コラム78:家族介護者支援の視点の広がり:研修での気づきを実践へ

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ケアマネジャー

渡邉光枝さま

(ELC第41回生、認定エンドオブライフ・ケア援助士、ELCファシリテーター)

 私は普段は居宅支援事業所でケアマネージャーとして、
在宅生活の支援をさせていただいております。

 昨年、エンドオブライフ・ケア援助者養成基礎講座に、小グループでの演習のファシリテーターとして参加した際、事例検討のなかで参加者の方からいただいた気づきが、自身の現場での支援のあり方を省みるきっかけとなったことについて、お話をさせていただきます。

 42歳の女性、夫と子供が2人の4人家族、積極的な治療は難しいと言われたこの女性と家族は、どんなことがあると穏やかに過ごすことができるか、その支えを強めるために何ができるかグループの皆さんに考えて意見を出していただきました。

 同じ事例であっても、参加者によって、視点が広がったり、深まったりすることが、この事例検討の醍醐味と感じています。あるとき、グループのなかに、企業で働きながら、離れて暮らす親御さんを介護している方がいらっしゃいました。

 これまでであれば、事例検討のなかで、働いている夫にはどのようなことがあると穏やかでいることができるのか、そのために、どのように誰がサポートするとよいのか、話し合っていくと、参加者からいただく提案としては、職場という観点では、介護休暇・休業を取得するというものが一般的でした。

 しかし、このときのグループは、より具体的な提案がありました。休んでも同じポジションで戻れる保証を得ることや、安心して自分の仕事を任せられる体制を作ること、また、休んでいる間の給料のことなどが当たり前に出てきました。

 働く立場で考えれば当たり前のことです。
 しかし、お恥ずかしいところですが、普段私は、仕事では介護休暇・休業は取れるかなど聞かせていただき、取れる会社では取ることをお勧めすることはしていたものの、その後、職場に戻ってからのことは考えていなかったことに気づかされました。

 戻ることだけをゴールとせずに、会社の理解を得た上で、本人も職場の人たちも安心して働くことができるようにきちんと話し合っておかないと大変だということがわかりました。

 それ以降は、家族が仕事をしながら、また介護休暇・休業を取る・取らない中での介護のケースに対して、よくお話を伺い、支援内容を変えました。

 まずは、職場には家族のご病気についてどのようにお伝えされているかを聞かせていただきます。その上で、どのような制度やサポートがあるかをお聞きして、介護休暇・休業の取得タイミングを確認しながら、一緒に計画を立てています。戻ってからのことも確認しながら決めていただいています。

 昨今では、コロナ禍で働き方の一形態として活用されるようになったオンライン化の後押しもあり、介護休業を取りながら、オンラインで会社と打ち合わせをしていただき、安心して介護できる体制をとっておられる方もいらっしゃいます。

 支援を変えたことで、ご家族から心強かったという言葉をいただいております。医師などには早く介護休業を取るように言われ、会社との板挟み状態となっていたことを知り、そのことに気がつかなかった自分が情けなかったです。

 

 ELCの学びは毎回新たな学びや自分に足らないところを気づかせてもらい、自分の視野や視点を広いものへと変えてくれています。

 

 様々な立場の人が参加してくださっているからこそ、得られる気づきがあります。

 ファシリテーターとして参加させていただける機会をいただき、本来であれば受講者の皆様のお役に立てるように精進してまいりたいと思っていますが、たくさんの学びをいただき、仲間が増えていく喜びを実感しております。

エンドオブライフ・ケア協会では、このような学び・気づきの機会となる研修やイベントを開催しております。活動を応援してくださる方は、よろしければこちらから会員登録をお願いします。

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