エンドオブライフ・ケア協会
小澤 竹俊
新型コロナウイルス感染は、いよいよ全世界に広がりをみせ、現場は混乱しています。外出禁止令が発令され、自由に集まることができません。人の往来が自由にできなくなりました。今まであたりまえであった風景が一変し、まさに非日常に世界であり、これは有事です。
そのような中、今できることは何かと問いながら、いくつかまとまって原稿を書いています。(山にはこもっていませんが…)しばらく投稿を控えておりましたが、ちょっとだけ近況報告です。
一般的ですが、苦しみに対して、解決策を考案し、実行に移します。感染が広がる速度を遅くすること、医療現場が崩壊しないこと、必要な経済対策など、1つ1つは、とても大切なことです。また、ワクチンの開発や、治療薬の開発も大切なことです。
しかし、どれほど最善を尽くしても、解決ができない苦しみがあります。楽しみにしていた卒業式、旅行、同窓会なども中止となりました。そのことを思うと、とても笑顔なんてなれないと感じている人も少なくないでしょう。
なぜこんな目に遭うの
どうしてこの時期なの
地域で苦しむ人に誠実に関われる担い手を増やす活動を全国で展開してきました。そこでのポイントは、解決が難しい苦しみを抱えた人への援助です。その多くは人生の最終段階を迎えた人への援助が出発点でした。
今では折れない心を育てるいのちの授業プロジェクトとして、子どもたちにも、解決が難しい苦しみについて紹介し、その苦しみとの向き合い方を一緒に考えて行く教材を仲間とともに広げてきました。
では、解決が難しい苦しみには、どのような例を挙げれば良いのでしょう。最近、次の例を考えました。解決が難しい苦しみの1つに、どれほど文明が発達しても、時間を過去に戻すことができないという例です。
書きかけの文章からの引用ですが…
どれほど文明が発達しても解決できない苦しみがあります。その1つに、時間を過去に戻すことができないことです。映画では、しばしば過去に戻ることができるSF映画などもありますが、実際の日常生活では、とても実現できると思えません。
歴史を学ぶと、たった1つの原因で、その後の歴史が変わったかもしれないことを知ります。
もし、クレオパトラの鼻がもう少し低かったら世界の歴史は変わっていただろうという逸話は、有名です。もし関ヶ原の戦いで、小早川が東軍に寝返らなかったら、江戸時代は来なかったでしょう。もし、1945年8月9日小倉の空が曇りでなければ、長崎には原爆は落ちていなかったでしょう。
もし、あなたが、時間を1度だけ過去に戻すことができたならば、どの時代に戻りたいと思うでしょう。高校時代に戻って、必死に勉強して専門的な資格をとりたいと思う人もいるでしょう。学生時代に戻って、好きだった人にきちんと自分の気持ちを伝えたいと思う人もいるでしょう。もっと早くに病気を見つけることができていればと思う人もいます。
皆さんであれば、どの時代に戻りたいですか?
私であれば…
もし、時間を戻すことができるのであれば、新型コロナウイルスの発症前に戻り、発症を防ぐか、もしくは早期に隔離してみたいと思います。
でも、時間を過去に戻すことはできません。厳しいけれど、これが現実です。
大切なことは、たとえ解決が難しい苦しみを抱えながらも、人は穏やかさを取り戻す可能性があることです。この不条理な苦しみとどう向き合っていくかが、私たち人類の大きな課題です。その可能性を探ってみたいと思います。
エンドオブライフ・ケア協会では、このような学び・気づきの機会となる研修やイベントを開催しております。活動を応援してくださる方は、よろしければこちらから会員登録をお願いします。
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