コラム84:PTA・いのちの授業コーディネーター・親としての三つの視点から取り組んだこと

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きいれ浜田クリニック 介護支援専門員 

迫夏美さま

(ELC鹿児島第1回生、認定エンドオブライフ・ケア援助士、 認定ELCファシリテーター)

 私はこれまで、実際に悩む中学の娘と一緒に「折れない心を育てる いのちの授業」を数回受講しました。娘は、何に悩んでいるのかもわからなくなるほどふさぎ込んでいましたが、この授業を受けるたびに、一つ一つ気持ちを伝えてくれるようになりました。

 

 藁にもすがる思いで受けたあの日、娘は、隣にいるのにパソコンの画面にも映るのを嫌がりながら、言葉ではなくショートメールで、「テストでいい点を取りたい。でも取れない」「部活でいい成績を残したい。でも部活を辞めたい。」「ボカロの歌が好き」「絵を描いていると落ち着く」と、苦しみや支えとなる関係、選ぶことができる自由など、整理しながら娘の心の声を聴きました。私は親として、まったく心の声を聴けていなかったことに気づかされました。

 

 そんな状況の中で、小学校のPTA役員として市の小中学校を代表して「家庭教育」をテーマに研修発表が輪番制で回ってきました。

 

 何をテーマに取り組むか?全保護者を対象に家庭教育に関してアンケートを実施したところ、子供が悩んでいると感じた時には会話をメインに子供に寄り添う、などの意見が多く上がりました。

 

 しかし、会話することが大切と感じていながらも本当に子供の心の声、SOSを大人は理解できているのだろうか?と感じました。そこから、この「折れない心を育てる いのちの授業」を全保護者、学校の先生方へ聞いてもらいたいと感じたのが、この一年近くかけて取り組んだ内容の第一歩でした。

テーマ:親子の会話を通して子どものSOSに気づく事ができる大人になるための取組み

 

具体的に、
 

①わが子の特徴を知る


②話すことは大事とわかっていても、なかなかゆっくり話せない。では、日常会話の中で、いかに子供のSOSに気づけるか?また、子供が安心して話せる自分になるために何をすればいいか?

 

とテーマを決め実践内容を決めていきました。

 

 まずは様々な取り組みをPTAとして各家庭に提案する前の導入として「折れない心を育てる いのちの授業」を全保護者対象に実施することを計画しました。しかし、このコロナ禍で、様々な感染対策を考えながら最終的には5~6年生の親子授業という形で日曜参観を利用して認定講師に講演していただくことになりました。それと同時に、学校の先生と協力し、そばセット(自尊感情尺度)を活用し、日曜参観で自尊感情についてもスライドを使い学習しました。わが子がどのタイプなのか?気づきのきっかけづくりに取り組みました。

 

 導入後、親子の触れ合い、会話を中心とした具体的な取組案をPTAで提案していきました。
 

①    「一家庭一家訓」(をそれぞれ決めて、毎日取り組めたか?がんばりカードを作成し、色塗りをしながら見える化で達成感を感じる)
 

②    「親子で一行日記(反復練習)」(夏休みに親子でチャレンジ5~6年生向け)
 

③    「コロコロトーキング」(全世帯対象、サイコロの目に合わせて会話をするゲーム)

 

 数カ月をかけて取り組みをする中で再度アンケートを実施しましたが、正直、一番不評だったのが「一行日記(反復練習)」でした。
 

・何のための課題なのかよく意味がわからなかった。


・そんな宿題があることを知らなかった。
 

・反復練習にはあまり共感を持てなかった。
 

・コロナ禍での2回目の夏休み。家の中だけの生活で日記の内容も一辺倒。

 

など、保護者の感想があげられました。

 

 反復の大切さを理解してもらう。理解や周知、継続面と課題が多いと感じました。しかし一方で、
 

・反復することを改めて文字にすることで理解できた。普段の会話だとついつい「ふーん、そうなんだ。」で返してしまうので、意識しようと思った。


・短い日記ではありますが、その日その日で子供の感じている事が違い、反復する事で会話が増えコミュニケーションもとれ、絆が深まったように感じた。
 

・行うことは単純なことなのに、繰り返すことで、子供の思いを一旦受け止める練習になったように思います。

 

など、少人数ではあるが、伝わっていると実感することもできました。

 研修発表会ではもちろん「折れない心を育てる いのちの授業」を再受講していただくことで、この取り組みには意味があることを意識してもらえると考えていました。コロナ感染拡大でオンライン配信が決まり、多くの方に「折れない心を育てる いのちの授業」を知っていただく機会をいただけました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そして一番不評だった「一行日記」について、
 

・反復の重要性、子供との関りを考え直す機会となった。
 

・文字にすることでより意識できる。顔マークで感情がわかる。
 

・日頃忙しい時はながら聞きをしたりする事もあるが、「~だね~」って伝えるっていいなと思った。

 

など、参加した保護者や学校の先生から評価をいただき、「ぜひ来年度も取り組んでいきましょう」との声をいただけました。

 

 私は看護師、ケアマネージャーとして医療の現場で多くの苦しむ人に出会ってきました。今でもまだ人生の最終段階にある方との関りには苦手意識があります。しかし苦しんでいる人が穏やかになれる。相手から見て、理解してくれる人、わかってくれる人になるため、ELCでの学びは私の人生に大きな影響を与えてくれました。

 

 時代が変わり、教育が変わり、私たち世代が子供のころからすると今の社会を生きていく子供たちには大きな変化があります。

 

 あの時の娘は心が張り裂け、悲鳴を上げていたのにも関わらず、私は娘にとってのわかってくれる人ではなく、娘は話すことすらあきらめていました。しかし「折れない心を育てる いのちの授業」は私たち親子、家族を救ってくれました。

 

 今回、PTA・折れない心を育てる いのちの授業のコーディネーター・苦しむ子をもつ親としてこの三つの視点から考え取り組んだ内容を評価していただけたことは、大きな自信へと繋がりました。

 

 今度は「折れない心を育てる いのちの授業」認定講師を目指し、活動を通して伝える側となり自分の苦しみと向き合い、子供の心のメッセージに気づけているか、わかってくれる人になるためのきっかけにつなげられたらと思っております。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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