくれていた人の心に灯火を照らし、笑顔を増やしてくれる…という夢が。

今日も良い1日でありますように。

#コロナ4Cチャレンジ

 

小澤 竹俊

エンドオブライフ・ケア協会では、このような学び・気づきの機会となる研修やイベントを開催しております。活動を応援してくださる方は、よろしければこちらから会員登録をお願いします。

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