新型コロナウイルスは、私たちの日常を一変しました。今までのあたりまえの生活が、あたりまえではなくなりました。映画を観ることも、友達と会うことも、集まって学ぶことすら許されない非日常です。春から仕事に就く予定であった学生が、内定取り消しの一報をうけて途方に暮れる人もいます。
では、ここで1つの問いをだします。この中で、果たして誰が一番苦しいのでしょうか?
1.内定取り消しの学生
2.オリンピック開催の準備をしてきた人
3.大好きなグループのコンサートに行けなくなった人
4.仕事をなくして、ローンが払えなくなった人
5.在宅ワークが増えたため、会いたくない旦那が、いつも家の中にいると感じている人
どの人も苦しみがあります。共通点は、苦しみは、“希望と現実の開き”です。ここに挙げた人達も、それぞれの苦しみがあります。新社会人として働きたいと希望と就職先が決まらない現実。オリンピックを予定通り開催したい希望と予定通りに開催できない現実。コンサートもローンの返済も、そして会いたくない人と会うことも、すべて希望と現実の開きとして考える事ができます。
永年、医療の現場で仕事をしてきました。そこでの学びは、苦しみは比較できないと言うことです。一人一人、それぞれの希望と現実の開きがあります。それを比較して、この人の苦しみは、こちらの人の苦しみよりも大きいとの判断はできないということでした。
これから人の動きが制限される時代がしばらく来ます。動きたい、働きたい、会いたいという希望がかないません。苦しむ人が増えていくことでしょう。
一番、恐れていることは、苦しみが大きいと誰かを傷つけることがあるということです。頭では、大切にしなくてはいけないとわかっていても、人は苦しみが大きいと、傷つけることがあるからです。それは必ずしも他人とは限りません。自分自身を傷つける人もいます。
何かを行いたい人に、その行動を自粛するようにお願いをしたときに、苦しみが大きくなると、弱い誰かを傷つけることを案じています。アメリカでは、在宅勤務が増えたことでDV(家庭内暴力)が増えたとのニュースがありました。
ではどうしたら良いのでしょう?
正しい情報は必要です。解決できる苦しみは、適切に解決できる方策を実施していく必要があります。しかし、正しい情報を提供するだけでは、苦しみを抱えた人は、必ずしも穏やかにはなれません。
苦しみがありながらも、穏やかに過ごせる生き方を探ることです。その生き方は、ホスピス・緩和ケアで学んで来た対人援助にあります。その一番のポイントは、“苦しんでいる人は、自分の苦しみをわかってくれる人がいると嬉しい”ということです。どんな人がわかってくれる人になれるのか?それは、聴いてくれる人です。
閉塞感が強まる中、立場の弱い人達の苦しみから、さらに弱い人を傷つけていくことを案じます。わかってくれる誰かは、それぞれの地域でいるでしょうか?苦しんでいる人に気づき、行動できる担い手はいるでしょうか?このような時代だからこそ、地域でのつながり、オンラインでのつながりが問われます。
志のある人達が、これからの時代に求められます。そのような担い手が一人でも増えていくことが期待される毎日です。
皆さま、良い1日を!
弱い者達が夕暮れ
さらに弱い者をたたく
(TRAIN-TRAIN:THE BLUE HEARTS)
小澤 竹俊
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