コラム69:エンドオブライフ・ケアの活動に寄せて

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フリーランスナース 

野口直美さま

(ELC第3回生、認定エンドオブライフ・ケア援助士、認定ELCファシリテーター、折れない心を育てる いのちの授業レベル1認定講師)

 エンドオブライフ・ケア協会(ELC)との出会いは通勤途中に聞いていたラジオでした。エンドオブライフの研修を探していた私はさっそく調べて申し込み受講しました。

 

 私の看護師としての経験は救急が一番長く、救急の現場では何人もの人の最期に出会ってきました。突然の心肺停止で運ばれてくる方に行う蘇生術、動揺する家族、最後は自宅ではなく警察へ搬送されるケースも。その時いつも感じていたことは、この方は本当にこんな最期を望んでいたのだろうか?どうすれば穏やかな最期を迎えることができるのだろうか?という事でした。

 

 「苦しんでいる人は自分の苦しみをわかってくれる人がいるとうれしい」ELCの柱であるこの言葉を実感した出来事は、すい臓がんの末期のある60代女性と出会った時でした。独居で積極的な治療を一切断っていた彼女が救急車で運ばれてきた時「私はもういつお迎えがきてもいいの」と言われました。私はベッドサイドで自分の思いを語る彼女の話をただただ聞いていました。ただ聞く事しかできなかったのです。翌日病棟にいる彼女を訪ねた時、「昨夜は話を聞いてくれてありがとうね、うれしかったわ」と言ってくださいました。何もできなかった、そう思っていた私に「あなたは疲れているのに夜中私の話を聞いてくれたじゃないの。それだけで十分」そう言ってくださったのです。そしてその翌日その方は旅立ちました。私はこの経験から多忙な救急の現場での短い時間でも、反復、沈黙の手法で誰かの支えになることができる、そう感じました。

 そして「誰かを支えようとする人こそ支えが必要です」これは私にとって魔法の言葉。つらい現場でも誰かの役に立ちたいと思う、そんなあなたにも支えは必要、だからみんなで支え合うことができれば、人生の最終段階に関われる人がもっと増えると思います。加えて近日ELC協会が力を入れている「折れない心を育てる いのちの授業(※OKプロジェクト)」は広く世代を超えて、苦しんでいる人からみてわかってくれる人を育て、自己肯定感を育むプログラムです。このOKプロジェクトも同様、誰かの支えになる人の支えとなる、私はそう信じています。私はライフワークとしてこの活動を行っていきたいと思っています。

 

※「折れない心を育てるいのちの授業(OKプロジェクト)」
https://endoflifecare.or.jp/pages/okproject

 

 OKプロジェクトは「折れない(O)心(K)を育てる いのちの授業」の実施をひとつの入り口として、皆で考え、実践し、育てていくプロジェクトです。自分を認め大切に思う気持ちを育むことで、相手をそのまま受け入れ大切にする気持ちを育む-”I’m OK. You’re OK.” - 精神療法のひとつである、交流分析の考え方になぞらえています。様々な困難に遭遇する人生において、子どもたちが、そして関わる大人たちが、自分の苦しみと向き合えること。さらに、相手の苦しみと関わることができること。こうした態度を、主体的・対話的で深い学びを通して育んでいくことを、プロジェクトの目標としています。

 

 OKプロジェクトは、医療・介護の垣根を越えて、地域で苦しむ人たちも含めて、ともに学び実践するコミュニティへの発展を想定しています。エンドオブライフからの学びを、子どもから大人まで伝えていき、それぞれが、地域で苦しむ人と関わる担い手となれる、そのきっかけとなればと願っております。

エンドオブライフ・ケア協会では、このような学び・気づきの機会となる研修やイベントを開催しております。活動を応援してくださる方は、よろしければこちらから会員登録をお願いします。

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